今日はどこまで走ろうか

日ごろはミュージシャンとして活動をしている落合みつを氏が、愛車W800に乗って日本を旅する道中に体験したことなどを語る連載企画

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ヨシムラ

カワサキの名車W1SAとW800が雲仙の周りを連なって走る。島原半島をぐるりと一周すれば穴場のツーリングコースから涼やかな浜辺の風まで堪能できる日帰りの旅。

小浜から口之津島原半島は左回りがいい

前回の続き。長崎県愛野から小浜温泉までをつないでいた温泉軽便鉄道(雲仙鉄道)について改めて調べてみた。1923年から1938年までの15年間だけ島原鉄道愛野村駅(現、愛野駅)から雲仙小浜駅(現、肥前小浜駅)を結んでいた鉄道で、まだクルマを持っている人が少ないころに湯治客の交通手段として愛された活気ある路線だったらしい。切り立った崖の合間を縫うように敷かれていた線路。今は地元の人しか使わない秘密の抜け道のようだ。左右の木々が枝を伸ばし上まで覆い隠す、緑のトンネルと呼ばれる道は信号がないのでつい飛ばしたくなるのだが、ゆったりと走ろう。高い崖に挟まれて曲がりくねっている所で対向車が突然現れたので一瞬ヒヤリとした。

W1SAのシモさんたちと話し合い、各々の愛車が汽車の先頭になった気分でトコトコ進む。何度か現れる緑のトンネルや、汽車用の本物のトンネルも涼やかで気持ちいい。眼下に見えた海面は透き通った青で、空とのコントラストが美しく、思わずバイクを止めて景色を堪能した。

廃線道路は国道57号に繋がっている。小浜温泉に着いたら土産物屋の駐車場が無料なのでコーヒーを買って停めさせてもらった。源泉の白煙が空へと昇っている。釜が設置されていてお店で卵やエビを購入して温泉の蒸気で蒸し焼きにした。源泉は105度もあるのでヤケドに注意しつつ、温泉の塩気をまとった卵はほのぼのとした味で落ち着く。その後ブーツを脱ぎ、日本一長い小浜の足湯に浸かる。走っていると気づかないがバイクは手足から疲れるもの。温めて労った。次回は泊まりで小浜に来よう。温泉に丸ごと浸かりたい衝動を抑えつつ出発した。

陽が暮れる前に半島を一周しようと、海岸線をひたすら走る。橘湾に吹き込む海風が気持ちいい。ジャガイモの名産地南串山町を過ぎたら加津佐町が見えてきた。ここはイルカウォッチングができることで有名。バイクを停め三者三様に散歩。潮騒が耳と心に心地よく響く。堤防に並んで対岸の熊本を眺めた。次回は天草を走ろうかなどと話しながら夕暮れに包まれた道を国見町まで走った。

最後の目的地は漁師亭 鶴丸。地元の人に愛される居酒屋だ。店主の坂木夫妻が地元の方々に声をかけて待っていてくれた。島原弁で地元産のものを“じげもん”と呼ぶ。じげもんのカサゴの刺身や雲仙ハムなどの料理をいただき、お腹も胸も膨らんで楽しい夜はいつまでも笑い声に包まれていた。何度でも来たくなるところ、島原半島はバイク乗りに優しい町ばかりだった。

木津ノ浜駅跡地

愛野村駅から雲仙小浜駅まで繋いでいた温泉軽便鉄道。1938年に全線廃止となった。木津ノ浜駅跡地は小高い場所にあり、港が見下ろせる哀愁が漂う景観だ

千々石の民家を抜け行くとトンネルが出てくる

千々石の民家を抜け行くとトンネルが出てくる。過去の線路に沿って今は県道201号が引いてある。双璧が高く幻想的な道だ。幅は汽車が通っていた時のままなので対向車に注意して走ろう

日本一長い足湯

日本一長い足湯。眼前に広がる橘湾の煌びやかな波を眺めながらブーツを脱いで癒されよう。源泉が横にありエビや野菜を買って蒸して食べるのもいい。蒸すのも足湯も無料だ

橘湾

右に橘湾を眺めながらゆったりと走り、辿り着いたのは加津佐町。イルカウォッチングの船が出ている場所だ。堤防から陽が陰るの眺め、郷愁を味わった

ここに寄っとけ

漁師亭 鶴丸

漁師亭 鶴丸有明海の海産物を中心にじげもん(地元産)を食べさせてくれるお店だ。海の幸はもちろん、女将のやすこさん特製手ごねハンバーグや茄子と雲仙ハムのはさみ揚げもオススメ。飲めるならサイコロを振ってハイボール。ゾロ目が出たらメガに換えてくれるぞ! 夜6時から営業

落合 みつを

シンガーソングライター。新潟県出身。2004年メジャーデビュー。世界初の分解ギターをヤイリギターと製作する。現在、愛車W800との旅をウェブ TVで世界配信中。全国コミュニティFM7局放送中『今日はどこまで歩こうか?』詳しくは公式HPインフォメーションにて
http://information.mitsuwo.com
Web TV『落合みつをの今日はどこまで走ろうか?』
http://www.mitsuwo.com/




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