カワサキ名車列伝

カワサキが誇る伝説の名車の数々を美しい写真とともに紹介

1966〜W1&W1S

渾身の4ストローク、夢大陸アメリカでの挫折…、そして日本人にもっとも愛された重量車。ダブワンにはいくつものエピソードが溢れている

1966 W1

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ヨシムラ

4ストロークマシンとしてカワサキから初めて純粋培養されたW1。発売から半世紀以上経つ現在でも、全身から溢れんばかりの質感をかもし出している。このマシンが、こんなにも長い間ライダーに愛されるようになるとは、当時、一体誰が考えただろうか?

1960年代、バイクといえば英国車が隆盛を極めていた。そんななか、1965年にカワサキは、国内最大排気量“カワサキメグロK2”を完成させたのである。

しかし、ビッグバイク市場として、新規開拓を狙っていたアメリカにおいて、K2はパワー不足であり、ライバルのトライアンフT100・BSA・A10などの650㏄OHV2気筒エンジン軍団に太刀打ちできないと判断された。これにより、独自開発をもくろんだ新エンジン“K3プロジェクト”は幻と消え、K2のエンジンをベースに可能な限りパワーアップを図る手段が取られた。

これは、もう一台の対アメリカ輸出車としてカワサキが開発に全力を注いでいた2ストロークマシン“SAMURAI”との同時出荷を狙っていたためで、新型4ストロークマシンの開発期間が1年しかなかったことも挙げられる。

そして、K2発売の衝撃からわずか7ヶ月後の10月、カワサキはK2型改造試作車X650を東京モーターショーに出展させる。排気量は624㏄。K2のシリンダーを極限まで(8㎜)ボアアップした結果の排気量だった。また時代は、日本国内でも首都高速や名神高速道路(小牧〜西ノ宮)の完成が続き、高速化に対応できるバイクが求められていた。こうしたなか、X650を経て、カワサキから登場したのが“ダブワン”の愛称で親しまれるW1だった。

1966 W1

1966 W1

1968 W1S

1968 W1S

この新たに誕生した国内最大排気量マシンは、47㎰/6500rpmの最高出力に5・4㎏-m/5500rpmのトルクをほこり、K2よりも最高出力で11㎰、トルクは1.2㎏-m増加し、最高速も165㎞/hから180㎞/hへとアップした。そしてW1の進化の特徴は性能面だけではなく、デザインも一新されたことにある。マシン全体のイメージを左右するガソリンタンクは当時アメリカで流行っていたキャンディトーンを採用し、アメリカで市場調査を行なった結果、メインカラーは赤を使うことに決定した。

さて、こうして性能もデザインも満を持して市場に送り出されたW1だが、アメリカでの評判はカワサキの期待を裏切るものだった。長距離を高速で連続走行するというアメリカではごく普通の使用に対し、あまりに振動がすさまじくクレームが相次いだのだ。走りながらウインカーが落ちるのはまだマシなほうだったという。このため最終的にW1はW2SSをもってアメリカから撤退することになった。

しかし、今となってはこの振動騒ぎも、W1らしいコミカルなエピソードだ。そしてアメリカとは異なり、W1シリーズは我が国ではこよなく愛され、登場から実に10年間にもおよぶロングセラーを達成。その磨き込まれた雄姿は、半世紀以上の歳月を経た今でも、ファンを魅了してやまないのである。

1966 W1

1966 W1

W1の前身であるカワサキメグロK2の量産が落ち着いた1964年の暮れからW1の開発が始められ、1966年3月より量産が開始された(この年にカワサキはカワサキ自動車販売から、カワサキオートバイ販売へと名称をあらためた)。K2とそのまた前身であるメグロK型の共通部品は30に満たず、ほとんど違う性質のバイクだったが、W1とK2の共通パーツは350点を超えるもので、W1がK2の進化型であることはよく理解できる。たとえばフレームが同じ(K型とも同じ)でエンジンもボアとクランクシャフト周辺以外はほとんど同じである。1966年に誕生したW1は1968年にホンダCB750FOURが登場するまで、国産車最大の排気量を誇るマシンとして君臨することになる。その後もW1はW1S、W1SA、W3と進化を遂げ、どこか華やかなライバルメーカー車とは一線を画する存在になっていくのである
1966 W1
1966 W1

フェイスといい、リヤビューといいA1・A7とそっくりだが、さすがにK2とは大きく異なり、完全に別の車種のようだ

W1が発売になった1966年(昭和41年)の出来事

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1968 W1S

1968 W1S

1967年12月、カワサキはアメリカ向けにW1のシリンダーヘッドを改良して2キャブレターを搭載したW2SSを発売した。そして、このW2SSを国内向けにした市販車W1Sが1968年にデビュー。Sはスペシャルの頭文字から取ったものだ。W1Sはパワーで6㎰、トルクで0.3㎏-m向上、最高速度は185㎞/hになり、W1より格段に乗りやすさを増したが、時代はすでにドイツ流のシステムを取り入れた左足チェンジ、右足ブレーキという今では当たり前のスタイルに定着し、国内ではW1Sがイギリス流の最後のバイクであった。その後、ドイツ流が取り入れられたW1SAが登場し、W1シリーズ最多生産台数を生むという思わぬヒットとなった。これは華やかなスポーツモデル時代の到来を迎えながらもW1の持つテイストにひかれていたライダーがいかに多かったかという証明であった

W1Sが発売になった1968年(昭43年)の出来事

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