ヨシムラ
かつてカワサキの2ストロークデュアルパーパスを構築していたKDX-SRシリーズ。このシリーズの最後を飾ったのがKDX220SRである。排ガス規制といった時代の波のなかで消えていったこのモデルは、エンジンと車体のバランスで好評を獲得した。
エンデューロマシンを公道用に仕様変更
70年代、カワサキのモトクロッサーは、ニューマシンとなるKXシリーズの開発が進み、70年代後半にはAMAスーパークロスのチャンピオンを獲得するなど、着々と実力を付けていった。市販車ではレーサーKXシリーズをベースとしたモデルがラインナップされるようになり、北米仕様としてKE250が限定発売され、国内でも75年にKE125を市販した。
このように、モトクロッサーの仕様を変更し、ストリート用として市販化するスタイルはその後も継続された。ライバルたちも同様のスタイルで市販車を世に送り出していたが、カワサキは先行したラインナップと、排気量違いのシリーズ化を徹底して図るなど、力の入れ方の違いを見せつけた。その最たる例がKDX200SRに始まるデュアルパーパス、KDX-SRシリーズの構築だ。
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ストリートも走れるエンデューロマシンと形容され、爆発的な人気を博した
このシリーズはエンデューロマシンKDX-Rシリーズの仕様をストリート用に変更したモデルで、KX125のエンジンをベースとしたKDX125SRを含めれば、125/200/220/250と4モデルをそろえていたことになる。シリーズの先陣を切って登場したのはKDX200SRだ。それまでの空冷から水冷に進化した2ストロークエンジンを搭載したKDX200Rをベースとし、89年に国内市場に投入。エンデューロコースからそのままストリートに飛び出したかのような過激な性能から、ストリートも走れるエンデューロマシンと形容され、爆発的な人気を博したのだ。さらに、90年にKDX125SR、91年には250SRをリリース。カワサキはこれでもかと、エンデューロマシンの一卵性双生児的なデュアルパーパスを世に送り出していった。そして、シリーズの最終兵器として登場したモデルがKDX220SRである。
ベースとなったエンデューロマシンはKDX220Rで、KDX200のエンジンをボアアップしたオフロード用コンペティションモデルだ。そのためKDX220SRは、KDX200SRとほぼ同等のコンパクトなボディサイズを実現し、乾燥重量だけでいえば104kgのKDX125SRに対し105kgと、非常に軽量な数値を実現している。このボディに最高出力37psのエンジンを搭載。同年代のライバル、最高出力35psのDT200WRが、KDX220SRより小排気量クラスにもかかわらず、乾燥重量107kgということを考えると、KDX220SRがいかにパワーウェイトレシオにすぐれたモデルだったかがわかる。このエンジンと車体のバランスに対する評価は高く、94年の発売から99年の生産終了まで、カラーリング以外の仕様変更はほとんどされずにラインナップされ続けた。
意のままに操れるパワフルな性能
軽量コンパクトなボディと、パワフルなエンジンの組み合わせで好評を得たKDX220SR。ラインナップ当時“カワサキが誇るモトクロッサー・KXゆずりのハイポテンシャルを、意のままに操れる”と、カワサキがうたったように、取りまわしやすい車体と、吹け上がりのいいエンジンで、オフ&オンロードで軽快な操作性を実現していた。
エンジンには、レーサーの血筋がシッカリと受け継がれている。その一つがエレックスシリンダーだ。線爆溶射シリンダーとも呼ばれるこの構造は、シリンダーに配した導線に、大容量の電流を瞬時に流して導線を溶かし、シリンダー内面に衝突溶着させることで被膜を作りだすシステムを持つ。エレックスシリンダーは、過酷なレースにおいてエンジンの耐久性を上げるために採用されていた。その技術を量産車にも採用したというわけだ。
このパワフルで耐久性のあるエンジンを、これもまたカワサキのレーサー、ストリートモデルで実績を積んできたペリメターフレームに搭載した。このタイプのフレームやユニトラックサスペンションなどはKDX-SRシリーズで共通に採用された機能である。一方で、フロントフォークに関しては、KDX125/200/250は最終モデルまでには、すべて倒立を採用。これに対し、KDX220SRは生産終了まで正立フォークを採用する。こういった点からも、しなやかで軽快に扱える車両作りの姿勢がうかがえる。
KDX220SRが発売になった1994年(平成6年)の出来事
ソニーからプレイステーションの発売が開始される/小説家大江健三郎がノーベル文学賞を受賞する/関西国際空港が開港される/名古屋空港にて中華航空140便が着陸に失敗。乗員乗客271人のうち、264人が死亡/長野県松本市の住宅地にて猛毒ガスのサリンが散布される。7人が死亡/円レートが戦後初100円を切る/貴乃花が史上最年少で横綱に昇進する/主な流行語:同情するなら金をくれ、ヤンママ、イチロー効果/主な公開映画:『クリフハンガー』『トゥルーライズ』『シンドラーのリスト』
とじる
マシンギャラリー
「KDX220SR」のスペック一覧
全長×全幅×全高 | 2,160×875×1,225(mm) |
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軸間距離 | 1,430mm |
シート高 | 880mm |
乾燥重量 | 105kg |
エンジン形式 | 水冷2ストロークピストンリード バルブ単気筒・216cc |
最高出力 | 27.2kW(37ps)/8,000rpm |
最大トルク | 34N・m(3.5kg-m)/7,000rpm |
タンク容量 | 10L |
タイヤサイズ | (F)3.00-21/51P (R)4.60-18/63P |
価格 | 43万9,000円(当時新車価格) |