ヨシムラ
70年代後半から80年代前半にかけて、空冷400㏄クラス4気筒モデルで、メーカー間で熾烈なパフォーマンス競争が繰り広げられた。そのまっただ中で、高い走行性能を持って生まれ、レースでライバルたちを一蹴したのがZ400GPだった。
空冷ミドルカテゴリーは、戦国時代ともいえる世界に突入
カワサキがミドルクラスの世界に送り込んだZ400FXは、爆発的な人気を獲得し大ヒットを記録した。その人気は79年の発売後、数年経っても衰えることなく、81年には東京モーターショーにてカスタム仕様車が展示されるほど。このときも、横に並んだ750ターボやZ750GPと同時に話題を呼ぶ。その後、いったんはラインナップから消えるも、ファンの支持は厚く、ふたたびラインナップに追加されるほど人気が高かった。
ただし、このような状況をライバルたちが黙って見ているわけがなかった。同クラスに次々とニューモデルが投入されてくる。そのなかでも、強烈なライバルとなったのが、ホンダが放ったCBX400Fである。CBX400Fは高い性能を誇示し、発売と同時に記録的な販売台数をマーク。こうして空冷ミドルのカテゴリーは、戦国時代ともいえる世界に突入していった。
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性能至上主義のイズムが存分に注ぎ込まれ、輝きを放ったZ400GP
この間カワサキは、このクラスにおいてZ400FXだけをリリースしているだけではなかった。80年には、Z400Jをリリース。そして82年、さらに走行性能を上げるべく、新機能を存分に注ぎ込んだモデルをリリースする。そのモデルこそZ400GP。カワサキ量産車初採用となるユニ・トラックサスペンションや、イコライザーチューブを備えたエア/スプリング併用式のフロントフォーク、そしてエンジンの高圧縮化やキャブレター口径の大径化など、パワーユニットと車体ともに、Z400FXから大幅に変更を加えられて登場。ミドルクラスにおけるカワサキの威信作といえるモデルだった。
このように最高のパフォーマンスを求め続ける姿勢は、ライバルたちへの勝利という一つの結果を残す。Z400GPの発売が開始された82年、鈴鹿4時間耐久ロードレースで、Z400GPが優勝を飾ったのである。カワサキ社内チームのチーム38が持ち込んだZ400GPがそれで、神戸スーパースポーツのZ400GPも上位に食い込んだ。このときのエントリー台数はなんと194台。当然エントリー車両にはCBX400Fも含まれていた。
そして、性能の高さを誇示するかのように、のちに限定モデルも発売。ライムグリーンをまとったこの限定モデルには、Z1000Rと同様の段付きシートが装着され、オプションとして、オイルクーラーやビキニカウルも用意された。それだけに、この限定カラーモデルの人気は、より一層高まったのである。ただ、モデルチェンジが目まぐるしいスピードで繰り返されていたこの時代、後継機種となるモデル、GPz400が、早くもスタンバイしていたのであった。
新しいカワサキを予感させる多くの最新技術
多くの最新技術が投入されたZ400GP。なかでも注目したい機能が、ユニ・トラックサスペンションである。ルーツとなるZ400FXでは2本ショックだったのに対し、リンク式モノショックとなるこのサスペンションは、路面追従性やマスの集中化など、さらに走行性能を上げるため、多くの効果が求められたのだ。
一方のフロントサスペンションは、イコライザーチューブと呼ばれるチューブで左右フロントフォークを接続。内部の空気圧を左右均等にたもつことで、安定したコーナリング性能を追求した。フレームも高剛性としなやかさといった相反する要素を両立。軽量化もはたし、車体にコーナリング性アップの要素が詰め込まれた。
エンジンはZ400FXをベースとして、大幅に改良が加えられる。圧縮比は9.5から9.7へとアップ。キャブレターは、Z400FXのφ21mmからφ26mmへと大口径化された。さらにポート形状も加工され、最高出力はZ400FXの43psから5psアップをはたす。こうしてパワーユニットは格段にパフォーマンスがアップしたのである。
車体とエンジンともに、ベースモデルから大幅に改良が加えられたZ400GP。装備面に関しても、オイルランプやサイドスタンドランプなど、メーターに配されたインジケーターランプの項目に一つでも異常が発生すると、警告表示が作動するシステムを採用した。走行性能と装備ともに、新しいカワサキを予感させるマシンだった。
Z400GPが発売になった1982年(昭和57年)の出来事
東京都羽田空港沖で日本航空機が滑走路手前の海上に墜落。乗客24人が死亡、149人が重軽傷/東京都にあるホテル・ニュージャパンから火災が発生。死者33人、重軽傷者29人/中曽根康弘を内閣総理大臣に任命/500円硬貨の発行が開始/東北、上越新幹線が、それぞれ盛岡、新潟まで開通/主な流行語「ほとんど病気」「そこんとこ、よろしく」/主な公開映画「レイダース/失われたアーク」
とじる
マシンギャラリー
「Z400GP」のスペック一覧
全長×全幅×全高 | 2,170×750×1,095(mm) |
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軸間距離 | 1,445mm |
シート高 | 780mm |
乾燥重量 | 179kg |
エンジン形式 | 空冷4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒・399cc |
ボア×ストローク | 52.0×47.0(mm) |
最高出力 | 48ps/10,500rpm |
最大トルク | 3.5kg-m/8,500rpm |
タンク容量 | 18L |
タイヤサイズ | (F)90/90-19 (R)110/90-18 |