ヨシムラ
スーパーチャージャーを搭載した量産車は、現在カワサキのみが発売している。川崎重工グループ全体の力があって実現したスーパーチャージドエンジンは比類ないパフォーマンスに加え、扱いやすさも備えてきた。
バイクの常識を変える異次元のパワーフィール
2015年、カワサキはスーパーチャージドエンジンを搭載したモンスターバイクを市場に送り込んだ。
発売直後の初代ニンジャH2に試乗したときの第一印象は、とんでもないジャジャ馬だということ。アクセルを開けた瞬間から強大なトルクで車体が押し出され、そのまま二次曲線的に加速。サーキットでの試乗だったが、今までに体験したことがない加速感に驚き、タコメーターの針をレッドゾーンに入れることができなかった。その後1,000㎞ほどツーリングもしたが、一般道路の渋滞ではツキがよすぎるエンジン特性にやや難儀。しかしレインモードにすることで解決し、モンスターマシンでのツーリングを満喫した。
そんなとがったフィーリングのスーパーチャージドエンジンでツアラーを作ると聞いた時はどうなるか想像できなかったが、ニンジャH2 SXに採用されたバランス型スーパーチャージドエンジンは、スロットル操作に対するエンジンの唐突感がなくなり、市街地で扱いやすく、それでいて高回転域では過給機独特の痛快な加速を体感させてくれた。車重は増したがハンドリングは安定し旅を充実させてくれると感じた。
そして2019年から国内販売されたニンジャH2カーボンに乗ると初代ニンジャH2にあったガツガツ感は消え、低中回転域ではニンジャH2 SX寄りの特性へと変化していた。一方で最高出力は231㎰に引き上げられ、中〜高回転域のパンチ力は初代を上回る勢い。
ニンジャH2とニンジャH2 SX。両者が採用しているエンジンは、ともにスーパーチャージドエンジンだが、目指している方向性はまったく異なっている。ニンジャH2はあくまでもパフォーマンスの頂点を追求し続け、ニンジャH2 SXは過給機エンジンを扱いやすくし、万人がその楽しさと爽快感を味わえるように仕上げている。まさに過給機エンジンの2本柱だといえよう。
そして2020年、スーパーチャージドエンジンを搭載したハイパーネイキッドモデルとなるZ H2が発売開始となった。過給機エンジンの世界はさらに大きく広がっていく。
試乗モデル/2020 Ninja H2 CARBON
横田 和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。