ヨシムラ
クルマでは一般的となっている電子制御スロットル。2000年代後半から市販バイクにも徐々に採用され始め、カワサキは2019年に市販車に初採用する。フライ・バイ・ワイヤ、ライド・バイ・ワイヤとも呼ばれる電子制御システムだ。
カワサキ初となる電子制御スロットル
電気的にスロットルバルブを作動させるシステムは、大きく分けて2種類存在する。一つはスロットルワイヤーを介した電子制御スロットルバルブシステムで、このシステムはNinja ZX-10RやNinja H2 SXなどに採用されている。もう一つはスロットル自体にスロットルポジションセンサーを配置して、スロットル操作の情報を電気信号として送信し、スロットルバルブを作動させる電子制御スロットルだ。カワサキの量産車では、VERSYS 1000 SEに初採用されている。
今回はVERSYS 1000 SEとNinja ZX-10R、それぞれのスロットルレスポンスを試したが、スロットルバルブ開閉システムの差というより、この2車種のスロットルレスポンスの差を試したと言ったほうがいい。
滑らかな反応が巨体操作に有効
VERSYS 1000 SEのスロットルレスポンスは非常になめらか。これが第一印象だ。なめらかなのだが非力感はなく、スロットル操作に対してエンジンがシッカリと反応する。このVERSYS 1000 SEのレスポンスは、カワサキ車のなかでもっともなめらかに感じた。
VERSYS 1000 SEと似たスロットルレスポンスを持つモデルがNinja ZX-14Rだ。ただ、Ninja ZX-14Rは低回転域ではなめらかなスロットルレスポンスなものの、加速力を重視したモデルのためか、6,000rpm以上でダイレクト感がかなり強くなる。対してVERSYS 1000 SEは、レッドゾーンまでシルキーなスロットルレスポンスが続く。
しかも、ここまで述べた性能はフルパワーモード(F)での話。VERSYS 1000 SEにはパワーモードが装備されていて、Fとローパワーモード(L)が選択できる。FとLのスロットルレスポンスの違いは、LのほうがFより全回転域でエンジンの反応が柔らかい点だ。ここで、ふと冷静になってみると、ある疑問が生じる。Fを選択してもタイトなワイディングはもちろんのこと、市街地の渋滞路でも、ほとんどギクシャクしないのだから、Lの存在価値はあるのだろうか。Lが選択できるのだから、Fのスロットルレスポンスはもう少しピーキーな特性でもいいのではないだろうか。それほどFのスロットルレスポンスのなめらかさが際立つのだ。
Ninja ZX-10Rに関して、劇的にスロットルレスポンスが変わった型式が2016年式だ。2015年式が別モノと思えるくらい、スロットルレスポンスがマイルドになっている。その性能が現行モデルにも継続されているのだ。ただ、VERSYS 1000 SEに比べるとダイレクト感があり、仮にスロットル全閉を“0”、スロットルオンを“1”とすると、ZX-10Rが“0.5”、VERSYS 1000SEは“0.25”、“0.5”、“0.75”が存在するイメージだ。
Ninja H2のようなスロットルレスポンスがピーキーなモデルもあるが、ビッグバイクでありながら、ここで述べたようなライダーになじむスロットルレスポンスは、今のカワサキの傾向といえる。