2020年の鈴鹿8耐にカワサキレーシングチームが参戦を表明。その参戦マシンであるNinja ZX-10RRのテスト車両をレポートする。
性能の高さを秘めるカワサキSSの旗艦
2019年の鈴鹿8時間耐久ロードレース(以下、鈴鹿8耐)で、カワサキレーシングチーム(以下、KRT)は26年ぶりの優勝をはたした。そして2020年の3月末には鈴鹿8耐にKRTとして再び参戦することが発表され、カワサキとしては初の鈴鹿8耐連覇を狙う。その鈴鹿8耐テスト車両を撮影する機会に恵まれたので紹介しよう。
例年、鈴鹿8耐開催前に、舞台となる鈴鹿サーキットで合同公開テストや、チームそれぞれでプライベートテストが数回行なわれる。このNinja ZX-10RRはKRTの鈴鹿8耐テスト車である。
未塗装でカーボン地のままのカウルはスーパーバイク世界選手権のウインターテスト仕様を彷彿とさせる。この鈴鹿8耐テスト車を見る限り、昨年の鈴鹿8耐で優勝したマシンから大きな変更点はないように思われる。その理由は、昨今の市販車を改造して争われるレースでは改造範囲が厳しく制限されているため、外観が大きく変わるような改造ができないこと。そして、この状態で十分ポテンシャルが高いからだろう。その性能の高さは2019年の鈴鹿8耐でレース終盤にライバル勢をつき放したことでもわかる。さらなる足まわりの強化、そして電子制御のアップデートは行なわれるだろうが、鈴鹿8耐までにどのように変化するかは、これからのお楽しみ、というところだろう。
カウルの形状は市販車と同等にすることが決められている。ただ、空力やラジエターへの導風などを考慮して少し細身にしているようだ
スイッチが並ぶ左右のスイッチボックス。右はヘッドライトのON/OFFやキルスイッチ、電子制御のマップのセレクトスイッチ。左はトラコンやエンブレの調整スイッチの他、スターターやピットレーンのリミッタースイッチだ
鈴鹿8耐は2016年からヘッドライトが2灯式となり、走行中は常時点灯が義務付けられている。ゼッケンは夜間走行時に識別できるよう発光式が採用されている
ガソリンタンクは24ℓまで拡大したアルミタンクを採用する。給油口は2つあり、専用の給油装置をはめて片方から燃料を入れ、もう片方は空気抜きとなる
フロントブレーキのマスターシリンダーはブレンボを使う。最近のレーシングマシンでは装着が義務となっているレバーガードはZETA製を採用している
シフトペダルにはいまや市販車でも採用されているオートシフターを装備する。ただし、センサーは市販車よりも感度が高いモノが採用されているようだ
ラジエターはスペインのタレオ製を装着しており、サブラジエターも追加して夏場の耐久レースに対応している。ラジエター本体にはコアガードも装着されている
“最速”の文字が誇らしげなマフラーは、カワサキチームグリーンでも採用されていたビート製を装着する。もちろん、KRT専用のワンオフ品となっている
前後タイヤとホイールは輸送時用のもので、実際に今年のテストなどで使うものとは別モノと思われる。SBKはピレリのワンメイクだが、鈴鹿8耐でKRTはブリヂストンを使用する
フレームは交換不可だがスイングアームは交換が可能で、すばやくタイヤ交換できるクイックリリース機構を備えている
リヤショックはショーワ製で、窒素ガスボンベをつないでプリロードを手で調整できる機構を備える
フロントフォークはショーワのBFFでファクトリー仕様となる。ブレーキはローター、キャリパーともにブレンボで、ローターサイズはタイヤ交換のために小径だ
EWC:Ninja ZX-10RR(2019)/激戦を制した圧倒的パフォーマンス