絶版車の医学

“絶版車の医学”では、絶版車にありがちな症例を紹介し、その対策を解説していく。アドバイザーは絶版車専門店のウエマツだ

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カワサキバイクマガジンvol.117掲載記事(2015年12月1日発売)
イラスト:市川リョウコ 取材協力:ウエマツ

[第5回]クラッチのトラブル

長く動かさなかった時や半クラッチの多用に注意

クラッチは普段バイクに乗っていればそうトラブルに見舞われることはない。しかし、長期放置したときやオイル不良、激しい走りで過剰な負担をかけた時などにトラブルが起きることがある。代表的なクラッチのトラブルを挙げると次のとおりだ。

  • 張り付く
  • すべる
  • 切れが悪い

貼り付きの主な原因は、長期間エンジンを始動させないことが挙げられるとウエマツの岩田整備士は語る。

「クラッチ板の間にある金属製のスチールプレートがサビると、クラッチ板とくっついてしまいます」

対処法として定期的にエンジンを動かすことが挙げられ、クラッチ全体にオイルが行きわたるようにする。

「また、オイルに水が混入していると、よりサビやすくなります。オイルが白濁していたら要注意。すみやかに交換してください」

すべる原因は走行距離が増えたり、高回転域や半クラッチを多用したりすることによる摩耗、また、オイルとクラッチの相性の悪さがある。

「ありがちなのは、クルマ用オイルを使うこと。クルマはエンジンとミッションが別なので、クルマ用オイルにはクラッチをすべらせてしまう添加剤が入っていることもある」

クラッチワイヤーに遊びがないと、気付かぬうちに半クラッチ状態になってしまい急激に摩耗してしまうこともある。遊びがゼロにならないよう調節することでトラブルを回避できる
[劣化]年代物のバイクを取り扱うことが多いウエマツでも「ここまでヒドいのはめずらしい」というクラッチ・アッシー。サビの塊と化していて、ハウジングからクラッチ板を取り出すこともできない
クラッチ板はクラッチハウジングにある溝のなかを動くのだが、ここに段差が生じるとキレやつながりが悪くなる。絶版車はダメージを受けていることがあるので注意したい
[新品]クラッチ板を押し付けるクラッチスプリングは排気量やパワーによって強さが異なる。写真は新品のスプリングだが、右のわずかに長いほうがZ1用で左がZ2用だ

エンジン全バラの重症なことも

また、まれにではあるが、フリクションプレートの硬化がすべる原因になることもあるという。

切れが悪くなる原因は、フリクションプレートやスチールプレートが熱でゆがんだり、ハウジングの溝に段付きができることが挙げられる。改善方法の基本は、パーツの交換だ。クラッチ板は消耗品なのでトラブルが発生しても大きな問題はないが、ハウジングのトラブルとなると大事に至ることもある。

「Z系だとZ1000MkⅡまでエンジンを完全にバラさないとハウジングが取り出せないのです。だからパーツ代はもちろん、工賃もかなりかかってしまいます」

そうならないために、定期的にエンジンを始動してクラッチレバーをにぎり、クラッチ全体にエンジンオイルを行きわたらせるようにしよう。

[劣化]放置期間が長かったのだろうか、フリクションプレートが完全にサビてしまっている。クラッチ板にもダメージがあるので再利用は望めない。すべて交換となる
[新品]新品のフリクションプレートとスチールプレート。フリクションプレートとスチールプレートが交互に収まっている。自分で組み込む場合は表裏があるので注意しよう

クラッチトラブルは早めに対処しよう

クラッチがすべったままにしておくとオイルの劣化が早まります。またサビを発生したままにしておくと、エンジン内部の他のところまでサビが進行しますし、キレが悪いのを放っておくとシフトチェンジ時にミッションに負担がかかりトラブルにつながりかねません。ミッション交換は大きな出費になります。早めに対処することで余計な出費を抑えることができるのです。(ウエマツ整備士 岩田さん)

KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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