AMA Superbike：Z1000S1(1982)／一世を風靡した究極の空冷モンスター

ヨシムラ

150ps以上にチューニングされた空冷4気筒エンジンを駆使して戦う80年台初頭のAMAスーパーバイク。そんな時代に生まれたZ1000S1は、今もなお究極の空冷スーパーバイクレーサーといわれている。

ライムグリーン旋風を巻き起こした憧れの一台

カワサキが本格的にAMAスーパーバイクレースに参戦したのは80年から。翌年にはロブ・マジーの手によってエンジンや車体をチューニングしたライムグリーンのZ1000Jをエディ・ローソンが駆り、シリーズチャンピオンを獲得した。そのチャンピオンマシンのホモロゲーションモデルとして発売されたのがZ1000S1だ。当時、レースの出場権を得るために必要なホモロゲーション台数が24台だったため生産台数はわずか30台。そのほとんどがレースに使われたので現存している台数はかなり少ない。その貴重な一台がカワサキ本社に保存されている。ちなみにほぼ同型の公道仕様車Z1000R、いわゆるローソンレプリカの生産数は500台といわれている。

シルエットこそZ1000Rと似ているが、その内容は完全にレース用のスペシャルモデル。エンジンはツインプラグ化され、ピストンやカム、クランクなどもレース用だ。E・ローソンは82年にも同じスタイルのマシンでチャンピオンを獲得。最強のライムグリーン・モンスターと呼べる一台である。

AMA Superbike Z1000S1(1982)／一世を風靡した究極の空冷モンスター — 公道バージョンのZ1000Rの元となったスタイリング。ビキニカウルは超高速時にハンドリングなどに影響を与えることがあるため、レースでは外されていることが多いという記録も

エンジンはツインプラグ化されカムやピストンなどもレース用。内部のチューニングパーツはJ用のキットパーツとしても販売された。ハイパワーに対応するためクランクケースは強化されたJ系

大きな特徴の一つとなっているカーカー製のマフラーを装備。つや消しブラック仕上げが凄みを感じさせる。抜けのよいマフラーに対して吸気系にはCR33を採用

前部がオイルキャッチタンクになっているアルミ製スイングアームを採用。チェーン調整はエキセントリック式になっている。リヤショックはワークスパフォーマンス製を装備

バーハンドルにシンプルなアナログ式タコメーターを備えるコックピット。余計なモノが一切ないのがレーサーらしい。ガソリンタンクなどの外装はZ1100GPと同様のカラーリング違い

ステップには分厚いゴムが装着されていてレース用には見えない。リヤホイールのワイド化にともない、チェーンライン確保のためにエンジン搭載位置はわずかに左にオフセットされている

フロントブレーキのディスクローターの外径は330mm。肉抜き穴がないソリッドさが無骨だ。2ポットキャリパーはトキコ製。前後ホイールはダイマグ製を採用している

1982 Z1000S1の主なスペック

エンジン形式	空冷4スストロークDOHC4気筒2バルブ・998cc
ボア×ストローク	69.4×66.0(mm)
最高出力	135ps/11,000rpm
ミッション	リターン式5速
乾燥重量	198kg