ヨシムラ
RXエンジンの最強ドラッガー
カワサキにおいて「アメリカン」というジャンルのバイクは、76年登場のKZ900LTD(リミテッド)と呼ばれる2000台限定モデルが一つの源流点である。このバイクの特徴としておもしろいのが、当時のフラッグシップ、Z900のバリエーションモデルであったという点。ここを原点に「フラッグシップのエンジンを積んだアメリカン」というバイクが続々と誕生することになるのであった。
84年にはGPz1100系エンジンを搭載したLTD1100、85年にはGPZ900R/750Rのエンジンを流用した、エリミネーター900/750がリリースされる。当時まだ日本では認知度の低かった「ドラッグスタイル」をいち早く提唱し、超ロングホイールベースに低い車体、極太のリヤタイヤなど筋肉が凝縮されたかのようなスタイル。エンジンは中低速域でのトルクアップを狙ってリファインし、ギヤレシオの変更も相まって強烈な加速感が味わえ、アメリカンの新たなカテゴリーとして歴史が始まることになるのである。
現在でもその造形は新鮮で、一部には熱狂的ファンも多いエリミネーターシリーズ。このシリーズの最上級モデルでありながら、なぜかマイノリティとなってしまったのがZL1000である。生産終了した900に変わり86年に登場したモデルだったが、「最強エンジンを積むアメリカン」という伝統は健在。世界最速を奪還すべく開発された、GPZ1000RXの心臓を持つスプリンターであった。出力特性も900よりフレキシブルで扱いやすいものであったが、若干ツアラー寄りになったスタイルがアダとなったか、人気の面では900や750の下に甘んじているというのが現状。性能面では正常進化したモデルであるにも関わらず、なぜか「エリミネーター」の名が冠されなかったことも大きな要因の一つといえるだろう。
ZL1000 SPEC
●全長×全幅×全高:2,330×805×1,130(mm) ●軸間距離:1,615mm ●車両重量:244kg ●エンジン形式:水冷4ストロークDOHC並列4気筒 ●排気量:997cc ●ボア×ストローク:74×58(mm) ●最高出力:110ps/9,000rpm ●最大トルク:9.3kg-m/7,000rpm ●輸出車