ヨシムラ
この企画はライディングポジション、ミラー、シート、サスペンションなど、ある特定の機能や装備をインプレッションするという企画だ。“一ヶ所だけの感想で2ページも語れるのか?”といった心配もあるが、意外と語るべきネタは多い。
中回転以上で体感できる2種類のパワーモード
ニンジャ1000SXにはF(フルパワーモード)とL(ローパワーモード)の2モードからなるパワーモードが採用される。結論から言うと、ニンジャ1000SXのFとLに大きな違いが現れるのは回転数を上げてワインディングを走る時だ。回転数でいうと4000rpm以上で性能の差を体感しやすい。逆を言えば、それ以外の場合は大きな差はない。市街地ではFよりLのほうが走りやすいように思われるかもしれないが、市街地を走っている時の回転数は4000rpm以下が多く、その領域ではあまり差を感じられなかった。
そもそも、ニンジャ1000SXには電子制御スロットルが採用されていることもあり、スロットルレスポンスはFでも非常になめらか。エンストとは無縁の世界と思えるくらい。それでいてライダーの操作に忠実に反応するので、市街地でもエンジンを十分コントロールしやすい。
あらゆるシチュエーションで操る快感を楽しめるFモード
では、回転数を上げてワインディングを走る時は、どのような差が現れるのか。中回転以上で走っている状態からさらに加速しようとする際、LよりFのほうが力強く加速する。たとえば、緩やかなカーブを快適に抜け、その後の直線に向けて力強く加速したい場合にはFが有効だ。ニンジャ1000SXは最高出力141㎰。上質なエンジンフィーリングといっても、スロットルを大きく開ければかなり力強く加速していく。対してLは腹8分目といった感じで、スロットルを大きく開けてもジワリと加速する。ビッグバイクのエンジン特性に慣れないうちは、Lのほうがワインディングを快適に走れるのではないだろうか。
といっても、慣れればおもしろいのは断然F。上質かつ力強いエンジン特性ゆえに、あらゆるシチュエーションで有効であり、ずっとFでもいいくらい。このエンジン特性は、最近のカワサキ車に感じられる傾向であり、扱いやすいぶん、アグレッシブに攻め込むことができるのだ。
セレクト方法は2パターン
パワーモードのFとLを切り替えるには、ニンジャ1000SXでは2パターンの方法がある。一つは電子制御機能の各設定を個別に設定することができるライダーモードで切り替えるパターンで、もう一つはインテグレイテッドライディングモードで各モードを変更することでパワーモードも切り替えるパターンだ。
ライダーモード
インテグレイテッドライディングモード
3モード設定も用意
現行カワサキ車に採用されるパワーモードには、F(フルパワーモード)とL(ローパワーモード)の2モード、FとM(ミドルパワーモード)とLの3モードといった2パターンのパワーモードが存在する。2モードが設定されているモデルはニンジャ1000SXとヴェルシス1000 SE、3モードが設定されているモデルはニンジャH2 SX SE/+、Z H2、ZX-10Rなどがある。
ワインディング
![[1点集中チェック!]Ninja 1000SXのパワーモード](https://www.kawasaki1ban.com/wp-content/uploads/2021/08/ninja-1000sx-power-mode-check_11-580x387.jpg)
4,000rpmくらいから上の回転域でFとLの差が現れるため、低回転域を多用するようなタイトなカーブが連続するワイディングでは、FとLの違いは体感しづらい。対して、中回転以上を使ってスピードに乗せて走り抜けていけるワイディングでは、FとLの差が体感できる。このようなシチュエーションでは、力強く加速していくFで走るのが楽しい。逆にLでは、ねらった加速が得られないこともある
市街地
![[1点集中チェック!]Ninja 1000SXのパワーモード](https://www.kawasaki1ban.com/wp-content/uploads/2021/08/ninja-1000sx-power-mode-check_12-580x387.jpg)
クルマの流れに沿って市街地を走っている限りは、中回転以上を利用することはほとんどない。そのため市街地ではFとLの違いはあまり体感できないだろう。ニンジャ1000SXはスロットル操作に対するエンジンの反応が非常になめらかなので、フルパワーを発揮するFで市街地を走っても、何らストレスは感じない。というよりもFがかなり上質なぶんだけ、市街地ではLの必要性を感じないほどだ
今回のチェックマシン「Ninja 1000SX」
![[1点集中チェック!]Ninja 1000SXのパワーモード](https://www.kawasaki1ban.com/wp-content/uploads/2021/08/ninja-1000sx-power-mode-check_10-580x386.jpg)
パワーモードを変えることで、電子制御スロットルのレスポンスとパワー特性がどのように変わるかをチェックするためニンジャ1000SXを選んだ。ニンジャ1000SXのパワーモードは、Lではフルパワーの約75%に出力が制限される。エンジン回転数、スロットルポジション、ギヤポジションを検知することで、スロットルレスポンスと出力特性を変化させている
Ninja 1000SXの主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,100×830×1,190[スクリーン最高位置:1,225](㎜) |
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軸間距離 | 1,440㎜ |
シート高 | 820㎜ |
車両重量 | 236㎏ |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列4気筒・1,043㎤ |
ボア×ストローク | 77.0×56.0(㎜) |
最高出力 | 104kw(141㎰)/10,000rpm |
最大トルク | 111N・m(11.3kgf・m)/8,000rpm |
燃料タンク容量 | 19ℓ |
タイヤサイズ | F=120/70–17・R=190/50–17 |
価格 | 148万5,000円 |
井田 幸雄
カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏