ヨシムラ
この企画はライディングポジション、ミラー、シート、サスペンションなど、ある特定の機能や装備をインプレッションするという企画だ。“一ヶ所だけの感想で2ページも語れるのか?”といった心配もあるが、意外と語るべきネタは多い。
※文中の内容は雑誌掲載当時のものとなります
疲労軽減に効果絶大なレバー操作アシスト機構
快適にツーリングするために非常に役立つシステムがアシスト&スリッパークラッチだ。クラッチレバーの操作を軽くしたり、シフトダウンした時にリヤタイヤがホッピングするのを抑制したりする働きを持つクラッチで、日常で乗る時は、なんといっても前者の機能がうれしい。
スポーツ走行する時には後者の機能が役立つが、常用域では、リヤタイヤがホッピングするほど急激にシフトダウンすることはめったにない。一方で、クラッチレバーの操作は、多くのモデルの場合、常用域のライディングには欠かせない操作で、その操作が軽いということは、快適な長距離ツーリングにもつながる。したがって、アシスト&スリッパークラッチに備わる機能のうち、我々にとって身近で有効な機能は、クラッチレバー操作に関わる機能といえる。カワサキの現行モデルでは、バルカンSなどの一部モデルを除き、ほぼすべての市販車に採用されている。これら採用モデルの中で、もっともクラッチ操作が軽いモデルがニンジャ250だろう。
ニンジャ250には15年式で初めて採用され、ただでさえ軽い250㏄クラスのクラッチ操作がより軽くなった。さらに18年式では、それまでよりも20%軽い力でクラッチ操作が可能となり、驚くほどの軽さを実現している。今回試乗したモデルは21年式ニンジャ250で、一般道路を1日で300㎞ほど走って、その効果を体感してきた。
クラッチレバーをにぎると、レバーがスッ…っとグリップ側に寄せられる。その感覚をたとえれば、持ち上げた荷物が予想以上に軽く、思わず力が勢い余ってしまうような感覚だ。と言ってもにぎり過ぎてしまうというわけではなく、想像を超える軽さという意味。それでいてレバーからの反力も適正で、にぎる力を緩めればリニアにレバーは戻る。
そのため、半クラなどのレバー操作もやりやすい。軽いがゆえにぎり過ぎて駆動力がカクン…と落ちたとか、そんなことは一切ない。単に軽いだけでなく、クラッチレバーの操作性もよく、Uターンなどで絶妙なクラッチワークもこなせる。このようにクラッチレバー操作がしやすいゆえ、市街地、渋滞路、ワインディングなどの一般道路で遭遇するだろうシチュエーションを1日かけて走っても、クラッチレバーをにぎる左手はまったく痛くならなかった。
ここまでニンジャ250のクラッチレバー操作について語っておきながら何だが、ニンジャ250はもともとクラッチレバー操作が軽く、アシスト&スリッパークラッチが装備されても、「軽くなってなおOK」というレベルだ。絶大な効果を得られるという点では、ニンジャH2の右に出るモデルはない。15年式の初期型に乗った者からすれば、16年式から採用されたアシスト&スリッパークラッチは“天の恵み”に違いない。
快適性と走行性能を両立
今回のチェックマシン「Ninja 250」
Ninja 250の主なスペック
全長×全幅×全高 | 1,990×710×1,125(㎜) |
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軸間距離 | 1,370㎜ |
シート高 | 795㎜ |
車両重量 | 166㎏ |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列2気筒・248㎤ |
ボア×ストローク | 62.0×41.2(㎜) |
最高出力 | 27kw(37㎰)/12,500rpm |
最大トルク | 23N・m(2.3kgf・m)/10,000rpm |
燃料タンク容量 | 14ℓ |
タイヤサイズ | (F)110/70-17 (R)140/70-17 |
価格 | 64万3,5000円(メタリックカーボングレー)・65万4,500円(KRTエディション・ライムグリーン×エボニー) |
井田 幸雄
カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏