ヨシムラ
この企画はライディングポジション、ミラー、シート、サスペンションなど、ある特定の機能や装備をインプレッションするという企画だ。“一ヶ所だけの感想で2ページも語れるのか?”といった心配もあるが、意外と語るべきネタは多い。
あらゆる要件のなかで重要視したZ1らしさ
カワサキがまたZを出すと。ただし、スーパーネイキッドの水冷Zではなく、今度はクラシカルテイストの水冷Zらしい。Z900RSの発表前、カワサキが配信した予告動画からは、新型Zに対してそんなモデルを想像した。事実、Z900RSはZ1のデザインが継承されていて、開発過程ではZ750FOURを横に並べて造形されたほどだ。
発表当時、Z900RSのデザイナーにインタビューする機会があったのだが、今、思えば聞き逃したことがある。デザイナーにインタビューしたのは、Z900RSの発表間もないときで、試乗どころかまたがってもいないタイミングだった。そのため、見た目のZ1らしさは、かなり細かく教えていただいたのだが、ライディングポジションに関してのZ1らしさまでは聞けないでいた。
今に蘇る70年代ポジション
思うにZ900RSは、ライディングポジションに関しても、かなりZ1が意識されたのではないだろうか。幅広でグリップ位置が高いハンドル。シートにドカッと座って、上体はかなり起きる。コイツはまさに70年代のライディングポジション。とりわけZ1のライディングポジションにかなり近い。同じネイキッドカテゴリーのZRX1200ダエグやゼファーが、スポーティなライディングポジションに感じるほどだ。
さらに、ふと思った。Z900RSのライディングポジションは、Z1以外にも何かに似ている。そう、10年ちょっと前に多く見かけたカスタムネイキッドだ。もともとアップハンドルのネイキッドをさらにアップタイプに変更し、極端なバックステップに交換して、シートをアンコ抜きしたカスタム車だ。こうなると往々にして、まるでシートの上に正座しているかのような殿様座りのようになる。Z900RSはそこまで極端でないにしろ、アップハンドル、バックステップ、アンコ抜きシートに変えたカスタムネイキッドのライディングポジションを思い出させる。
市街地走行や取りまわすときの操作性はかなりいい。イスに座った状態で目前のハンドルを左右に操作するかのように、肩ヒジ張らずに操れる。ハンドル切れ角は35度で、数字そのものは際立って大きくはないが、フォーク径の太い倒立フロントフォークを採用していることを考えれば、十分なハンドル切れ角で、小回りも効く。幅広ハンドルだが、ハンドルを目一杯切っても、外側のグリップ位置が遠すぎたり、内側のグリップ位置が近すぎたりすることもない。
普段はバイクを操作しやすいライディングポジションだが、幅が広くグリップが高いゆえに、スポーツ走行で上体を伏せたときには、ちょっとハンドル位置が高すぎるようにも感じた。だからといって、ハンドルを低くすると、今度はZ1のイメージとは異なるライディングポジションになってしまう。想像でしかないが、開発中はいろいろな意見が挙がったに違いない。そのなかで開発者は、Z1イメージのライディングポジションを優先させたのだろう。
Z900RSのライディングポジション
ワインディング
市街地
高速道路
今回のチェックマシン「Z900RS」(2021)
Z900RS(2021)の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,100×865×1,150(㎜) |
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軸間距離 | 1,470㎜ |
シート高 | 800㎜ |
車両重量 | 215㎏ |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列4気筒・948㎤ |
ボア×ストローク | 73.4×56.0(㎜) |
最高出力 | 82kW(111㎰)/8,500rpm |
最大トルク | 98N・m(10.0㎏f・m)/6,500rpm |
燃料タンク容量 | 17ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70-17・(R)180/55-17 |
価格 | 135万3,000円(税込み) |
井田 幸雄
カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏