エンジン系統の雑学

カワサキのエンジンに関して、系統ごとに構造や整備など、現場メカニックの視点から細かく解説していく

Z750FOURプラグ交換

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ヨシムラ

しっかりとメンテナンスされている空冷Z系は、新車同様とまではいかないまでも、シチュエーションを問わず難なく走れてタフネス。ただし、それを可能としているのは、元の状態が正しく組まれた車両だから。現代でもそれを実現できるのが空冷Z系ともいえる。

キチンと仕上げられた空冷Zは壊れず維持しやすい

一般論として、壊れやすくて維持が大変だといまだに言われる絶版車。製造年の古さや補修部品の調達状況への不安から、そのように思われているのかもしれない。その一方で、カワサキの絶版車は、現存稼働率が高いと言われる。現にZ750FOURを所有し、毎日のように乗っている私からすれば、年式の古さが理由で困ったことはほとんどなく、むしろどこへ行くにも安心して乗り出せる。

空冷Z系エンジンは、出力特性や頑丈さ、整備性において、当時としてはズバ抜けた基本設計をしている。さらにリプレイスメントも含めた補修部品や消耗品が豊富で、実動状態をキープしやすい。とはいえ、街で走っている車両を見ると、コンディションに差があるのも事実だ。これには空冷Z系ならではの整備性が大きく影響していると思われる。Z1/Z2は、商品企画や基本設計の段階で、整備環境の悪さや整備技術の未熟さがあったとしても、実動状態を維持できるように考慮されている。分解整備においては、精密さよりも正確な作業が要求されていたと思われる。俗にエンジンオイルさえキチンと交換していれば壊れないとされているのは、そのような整備環境や利用環境でも最低限の走行可能状態はどうにか維持できるからで、良好なコンディションを保つためには、やはり正しい整備術が欠かせない。

長期ライフで差が出る、納車当時のコンディション

私のZ750FOURが好調なのは、納車前に正しく分解整備され、定期的にメンテナンスしているからで、とくにエンジンの組み立て作業においては、私の要望に対してウエマツ基準で応えてもらったことが大きい。

「カズさんから要望いただいたのは、“想定される常用回転域で、エンジンからヒュイーンというメカニカル音を奏でたい!”ということでした。これを実現するためには、ていねいな組み立て作業だけでなく、ギヤ同士の噛合いやベアリングの精度も重要。それらの部品には工業製品として許容されている公差があるわけですが、すべて高精度であればいいのかといえばそうでもなく、部品同士の相性も加味して組み立てていかなければ実現できません。また、机上の理論で組み上げたとしても、実際にエンジンをかけてみるまで分からないのがカズさんからの要望。結果として、お応えできてホッとしています」

私のZ750FOURは、空冷Z系ならではのカムチェーン音を奏でるだけでなく、可能な限り新車状態に近しい状態となるよう組み立てられた。乗り出しからすでに4万㎞を超えている今でも、好調ぶりを味あわせてくれるのは基がいいからだと言える。

KAZU中西の使用例

プライベートではもちろん、取材でもZ750FOURで移動している。雨天時も乗るから、累積走行距離は伸びやすい。出先での故障を極端に嫌うため、運行前点検はもちろん、定期的な消耗品の交換にこだわる。消耗品選びのポイントは、高精度・タフネス・信頼性の高さ。技術力と実績のあるメーカー品をチョイスしている。

駆動系

ノーマルのZ2は630サイズのドライブチェーンを採用しているが、その重さが大きなフリクションロスとなっている。520サイズへコンバートすることで、低フリクション化を実現するだけでなく、エンジンやトランスミッションに掛かる負荷を軽減させている。

チェーン520化
520化の注意点は、製品の排気量指定。同サイズでも、250cc用を転用するのは厳禁。私は高品位なRKジャパンのGC520XUWRを愛用している

プラグ交換

高熱にさらされ続けながらも、確実な着火性能を維持できるかが、スパークプラグ選びのこだわり。私は電気系統への負荷が少ないデンソーのイリジウムパワーを重用。5,000km毎に交換する。定期的な点検整備を実施できるのであれば、純正指定プラグでもOK!

Z750FOURプラグ交換
Z750FOURの場合、燃料タンクを外さなくてもプラグ交換が簡単にできる。標準プラグの場合、電極の角が丸まっていたら使用限度に達しているので要交換

エンジンオイル

エンジンオイルは、熱を入れた時点から受熱劣化が始まる。過去の実験から、100%化学合成油は走行1,500kmを超えたところから一気に性能低下、鉱物油は3,000kmまでなだらかに性能低下することを確認。私は保護性能を重視しており、ウエマツの絶版車用オイルやフルミネラル油を使用している

バイクライフ

3年間で走行4万km。荷物満載のロングツーリングにも躊躇なくZ750FOURで乗り出す。好調を維持するために実践しているのは、必ず車体を真っ直ぐに立ててからエンジンを始動すること、長時間アイドリングで停め置かないこと

多田憲正氏とKAZU中西(筆者)
私のZ750FOURは大病と闘うZ1のデザイナー・多田憲正氏を元気付けるために製作したもので、年に1度は多田氏のご自宅を訪ね、バイク談議に花を咲かせている

エンジン組み立てのウエマツ基準

ウエマツでは5グレードの納車整備プランを用意している。また、ステージ4以上は手厚い保証やアフターサービスを受けられる。そのほかにもユーザーの要望に可能な限り応えてくれる整備オプションもあり。エンジン組み立てについては、長く乗り続けられることに重点を置き、自社整備基準を設けて丁寧かつ正確に作業を実施している

強化カムチェーン

空冷Z系では、乗り方やメンテナンス具合にもよるが、カムチェーンにまつわるトラブルがしばしば挙がっている。故障を未然に防ぐという意味では、新品交換が望ましい。だが、よりワンランク上の安心感を得たいのであれば、強化カムチェーンにアップグレードを推奨する

コンディションのいいクランクシャフト
バランスも含めコンディションのいいクランクシャフトを用意できたなら、カムチェーンも強化タイプを使用したい。不快振動の軽減にも貢献する

ベアリングとギアの噛みあい

長く乗れるエンジンを作るために、主要3軸のベアリングを新品交換するのは当然。ウエマツでは高精度かつ高品位なベアリングを用意するだけではなく、それらの公差合わせや各ギヤの噛合いクリアランス調整などにウエマツ基準を設けて、ていねいに正確に組み立てていく。実はこのこだわりが、綺麗な“ヒュイーンというメカニカル音”を生む

正確な組み立て

組み込む部品の品位や相性がよくても、正確な組み立て作業でなければウエマツ基準は満たせない。その詳細は企業秘密だが、大まかにいえばクイックに作業を終えるための便利ツールは使わず、専門技術を持った職人が、ていねいに手組みしていくイメージだ

ガンコート

ノーマルのスタイリングにこだわって製作した車両なので、オイルクーラーは追加しない。だが、タフなロングツーリングもこなせるようにしたいと要望。それを叶えるべくウエマツから提案されたのが、エンジンのガンコート仕上げ。走行条件にもよるが、高い放熱性が見込めるコーティング術で、黒く引き締まったルックスとなる

ガンコート仕上げ
ステージ4整備など、シリンダーを外す作業が伴うときに実施しやすいというガンコート仕上げ。放熱性だけでなく耐候性も高まると、近年では人気のカスタム手法だ

完成

注文から約2か月を経て納車された私のZ750FOUR。あれから約3年半を経過しているが、定期点検や消耗品の交換のみで好調を維持している。こだわりのメカニカルサウンドも健在で、現行車と遜色のない走行性能に満足している。末永く乗るなら、ハイレベルな納車整備が重要だと実感している

Z750FOURとKAZU中西(筆者)
意外に思うかもしれないが、ゼファーやZZR1100、ZRX1100に乗っていた当時より、整備にかかる費用は劇的に少ない。Z750FOURが整備しやすい構造で、消耗品も比較的に安価だ。ZZR1100とZRX1100の1/2〜2/3程度のコストで済む。これもベースコンディションのよさがあればこそのメリット
KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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