エンジン系統の雑学

カワサキのエンジンに関して、系統ごとに構造や整備など、現場メカニックの視点から細かく解説していく

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ヨシムラ

[第2回]空冷Z系編・オイルがらみの注意点

タコメーターケーブルの差し込み部。奥には回転するシャフトがあり、カムシャフトによってギヤ駆動される。シャフトの回転が速い分、オイルシールの摩耗も早く、使用経過によって滲み出す

オイル滲みが知らせてくれるメンテナンス時期

空冷Z系に関して言えば、これまでに携わってきた期間や台数だけでなく、修理前のコンディションもピンからキリまでだったというウエマツの栗原弘行工場長。的確に修理するためには、十分な観察と分析が欠かせない。数多くの空冷Z系モデルを取り扱ってきたウエマツだからこそ、修理ノウハウやデータが復調術に活かせるという。使用経過に従って発生するエンジンオイルにじみについては、Zだからこその要注意ポイントはあるそうだ。

「例えば、シリンダーヘッドとヘッドカバーの合わせ部分から発生するオイルにじみ。ヘッドカバーガスケットは紙系で、カムプラグシールはゴム系。ジェネレータカバーとクランクケースの合わせ部分も、ガスケットは紙系でグロメットはゴム系。この異質な組み合わせが、オイルにじみの原因です。エンジンの発熱から受ける影響が異なる物同士ですから、劣化の進行も違ってきます。その結果、オイルにじみが発生し、そのままにしておけば漏れになります。とは言え、とくにZだからとか、Z特有のウィークポイントと見立てるのは違うと思います。私は基本的であり定期的にメンテナンスする箇所だと思っていますし、オイルにじみはその時期がきたというシグナルだと思います。修理するにあたって、プラグやグロメットなどは、お客さまからの指定がとくにない限り、純正品を使用します。その理由は、品質への信頼性。欠品パーツならともかく、メーカーから純正の新品が出るわけですからね」

Z系のヘッドカバーを開けるたびに、カワサキの考える整備性やオイル管理について、感心させられるという。「現代からしてみれば、かなり劣悪な整備環境でもメンテナンスできるように考えられているなと思います。当時の仕向け地によっては、エンジンオイルは交換せずに継ぎ足しで乗っていますからね。エンジンオイルは重要だけれど、性能維持をオイルだけに頼らない作り込み。シリンダーヘッドのカムシャフトホルダーやオイルタブまわりを見ていると、特にそう思います」

エンジンオイルの交換時期については、使われているコンディションによって異なるが、3000キロ毎が目安になるという。さらに、オイル交換時に合わせて点検調整したい部分もあるとか。「最近、アイドリングが高くなったなぁとか、アクセルオフした時に回転の落ちが悪いなぁと感じた時は、点火進角用のガバナースプリングが疑わしいです。初期型ZからJ系にまで言えることで、スプリングのヘタリに気づかないと、キャブレターやポイントをいくら調整しても症状は治りません。ポイントギャップの調整等と一緒に、オイル交換の時期に合わせて点検すると良いですね」

オイル交換のタイミングにさまざまな点検整備を合わせるのは、後々のことまで考えると合理的だという。
「重要な整備タイミングを忘れない、整備時間を有効活用するという意味合いからも、オイル交換は都合の良いタイミングになると思います。好調を維持してもらいたいですね」

取材協力ウエマツ
住所東京都八王子市宇津木町728-1
電話番号042-696-6667
URLhttps://www.uematsu.co.jp
KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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