エンジン系統の雑学

カワサキのエンジンに関して、系統ごとに構造や整備など、現場メカニックの視点から細かく解説していく

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冷たい雨や突発的な降雪、早朝夜間の路面凍結などから乗り出す機会の減る冬。この間に、愛車の労をねぎらう意味でも、しっかりと手入れをしつつ、不具合のある場合は直しておきたい。

次シーズンの快適な走りのために

空冷水冷を問わず、エンジンが正常に動くために必要な三大要素は、いい混合気・いい圧縮・いい燃焼。今から40年以上も前に設計された空冷Z系エンジンだが、その三大要素については現代のバイクにはないおおらかさを見せており、わずかにバランスをくずした程度では難なく動いてしまう。そんなタフネスさから、バイクシーズンは点検整備がおろそかになりがち。オフシーズンといわれる冬季に、しっかりとメンテナンスしておきたい。その整備箇所は、すべてのバイクに共通するという前置きをしつつ、空冷Z系ならではのチェック項目をウエマツの栗原弘行工場長にうかがった。

「シーズンの初めはよかったけれどシーズン終盤になって不調となった場合、原因はキャブレターなのか?と疑われがちですが、ノーマル車ではコンタクトブレーカーポイントに不具合が起こっているかもしれません。ポイントギャップ量や点火時期はもちろん、裏側にあるガバナーもチェックしておきたいです」

電気系と点火系は空冷Z系ならではの点検項目

点火時期を機械的に調整しているガバナースプリングの張力低下は、スロットルワークに対するエンジンレスポンスの緩慢さにつながる。キャブレターの不調と似たような症状となるため、誤認に注意したい。

「スパークプラグの状態やバッテリーもチェックしておきたいですね。ノーマルレギュレータは過充電気味なので、液量もチェックします。見落としがちな関連項目としては、エアエレメントの状態も挙げられます」

その一方で、オフシーズン中はそのままにしておき、走り出す前に整備したいところもあるとか。

「エンジンオイルは自然に劣化していきますから、冬季は乗らないのであれば交換はシーズンイン直前でいいと思います。ただし、シリンダーヘッドカバーやケースカバーなど、合わせ面からオイルにじみや漏れがある場合は、オフシーズンのうちに直しておきましょう」

エアフィルター

栗原工場長によれば、たくさん走る人ほど見落としがちだというエアエレメントのコンディション。ホコリやチリなどで目詰まりすれば、吸気効率が落ちるだけでなく、適正な空燃比を保てなくなる。冬場は気温の低下によってエンジンの調子がよくなるのだが、そうでない場合は真っ先にチェック。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ エアフィルター
フィルターが真っ黒に汚れている場合は、躊躇せずに新品に交換する。古いものを抜き取り、新品に差し替えるだけなので、作業は簡単

オイルにじみ

エンジンパーツを組み合わせる部分には、気密性を保つためのガスケットやOリングが用いられている。これらは受熱と冷却の繰り返しによって劣化していくもので、オイルにじみや漏れが発生していたら使用限度と考え新品交換する。時間のあるオフシーズンだからこそ、しっかりと対処したい。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ ジェネレータカバーグロメット部からのオイルにじみや漏れ
空冷Z系では定番的だといえるジェネレータカバーグロメット部からのオイルにじみや漏れ。ウエマツでは対策ノウハウがあるとのこと

オイル交換

労いの意で、シーズンオフと同時に交換したくなるのが人情。しかし、エンジンオイルは、注入後から自然に酸化が始まり、エンジンをかけなくても劣化していく。エンジンの分解整備やオイル漏れの対処などをしない場合は、シーズンインの走り出しまで交換しない。冬でも走る人は、普段の交換サイクル通りでいい。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ エンジンオイル交換
エンジンオイルを抜き取る際は、ドレンボルトのOリングもチェックする。硬化や変形(主につぶれ)、ひび割れがある場合は、新品に交換してしまう
空冷Z系編・オフシーズンにメンテ オイルエレメント(フィルター)を交換
オイルエレメント(フィルター)を交換する際は、スプリングやワッシャーの紛失に注意。外した時点で入っていなかった場合は、部品の追加で対処する

カムチェーン

点火時期と同時にチェックしておきたいのがカムチェーンの張り具合。エンジンを暖気したのち、数回軽くブリッピング(アクセルをわずかに回す)したときに、エンジンからガチャガチャと異音が発生していた場合は、カムチェーンがたるみ過ぎることが考えられる。栗原氏によれば、整備実績の高い整備士ほど気付きやすいそうだ。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ ポイントカバー
まずはポイントカバーを外し、点検窓で確認しながらクランクシャフトを回転させて、Tマークを合わせる。なお、この作業はエンジンの冷間時に行なう
空冷Z系編・オフシーズンにメンテ テンショナーロッド
テンショナーはシリンダー背面の中央部にある。テンショナーロッドを固定しているボルトを緩めればロッドがスプリングによって押し出される。ボルトを締め直して作業終了

バッテリー

ノーマルレギュレータ車の場合は、バッテリーが過充電気味になりがち。とくにコンディションをチェックしておきたい。点検項目は電圧と液量。可能ならば比重も点検する。バッテリーは、電装系の保護パーツとしても機能しており、不具合が発生していればレギュレータやジェネレータの破損にもつながるので、意外に重要。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ バッテリーの液量
バッテリーの液量がロアレベル以下の場合は、市販されているバッテリー用の純水を、アッパーレベルまで補充する。希硫酸を追補充してはならない
空冷Z系編・オフシーズンにメンテ バッテリー端子
バッテリー端子に白い粉が付着している場合は、キレイに拭き取っておく。端子の緩みやサビもチェック。作業時はプラス端子が車体アースしないよう注意
空冷Z系編・オフシーズンにメンテ バッテリーケースの汚れ
ケースの汚れ等によって液量をチェックしづらい場合、ペンライトなどのツールを活用。光を透過させて確認する。液量は全て均一に合わせる

点火時期

キャブレターの不調と似たような現象を起こす点火時期の狂い。エンジンの稼働経過にしたがってポイントギャップは必然的になくなっていくものなので、定期的な点検と調整が必要となる。コンタクトブレーカーポイントでは、コンデンサの不具合でも点火不良となるが、空冷Z系の場合は補修部品が入手しやすい。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ ポイントテスター
ポイントが開き始める瞬間は、テスターの針が振れることで確認するのだが、通電すれば光る検電棒でもチェックできる。調整板を動かし光る位置を合わせる
空冷Z系編・オフシーズンにメンテ ポイントテスター
まず1・4のFマークがタイミングマークと合った瞬間、ポイントが開き始めるよう調整。次はクランクシャフトを1回転させ、2・3の点火時期も調整する

プラグ

シーズン初めの乗り出しはよかったが、終盤になって調子をくずしているときにチェックする。乾いたくすぶりの場合は、点火時期や燃調の狂いが考えられ、ひどく濡れているくすぶりの場合は、燃焼室へのオイルリークが疑わしい。標準型スパークプラグの推奨交換時期は5,000km毎となっており、電極の消耗がひどくてもエンジン不調となる。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ プラグをチェック
点火時期の狂いまたは燃調の狂いが疑わしいくすぶり状態。点火時期とキャブレターの点検調整を行なったのち、新品プラグに交換して再度焼け具合を確認する

タイヤ

空気圧は最低でも月に1度は確認するのだが、冬季に走らせない場合はトレッド面の亀裂損傷や遺物の刺さりなどを、くまなくチェックする。新品に交換する場合は、次シーズンの走り出し直前で良い。冬季も走る場合は、スポークの張り具合もチェック。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ 空気圧チェック
冬季に動かさない場合は、空気圧を標準時より高めにしておく。転がり抵抗が減って、ガレージ内や保管場所での移動もしやすくなる

チェーン

入庫車両の実績から、意外に点検整備不足だといえるのがドライブチェーン。適正なたるみ量に調整するのはもちろんだが、シーズンオフの期間は、しっかりと清掃・注油できるタイミングでもある。スプロケットと共に摩耗があれば新品に交換する。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ チェーンのたるみ量
適正ではないドライブチェーンのたるみ量は、パワーロスや故障の原因にもつながる。シーズン中にもまめに点検整備、調整しておきたい

ブレーキ

シーズン中は徐々に摩耗していくので、意外にコンディションチェックされていないのがブレーキシステム。とくにリヤドラムブレーキ車の場合は、走らない時期だからこそ、しっかりと点検整備する。ペダルを踏みこんでいったときにカチッと止まらない場合は、ライニングの偏摩耗が考えられる。

空冷Z系編・オフシーズンにメンテ フロントブレーキパッドの残量
フロントブレーキは、パッドの残量を点検。奥まっていて見づらいため、ペンライトを使うと確認しやすい。汚れがひどいようなら清掃する
空冷Z系編・オフシーズンにメンテ ドラムブレーキ
ドラムブレーキは、ペダルを操作してロッドとリンクレバーのスムーズな動きを確認。押し下げた位置でカチッとした感触なら問題なし
空冷Z系編・オフシーズンにメンテ ブレーキライニングの偏摩耗
押し下げた位置から力を増せばさらに押し込める場合、ブレーキライニングの偏摩耗が考えられる。グニャっとした手応えならば疑わしい
空冷Z系編・オフシーズンにメンテ ブレーキライニングの偏摩耗
ライニングを押すためのカム位置とリンクレバー位置が正常になっている場合は、摩耗限度を知らせるインジケーターでも確認できる
KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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