川崎重工業の水素戦略

カワサキは水素供給のインフラ構築に向けた実証実験や、水素を燃料とした発電施設の技術開発、そして水素エンジンの開発など、多分野において水素事業を展開している。連載企画『川崎重工業の水素戦略』では、二輪に限らず、カワサキの水素事業の現状を紹介する。

[第6回]神戸液化水素荷役実証ターミナル
写真:HySTRA

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ヨシムラ

カワサキは長年、水素に関する技術を磨いてきた。現在は、水素供給のインフラ構築に向けた実証実験や、水素を燃料とした発電施設の技術開発、そして水素エンジンの開発など、多分野において水素事業を展開している。連載企画『川崎重工業の水素戦略』では、二輪に限らず、カワサキの水素事業の現状を紹介する。第6回目は、オーストラリアから運んできた褐炭由来の水素を受け入れる日本のターミナルについて解説する。

カワサキが担う液化水素の受け入れ

カワサキが理事長を務める技術研究組合、HySTRA(ハイストラ)は、現在、オーストラリアから褐炭由来の水素を輸入して、日本で供給する実証実験を行なっている。この実証実験の工程のうち、オーストラリアから日本に水素を運搬する役割と、日本で荷揚・貯蔵する役割をカワサキが担当している。液化水素運搬船が運んできた液化水素を揚荷したり、液化水素を積んだりする施設が、液化水素受入基地だ。カワサキは液化水素の揚荷・積荷・貯蔵の実証実験を行なうための神戸液化水素荷役実証ターミナルを建造し、現在、水素を受け入れるための実証実験を行なっている。

神戸液化水素荷役実証ターミナルは、2020年6月から水素置換を実施しており、すでにターミナル内に設けられた貯蔵タンクへの水素充填作業を完了している。現在は、カワサキが建造した液化水素運搬船“すいそ ふろんてぃあ”への液化水素充填などの実証実験を実施中だ。

神戸液化水素荷役実証ターミナルの設備

液化水素運搬船では、水素を-253℃に保持したまま日本に運んでくる。その液化水素を、液化水素受入基地で船から抜き取り、-253℃を保ちながら陸上の液化水素タンクに貯蔵していく。この作業を問題なく実施できるかどうか、神戸液化水素荷役実証ターミナルで実証実験しているのだ。神戸液化水素荷役実証ターミナルは兵庫県にある神戸空港島の北東部に建造され、広さは1万㎥となっている。主要設備は次の通りだ。液化水素を船から抜き取ったり、船に充填したりするローディングアームシステム。液化水素を貯蔵する液化水素貯蔵タンク。これらの設備に加え、タンクローリーに液化水素を充填する設備や管理棟などが建設されている。

ローディングアームシステム

神戸液化水素荷役実証ターミナルの主要設備であるローディングアームシステムと液化水素貯蔵タンクは、液化水素を揚荷・積荷・貯蔵するための要の設備だ。

ローディングアームシステムは、船とターミナルの接点といえる設備で2本のアームが装備されている。1本が液化水素の通路で、もう1本が水素ガスの通路だ。ローディングアームシステムは、船の液化水素タンクとターミナルの貯蔵タンクそれぞれの内部に水素ガスを加圧させることで、液化水素を船から抜き取ったり、船に充填したりするシステムで、ローディングアームを2本装備することで液化水素と水素ガスといった2系統の通路を確保している。ローディングアームの口径は6インチで、真空二重断熱構造となっている。

液化水素貯蔵タンク

神戸液化水素荷役実証ターミナルには、液化水素を貯蔵しておく液化水素貯蔵タンクが1基設備されている。直径19mで球形真空二重殻構造となっている。容量は液化水素2,500㎥で、水素にすると150トンを貯蔵できる。現在ラインナップされている燃料電池自動車(FCV)を例にすると、トヨタ・ミライでは満タンで約5㎏の水素が入るので、神戸液化水素荷役実証ターミナルにはトヨタ・ミライ3万台分の水素を貯蔵できるということになる。また、すいそ ふろんてぃあの液化水素貯蔵タンクの容量が1,250㎥なので、すいそ ふろんてぃあ2隻分の液化水素を貯蔵することが可能となっている。

商用化に向けた動向

現在ハイストラが行なっているのは、オーストラリアから褐炭由来の水素を輸入して、日本で供給する実証実験である。そのため、神戸液化水素荷役実証ターミナルも実証実験を目的とした施設となる。実際、液化水素を商用で貯蔵するとなると、さらに大型の貯蔵タンクが必要となる。建設を計画している大型商用ターミナルタンクは容量5万㎥であり、このタンクでは神戸液化水素荷役実証ターミナルの貯蔵タンクの20倍もの液化水素を貯蔵する計画だ。また、商用化する際には、オーストラリアからの褐炭水素を荷揚げするための液化水素荷役ターミナルは、別の場所に建設する予定だ。

神戸液化水素荷役実証ターミナルの空撮映像(映像:HySTRA)
神戸液化水素荷役実証ターミナルにおいて、船から液化水素を抜き取ったり、船に充填したりする工程を映像化したもの(映像:HySTRA)
取材協力川崎重工業株式会社
URLhttps://www.khi.co.jp



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