カワサキ特派員

巷にあふれるカワサキネタを特派員がレポート

国立西洋美術館

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ヨシムラ

日本の美術史において、忘れてはならないコレクションが松方コレクションである。そんなコレクションがカワサキとなんの関係があるの?と思われるだろうが、じつは大アリなのだ。ということで、今回はその関係などをお伝えしよう。

美術館に足を運んでみるのもいいかも

カワサキの創始者として川崎正蔵の名前を記憶している人は、カワサキ乗りのなかにもけっこういるだろう。では川崎正蔵が1887年(明治20年)に設立したカワサキの原点といえる川崎造船所が、1896年(明治29年)に株式会社川崎造船所となったときの初代社長の名前を知っている人はどれくらいいるのだろうか? 勝手な想像だがかなり少ないに違いない。で、その初代社長こそが、今回のお題である松方コレクションを築いた松方幸次郎なのだ。ちなみに歴史に詳しい人なら、明治時代で松方というと内閣総理大臣を2度務めた松方正義を思い浮かべるに違いない。その松方正義の三男にあたるのが松方幸次郎なのだ。

松方幸次郎は、日本国内の若い画家たちに本物の西洋美術を見てもらうために、第一次世界大戦により造船であげた多大の利益を使って欧州にて大量の美術品を収集したといわれているが、結局のところその思惑は経済恐慌と第二次世界大戦によって成就することはなかった。

国内に持ち帰った分は、恐慌で経営危機におちいった川崎造船所の財務整理に当てられ、ロンドンで保管されていた分は火災で焼失してしまっている。唯一、フランスで保管されていた分が、第二次世界大戦末期にフランス政府の管理下に置かれた後、その大部分(絵画、彫刻などあわせて370点ほど)が、それらを保管し、散逸させないための美術館を用意することで寄贈返還されたのである。そして、その松方コレクションを保存公開するために建てられた美術館が、国立西洋美術館なのだ。ちなみに東京国立博物館(住:東京都台東区上野公園13‐9)が所蔵する浮世絵のコレクションも松方コレクションを中心としたもので、喜多川歌麿や東洲斎写楽の名品も含まれている。

さて、あらためてカワサキと松方コレクションの関係に目を向けると、川崎重工の前身である川崎造船所が第一次世界大戦であげた利益をもとに松方コレクションが生まれたのである。そして、そのコレクションのなかには、クロード・モネの『睡蓮』やピエール=オーギュスト・ルノアールの『アルジェリア風のパリの女たち』、フランソワ=オーギュスト=ルネ・ロダンの『考える人』や『地獄の門』(写真)といった多くの名作が含まれているのだ。これらのことから、カワサキは日本人が一級の西洋美術品に触れる機会を作ったと言っても過言ではないだろう。そして、カワサキと松方コレクションが強く結びついていることもご理解いただけたことだろう。

カワサキ発見! スポット「国立西洋美術館」

20世紀を代表する建築家の一人、ル・コルビシェが手がけた本館と、その弟子として知られる前川國男の設計した新館からなる美術館で、美術館自体を見るだけでも十分な価値はあるといえる。というのも本館は07年に国の重要文化財に指定され、さらに昨年には“ル・コルビジェの建築作品ー近代建築運動への顕著な貢献ー”の一つとして世界遺産に登録されているのだ。とはいえ今回のお題は松方コレクションで、コレクションに含まれる多くの作品は常設展示されているので、年間を通して目にすることができるのだ。バイクで行くのならば、美術館と上野駅をはさんで反対側にある上野駅前自動二輪車駐車場(原付[50㏄未満]不可)を利用すると便利だろう。

国立西洋美術館

問い合わせ国立西洋美術館
住所東京都台東区上野公園7-7
電話番号03-5777-8600
営業時間9時30分~17時30分(金曜日は常設展・企画展とも~20時、土曜日は常設展~20時、企画展は企画によって異なる)
定休日月曜日、年末年始(12月28日~1月1日)
Webサイトhttps://www.nmwa.go.jp



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