ヨシムラ
発表以来、大きな注目を浴びているZ900RS SE。1月21日(金)発売開始のZ900RS SEに、さっそく試乗してきた。カワサキバイクマガジン編集部の井田幸雄がインプレッションする。
スタンダードモデルの潜在スポーツ性能があらわになった“SE”
カワサキは近年、ZRX1200ダエグ カワサキ正規取扱店特別仕様車やNinja ZX-14Rオーリンズエディションなど、スタンダードモデルにオーリンズのリヤショックを標準装備した特別仕様車をラインナップしている。いずれの特別仕様車も、スタンダードモデルに対してスポーティな乗り味になっているのだが、Z900RS SEは、過去の特別仕様車と比べて、スタンダードモデルに対するスポーティさへの振り幅が大きいのではないだろうか。“SE”がスタンダードモデルと機能的に異なる点はサスペンションとブレーキだ。サスペンションに関しては、リヤショックをオーリンズ製に変更し、その変更に合わせてフロントフォークのセッティングを変更している。ブレーキはフロントが変更されており、ブレンボ製ブレーキキャリパー/ディスクローター/ブレーキパッドに変更しつつ、スタンダードより小径のニッシン製ラジアルポンプマスターシリンダーとメッシュホースを採用している。これらの変更により、さらにスポーティな性能に変わっていることは想像できるのだが、はたしてどのような走行性能に変化しているのか。
顕著に体感できたのはサスペンションを変更したことによるスタンダードモデルとの差だ。足まわりがハードな方向に設定されているのだ。一例として、サスペンションの初期作動に関して、スタンダードより硬い印象を受ける。一般ライダーに馴染みのあるシチュエーションでは、たとえばアスファルトの割れ目や高速道路のジョイントなど、わずかな路面の凹凸を車体が細かく拾って、その振動がダイレクトにライダーに伝わってくるのだ。といっても、サスペンションの動き自体が硬いわけではない。むしろ、よく動く。正確には、SEのサスペンションは、荷重に対して適正に動くということ。
“荷重に対して適正に動く”とはどういうことか。たとえば、緩やかなカーブなど大きな荷重がかかるシチュエーションでは、なめらかにストロークして、それでいて車体は安定している。その状態で路面の凹凸を通過しても、サスペンションがその凹凸をしっかりと吸収するのだ。しかも、凹凸を越えた手ごたえなど、路面の情報をしっかりと感じ取れる。つまり、大きな荷重がかかった状態ではスムーズにストロークし、ある程度沈んだところで踏ん張りつつ、その状態からでも凹凸を吸収できる。このように、大きな荷重がかかった場面では、非常に安定した動きを見せるのだ。一方で、あまり荷重のかからない場面では、前述した印象を受けるかもしれない。
スポーティな走行性能といっても、扱いづらい尖った走行性能に変化しているのではなく、むしろその逆。サスペンションが適正に動いて車体が安定するので、ねらった走行ラインをトレースしやすくなっているなど、車体の扱いやすさが向上している。さらにブレーキもコントローラブルな特性なので、ブレーキをかけてからカーブに進入していくまでの一連の流れがとてもスムーズ。つまり、SEはスタンダードモデルと比べて、よりスポーティでよりコントローラブルな特性となっているのだ。
スタンダードモデルよりスポーティでコントローラブルと表現したが、SEの方がワンランク上という意味とは少し違う。キャラクターが差別化されているといったほうがいい。では、どのように差別化されているのか。実は今回の試乗で、スタンダードモデルであるZ900RSのバランスのよさを改めて実感したのである。といっても、SEのバランスが悪いというわけではない。レトロな雰囲気のフォルムと幅広なアップハンドルを採用したZ900RSは、ゼファーシリーズやZRX1200ダエグといった従来のネイキッドとは一線を画したスポーティな走行性能でありながら、どこかおおらかな乗り味が残されていた。つまり、見た目とまたがった感触、そして走行性能の印象が一致しているのである。一方でSEは、フォルムとライディングポジションから想像する乗り味より、一回りも二回りもスポーティな走行性能となっているのだ。つまり、SEは見た目以上に走行性能に特化しているということ。そういう意味で、スタンダードとSEはうまく差別化できていると思う。
SEのインプレッション記事では、スポーティさを強調した。ただ、スタンダードモデルも現代のネイキッドにおいて高水準のレベルにある。そしてなにより、SEの走行性能が実現できたことは、すなわち、スタンダードモデルには高いスポーツ性能が潜在的に備わっているということになるのだ。
2022年モデル Z900RS SEの主なスペック
| 車名(通称名) | Z900RS SE | |
|---|---|---|
| マーケットコード | ZR900NNFNN | |
| 型式 | 2BL-ZR900C | |
| 全長x全幅x全高 | 2,100mm×865mm×1,150mm | |
| 軸間距離 | 1,470mm | |
| 最低地上高 | 140mm | |
| シート高 | 810mm | |
| キャスター/トレール | 25.0°/98mm | |
| エンジン種類/弁方式 | 水冷4ストローク並列4気筒 / DOHC 4バルブ | |
| 総排気量 | 948cm³ | |
| 内径x行程/圧縮比 | 73.4mm×56.0mm/10.8:1 | |
| 最高出力 | 82kW(111PS)/8,500rpm | |
| 最大トルク | 98N・m(10.0kgf・m)/6,500rpm | |
| 始動方式 | セルフスターター | |
| 点火方式 | バッテリ&コイル(トランジスタ点火) | |
| 潤滑方式 | ウェットサンプ | |
| エンジンオイル容量 | 4.2L | |
| 燃料供給方式 | フューエルインジェクション | |
| トランスミッション形式 | 常噛6段リターン | |
| クラッチ形式 | 湿式多板 | |
| ギヤ・レシオ | 1速 | 2.916(35/12) |
| 2速 | 2.058(35/17) | |
| 3速 | 1.650(33/20) | |
| 4速 | 1.409(31/22) | |
| 5速 | 1.222(33/27) | |
| 6速 | 0.966(29/30) | |
| 一次減速比 / 二次減速比 | 1.627(83/51)/2.800(42/15) | |
| フレーム形式 | ダイヤモンド | |
| 懸架方式 | 前 | テレスコピック(インナーチューブ径 41mm) |
| 後 | スイングアーム(ホリゾンタルバックリンク) | |
| ホイールトラベル | 前 | 120mm |
| 後 | 140mm | |
| タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C (58W) |
| 後 | 180/55ZR17M/C (73W) | |
| ホイールサイズ | 前 | 17M/C×MT3.50 |
| 後 | 17M/C×MT5.50 | |
| ブレーキ形式 | 前 | デュアルディスク300mm(外径) |
| 後 | シングルディスク250mm(外径) | |
| ステアリングアングル(左/右) | 35°/ 35° | |
| 車両重量 | 215kg | |
| 燃料タンク容量 | 17L | |
| 乗車定員 | 2名 | |
| 燃料消費率(km/L) | 28.5km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時) | |
| 20.0km/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時) | ||
| 最小回転半径 | 2.9m | |
| カラー | メタリックディアブロブラック(BK3) | |
| メーカー希望小売価格 | 160万6,000円 | |
井田 幸雄
カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏





















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