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ヨシムラ

400ならではの軽快フィールを演出

2014年モデル Ninja 400インプレッション

高速クルージングで前傾姿勢を取っても、燃料タンク上面が上体を支えてくれる。ウィンドスクリーンは3段階調整式で、風防効果を高めることもできる

ニンジャ400で走り出せば、これが紛れもなくニンジャ650の弟分であることがわかる。180度クランクのパラレルツインの鼓動感やトルク感、スリムな車格や軽快なハンドリングなどが、ニンジャ650から受け継いだものであるからだ。

ただその一方で、そう思い込もうと、自分自身に暗示をかけ続けていた節もある。正直なところ、身体に残るニンジャ650のイメージを手繰り寄せようとしても、頭の中で膨らみかけたイメージが泡のように消え、どうしてもニンジャ650とは別モノであるかのような気にさせられてしまうのである。

つまり、ニンジャ650とニンジャ400は、似て非なる乗り物ということだ。それは、トータルフィーリングの違いとでも言えばいいだろうか。

ニンジャ650には、軽快感の中に、排気量にふさわしい重厚感がある。実際、かつて650ツインといえば、英国車やW1がそうであったように、立派な重量車である。でも、400に重厚感を求めても、ネガティブな重さにしかならないわけで、その代わり、ニンジャ400には400らしい軽快感が織り込まれている。

両車はディメンションも車重も同じなのに、どちらにもバランス形といって差し支えないトータルフィーリングを感じる。排気量が小さくなったエンジンと、サスペンションが見直された車体が、見事にマッチングしているのだ。

ニンジャ400のエンジンは、低回転域のトルクが充実し、扱いやすくなっているだけでなく、上質にもなっている。か細さも、180度クランクの不等間隔爆発による回転のムラっけなどの神経質さもなく、スロットルワークにスムーズなレスポンス。気持ちよくトコトコと走ることができ、粘りもあってビギナーを不安にさせる要素はない。

もちろん、このことは街中でのスポーティな走りにもにも貢献しており、とくにその点で従来型から大きく改善されている。

Ninja 400 パワーカーブ比較図

5,000rpmも回していれば、街中でならこと足りる。高速道路での速度域ではもう少し回すことになるが、4,500〜6,500rpmといった中回転域も、また心地いい。

厳密にテストライダーとして見るなら、その領域には少々トルクの谷がある。ところが、実用上それが問題となることはなく、むしろもっと回して楽しもうという気にさせられる。不等間隔の鼓動が心地いいだけでなく、回転上昇とともに、スムーズさと力強さが増してくるので、ワクワクしてくる。トルクの谷を逆手に取って、楽しさを演出しているかのようだ。

そして、7,000rpmが近付くと、そこから11,000rpmのレッドゾーン開始回転数までは、もう魅惑的な高回転域だ。回すのが楽しく、日本の道で使い切れるパワーを発揮してくれる。国内用にパワーを去勢したとか、逆にニンジャ400用にパワーを搾り出しているといった印象は一切なく、ロードスポーツとして自然な特性が実現されている。

つまり、400として理想的な特性というわけで、当然、650とは別モノである。ボアもストロークもダウンされ、理想的なボア/ストローク比となっており、ニンジャ400は、もはやニンジャ650の単なるスケールダウン版ではない。ただ、それは、いい意味では軽快であっても、悪い意味では力量不足になりかねない。

すると、スロットルのオンとオフによる反応も軽くなり、いい意味で扱いやすくなったとしても、悪い意味では同じように加減速が生じず、姿勢変化も生まれにくくなる。スロットルワークで操ることができにくくなるわけだ。

そこで、このニンジャ400の前後サスペンションには、専用のセッティングがほどこされている。ソフトで、大きくストロークさせる味付けだ。このクラスのネイキッドモデルと比べても、ストローク感が豊かなセッティングとなっている。

そのため、路面の荒れたところを、日常域の速度で通過しても快適で、また少々飛ばしても挙動が乱れにくく、常に安心感が高い。まさに日本の道向きの設定だといっていい。でも、単にこうした狙いだけで、サスペンションをソフト方向に振っているというわけではないと思う。

実はこのおかげで、ワインディングのコーナーを軽快かつスポーティに駆け抜けていくことができる。ごく自然な姿勢変化が生じ、意識しなくても曲げるキッカケを作っていくことができるのだ。

こうした作り込みによって、ニンジャ400はエンジンの軽快な回転フィールとマッチングする軽快なハンドリングを得ており、ニンジャ650とは違った一つの完成形となっている。

ある程度路面状態がよければ、ニンジャ650のほうが接地感が強く、姿勢変化が抑えられているので、そのことを上質に感じないわけでもない。また、ニンジャ400はストローク感があっても、その動きは上級デュアルパーパスモデルほどスムーズで洗練されているわけでない。

サスペンションの基本は両車で変わらなくても、そのあたりはコストの問題もあるのだろう。とはいえ、これは気負うことなく乗れるフィーリングで、悪くない。こうしたことも含め、車両キャラとベストマッチングであることを実感させられるのである。

[和歌山’s Eye]上質感のある専用シート

ニンジャ400のシートは最高といってもいい。前モデルのニンジャ400Rよりクッションの厚みが増していて、乗り心地がよく、それでいてコシがあって、スポーツライディングでの荷重を受け止めてくれる。とかく、このクラスだと、コスト優先でシートのクオリティは後まわしにされがちだが、これはまるでフラッグシップモデルクラスのシートが装着されているかのようである。このクラスでこのシートの高品質には驚きだ。

和歌山’s Eye
問い合わせカワサキモータースジャパンお客様相談室
電話番号0120-400819 ※月〜金曜 9:00〜12:00、13:00〜17:00(祝日、当社休日を除く)
URLhttps://www.kawasaki-motors.com/mc/
和歌山 利宏

バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。




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