オフを楽しむための選択、それが230の排気量/KLX230&KLX230R

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ヨシムラ

カワサキから待望のオフロードバイクが登場した。それも公道走行用KLX230とレーサーKLX230Rという2本立てだ。水冷DOHCのKLX250に続くネクストモデルはいつ? どんな風に変わるの?と思っていたら、排気量が230cc。なんで? 走り味は?と期待がどんどん膨らんできたところでの待望の試乗となった!

見た瞬間にイケる!と直感。期待は裏切らなかった!

KLX230を前にした瞬間に私はシリンダーフィンやクランクケースサイズに目がいった。空冷OHC2バルブと232ccの排気量も想定利用者の使用実態と軽量性、整備性まで配慮したもの。日本固有の250ccという枠を外し、純粋にオフロードを楽しむ排気量のひとつが230ccという想定である。かつての他社225や230はクランクが125ccベースとなっている。物理的耐久限界として両車は奇しくも同じ223ccである。125ccベースはクランクケースが小さく、車体の軽量コンパクト化が可能だ。そのうえ、200cc以上ならパワーも楽しめる。しかし、全開連続走行の耐久性にはクランクケースは230cc専用設計が絶対不可欠となる。でも250ccでは重く大きくなる。KLX230はこの現実を見据えて生まれたのだ。

2020年モデル KLX230&KLX230R

前後に本格的なサスペンションをセットしたレーサーのKLX230R(右)をベースにKLX230(左)を開発したことで、コンパクトながら公道走行のためのライト類などがセットされてもスタイルは精悍

パワー&バランスでサラリと速いKLX

レーサーのKLX230Rが基本形として開発された。完成度を煮詰めてから公道走行用のKLX230をまとめたという。まずはKLX230Rから試乗した。車体はコンパクトだがポジション的に身長180cmの私でも窮屈感がないハンドル幅、ハンドルまでの距離、膝の曲がり角、スタンディング時の大きな動きもまさにモトクロッサーKXシリーズのそれだ。カワサキのアイコンともいうべきシュラウド、シート、サイドカバーの継ぎ目がないロングシュラウドが功を奏している。

2020年モデル KLX230Rインプレッション

乗るほどにコンパクト感が強くなっていく車体。バンキングが非常に軽快だが、前輪の切れ込みが少なく安心してコーナリングに専念できる。初級から中級ライダーにはとてもうれしい操縦性だ

KLX230Rは低回転からリニアにパワーが盛り上がり、クラッチのつながりがわかりやすく、滑りやすい急な上り斜面での再スタートもイージーだ。中速域ではスイスイ前に進むハイトラクションタイプとなっている。誰にでも扱いやすく、疲れにくく、時間経過とともにタイム的に優位になる賢いパワーキャラクターだ。かつてのKLX250の水冷DOHC4バルブの高回転型とせず、今どきめずらしいほぼスクエアなボア・ストローク67×66mmと、軽くシンプルで低中速域での充填効率を優先したOHC2バルブを採用する。全開よりもパーシャル時間が圧倒的に長いオフロードの現場を直視している。高回転域でも振動は気にならず、メカノイズも空冷と思えないほど静かで排気音も心地いい。重心位置の最適化とフレームの剛性バランスがよく、正立フロントフォークゆえに手への衝撃が少なく、速度を上げやすい。タイトコーナーの連続やガレたコースでは北米市場で体重80kg以上を想定した前後サスペンションのバネレートを下げれば、かなり速いマシンに変身すると期待が膨らむ。実はコーナリング中のステアの落ち着きにも驚いた。前輪切れ込みによる転倒例がビギナーには多いが、車体がコンパクトなのに操舵は速度域や路面状況の影響を受けず、自然な動きのリンク式リヤサスペンションと相まって高い安定性を発揮する。

2020年モデル KLX230インプレッション
2020年モデル KLX230Rインプレッション

どのギヤでもコーナー立ち上がりのトラクションフィールが実に明快なのはエンジン特性とリヤショックとの絶妙な組み合わせによるもの。半クラッチを使ったがフロントアップではアップ時のバランスが取りやすい

極低速域でもパワーが制御しやすく、45度の一般的舵角だがKLX250より75mmもショートな1360mmの軸間距離によって回転半径は小さい。さらに、300mmもあるロードクリアランスも含めて、ハードセクションでも存分に楽しめそうだ。

KLX230Rは精悍・コンパクトだがエンジンと車体の巧みなまとめ込みにより、このクラスで体験できなかった極めて上質かつタフな戦闘力を手にした。

全てが自然な動き。オフロードを遊びつくせ!

そんなレーサーのKLX230Rの血統を公道用にシフトしたKLX230のテイストも期待を裏切らなかった。エンジンパワーは同等だがさらに滑らか。バランサーの効果は絶大だ。6速は若干ロングなギアレシオで高速移動に便利な設定である。250フルサイズにはないハンデをこれでカバーしている。サスストロークは前220mm、後223mmとKLX230Rより約30mm短いため足着き性は気にならないし、場所とタイヤによってKLX230Rより積極的にダートを攻める気になる初心者も多いだろう。

2020年モデル KLX230インプレッション

扱いやすいエンジンのため公道もストレスなく移動ができる。交差点の通過ではABS装備なのでいざというときに心強い。前後サスペンションの接地感も非常に滑らか。オフロード車でも上質な走りが堪能できる

驚いたのはABSだ。ダートで何度も前後輪同時や前輪側のみフル制動にトライしたが作動ショックがなく実に秀逸な作動だ。このABSはダートでも公道でも安全性に欠かせない。ABSは作動オフにできないが、これなら一般的な走行でオフにする必要性を感じないだろう。

KLX230の主たる販売ターゲットはカンボジアやタイなどのアジアとのこと。ゆえにヘッドライトは威風堂々と見える大きさを選択するが、バルブ切れを補修しやすく、維持コストが安く、守備範囲が広い適切な色温度のハロゲン式を採用する実利的な設定となっている。明るく大サイズのウインカーも非視認性にすぐれる。KLX230はオフロード走行の初心者に最適なだけではなく、普段の足にも便利。ビッグバイクのパワーに翻弄されそうなライダーには必需のサプリメントにもなる期待のバイクだ。

2020年モデル KLX230インプレッション

公道走行できるKLX230でも安心してジャンプができ、ギャップでの走破性にも余裕。一体感を生む車体の作りとサスペンション設定はさすがというほかない。淀みなく回るエンジンの扱いやすさもさすが新設計ならでは

ライディングポジション

KLX230
2020年モデル KLX230 ライディングポジション

モトクロッサーかと思うぐらいに座っても立ってもヒザまわりがフィット。コンパクトな車体だがハンドルやステップ位置など乗車時のフィット感は上々。シート高は885mmだがスリムな車体のため足着きは良好

KLX230R
2020年モデル KLX230R ライディングポジション

リヤのステップホルダーがないため、さらに動きやすいポジションだが、シート高は925mmとKLX230より40mm高いだけにカカトが浮く。しかし、軽量な車体のためにバランスが取りやすい。ハンドルまわりの軽さも魅力だ

KLX230&KLX230Rの主なスペック

車名 KLX230 KLX230R
全長×全幅×全高 2,105×835×1,165(mm) 2,045×840×1,200(mm)
軸間距離 1,380mm 1,360mm
シート高 885mm 925mm
車両重量 134kg 115kg
エンジン 空冷4ストロークOHC 2バルブ単気筒・232cm3
ボア×ストローク 67.0×66.0(mm)
最高出力 14kW(19ps)/7,600rpm 14kW(19ps)/8,000rpm
最大トルク 19N・m(1.9kgf・m)/6,100rpm 20N・m(2.0kgf・m)/6,000rpm
燃料タンク容量 7.4ℓ 6.5ℓ
タイヤサイズ (F)2.75-21(R)4.10-18 (F)80/100-21(R)100/100-18
本体価格 45万円 47万円
問い合わせカワサキモータースジャパンお客様相談室
電話番号0120-400819 ※月〜金曜 9:00〜12:00、13:00〜17:00(祝日、当社休日を除く)
URLhttps://www.kawasaki-motors.com/mc/
柏 秀樹

自身が主催するライディングスクール、KRSを主な活動としつつ、雑誌やDVDなどのメディアで、ライディングテクニック講座や車両インプレッションを行なっている。KRSはオンロードからオフロードまで、週2〜3回のペースで開催されている。
https://kashiwars.com




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