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ヨシムラ

スポーティ化によって旅力はどう変わった?

ワインディングを走っていると、ライディングポジションの差がさらなる違いを生んでいることに気付いた。スタンダードが高めのハンドルを操作しコーナーへ向かって車体から先にねじ込むように倒していくのに対し、Z900RSカフェはハンドルを上から押さえてフロントに荷重をかけつつライダーから先にコーナーに飛び込んでいくような感覚がある。つまりZ900RSカフェはライダーが積極的にコーナーリングを行なう、よりスポーツ性を持たせた特性になっている印象なのだ。

2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) ワインディングでの試乗インプレッション

スタンダードモデルよりスポーティな操縦性能は、ワインディングでの走りを楽しませてくれる。リッターネイキッドを左右にバンクさせながら駆け抜ける充実感には大きな魅力がある

そして、それにはシート高も影響している。ライダーの着座位置が高いということはバイクの重心も高くなるということ。高い位置でライダーが体重移動すると車体もよりダイナミックに動く。ゆえに大柄なリッターネイキッドを体全体で操る豪快なフィーリングが得やすいのだろうと考えられる。

低回転域から太いトルクを発生させる直列4気筒エンジンの持ち味を活かしながら大小のコーナーをスムーズかつ豪快に駆け抜ける。スーパースポーツのように神経をとがらせて走行しなくてもスポーツ走行の醍醐味が味わえるキャラクターは、スポーツライディング好きにとっても好ましいものだった。

カフェレーサールックとツーリングの相性は良好

2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) 高速道路での試乗インプレッション

高速道路での走行はビキニカウルの整流効果と軽い前傾姿勢によってスタンダードモデルよりも快適。サスペンションもよく動く設定なので車体姿勢も安定していた

高速道路に入るとビキニカウルが効果を発揮する。もちろんフルカウルほどの防風性能はないが、それでもカウルがないよりずっといい。また軽い前傾ポジションは前からの風に対抗するのにも向いている。それぞれわずかな差ではあるが、長時間の高速道路走行では疲労度が大きく違ってくる。そういったことからもZ900RSカフェの方が長距離ツーリングしやすいと言えよう。

1000kmを順調に走り抜け編集部に戻ったとき、疲れ方がスタンダードモデルとは異なることを感じた。スタンダードでは低めのシートとステップ位置との距離が近いことから、僕の体型だと足の付け根が痛くなってしまった。ところが着座位置が20mm高いZ900RSカフェではそれが起きなかった。その代わりに断面形状が台形になったシートの角が太ももの内側に当たってしまい、やや痛みを感じた。うまくいかないものだなぁと思ったが、総合すると僕の場合、長距離ではZ900RSカフェの方が疲れにくいと感じたのは間違いない。

まとめ

走行前はビキニカウルの有無による違いが大きいだろうと考えていたが、実際に走ってみるとハンドルとシートによるポジションの違いのほうが走行フィーリングや疲労度に大きく影響したという意外な結果になった。何より今回のロングランで2台のキャラクターが明確に異なることを実感することができたことが大きな収穫だ。

以上のことから考えると、Z900RSはハンドルやシート、ステップなどを変えてポジションを調節することで、スポーツ走行向けやツーリング向けなどの特性を持たせやすいバイクだということになる。双方のパーツの組み合わせ以外にも、オプションで発売されているハイシートや社外製のステップなどを使うことで、その調整幅は大きく広がっていく。Z900RSはカスタムの効果がリアルに体感できるバイクであるとも言えるのだ。

取りまわし
2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) 取り回し

ハンドルは高すぎない高さなので力を入れやすく、車体もリッターバイクとしては軽い部類。マスの集中化がされていることもあって取りまわしはやりやすい。ハンドル切れ角も大きいので駐車場からの出し入れでも不自由することはなかった

引き起こし
2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) 引き起こし

トレリスフレームや水冷直列4気筒エンジンが軽量・コンパクトに仕上げられているうえに、マフラーやリヤショックなどマスの集中化も追求されているため、車体を支えるのは容易で引き起こしもラクな部類。シート後方など手をかける部分も多い

シート快適性
2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) シート快適性

スタンダードモデルと大きく違う部分のひとつ。中央付近が高くなっているので足着きはわずかに落ちるが、コーナーリング時の体重移動はやりやすくなっている。クッション性は高いが、人によっては角が太ももの後ろにあたることも

乗り降り
2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) 乗り降り

シートからテールカウルまでフラットに続き、テールアップもしていないのでリッターバイクということを意識しなくても自然にまたがることができる。タンデムシート部がやや高くなっているが、タンデムライダーもとくに気にすることなく乗れるはずだ

排気音
2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) 排気音

ショートタイプのデザインや材質・構造にこだわったマフラーからは、サウンドチューニングされた重厚なエキゾーストノートが響く。直列4気筒らしさに満ちた迫力のあるサウンドは、ライダーに走る充実感を味わわせてくれる

燃費
2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) 燃費

満タンから228.5km走ったところで燃料計が点滅し始め332.5kmで完全にストップ。約104kmほど走る計算になるので、点滅してもあせる必要はない。過去にスタンダードのZ900RSでも1,000kmを走っているが、そのときと比べると高速道路での燃費がZ900RSカフェのほうが9km/ℓもいい結果になった

高速道路 26.34km/ℓ
一般道路 19.55km/ℓ
ガソリン満タン航続距離 332.5km
たそがれ度
2019年モデル Z900RS CAFE(ZR900EKF) たそがれ度

往年の名車をベースにカスタムしたようなカフェレーサースタイルは、長く見ていても飽きがこない。シルエットはもちろん、細部のディテールまで作り込まれているので所有感も十分。手元にあればバイクライフが充実したものになること間違いない

Z900RSカフェ

2019年モデル Z900RSCAFE(ZR900EKF) 試乗インプレッション

新たな歴史を作りつつある新生Zシリーズに追加されたカフェレーサーモデル。カワサキの歴史が脈々と息づいているスタイルと、現代レベルの走行性能とが見事に融合している。そんな独特の存在感に惹かれて新たなユーザーが増えているのだ

Z900RSカフェの主なスペック

年式 2019年モデル
全長×全幅×全高 2,100×845×1,190(mm)
軸間距離 1,470mm
シート高 820mm
車両重量 217kg
エンジン型式・排気量 水冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列4気筒・948cm3
ボア×ストローク 73.4×56.0(mm)
最高出力 82kW(111ps)/8,500rpm
最大トルク 98N・m(10.0kgf・m)/6,500rpm
燃料タンク容量 17ℓ
タイヤサイズ (F)120/70-17・(R)180/55-17
価格 135万3,000円(税10%込)

[Z900RS CAFE]Z900RSベースのカフェレーサーモデルが2018年3月1日より国内販売をスタート

問い合わせカワサキモータースジャパンお客様相談室
電話番号0120-400819 ※月〜金曜 9:00〜12:00、13:00〜17:00(祝日、当社休日を除く)
URLhttps://www.kawasaki-motors.com/mc/
横田 和彦

1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。




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