ヨシムラ
国内モデルとしておなじみの“ナナハンFX”は、角の時代を象徴するモデルとして国内市場をわかせた身近な一台であった。その存在感は多くのカワサキ乗りの間に現在でも息づいている。
国内市場を沸かせた四角いヒットメーカー・ナナハンFX!
車名こそ違うが、その角張ったスタイリングを見れば一目瞭然、Z1000MkⅡと寸分たがわぬ兄弟モデルであることがわかる、Z750FX。MkⅡと同じ1979年にデビューし、国内向けモデルとして空冷Zのセカンドジェネレーションをアピールしたことを懐かしく思い出す読者の方もいらっしゃるだろう。試乗車はオーナー車であったが、走行2万kmを超えているというのにしっかりとした手入れがなされたもので、まずまずのコンディションだった。
Z750FXの最大の特徴は、Z1とZ2の関係と同じように、MkⅡの単なるボアダウン版ではなく、ボア×ストローク比を750向けに最適化させている点にある。これはよく考えればZ2の血統をひくエンジンであるから当然といえば当然なのだが、その特性がよく表れている吹け上がりをFXは発揮した。
もちろんMkⅡと比べてしまうと非力な面はある。たとえば、2,000回転から3,500回転あたりでは、MkⅡがそこから車体をグイグイとトルクで引っ張り出すのに対し、FXはアクセル開度だけが先行してしまって、加速が後ろから追いついてくるような印象。要は低速域のトルクが薄く感じられたということだ。しかし、高回転域での回り方はFXのほうが俊敏で気持ちがよく、これがよかった。MkⅡの93psに対してFXは70psしかないが、排気量の違いによる味つけで生まれたエンジンキャラクターの違いは、絶対トルクではかなわないけれど、馬力差を埋める場面もあった。