SENSATIONAL SYSTEM OF K

バイク業界に影響を与えたカワサキ。その中で、特にカワサキが口火を切ったシステムを紹介

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ヨシムラ

80年代に入り、技術は目まぐるしく進歩し、バイクにもさまざまな新技術が投入されていった。とくにレースシーンからフィードバックされたものが多く、アンチ・ダイブシステムもその一つである

アンチ・ダイブシステム(ADS)

現在では見かけることがなくなってしまったメカニズムにアンチ・ノーズ・ダイブがある。80年代中ごろにバイクへの興味が高かった人なら「懐かしい!」と思う人も多いだろう。

簡単にその機構を説明すると、フロントフォークのボトムケース下部に取り付けられた小型のプランジャー室に、ブレーキキャリパーへと続くオイルラインの途中から分かれた油圧ラインが接続される。普段は、デバイスなしのサスペンションと同じ動きをするのだが、ハードブレーキング時には、ブレーキホースからの油圧によりプランジャー室内のプランジャーが押し出される。押されたプランジャーはフロントフォーク内のオイル通路を遮断し、インナーチューブが深くボトムしないような圧力を維持するのだ。これによりフロントフォークがノーズダイブしなくなり、ライダーは安定した走行を手に入れることができるというものだった。

ADSイラスト

GPZ750/900Rのカタログなどに採用された内部構造を表すイラスト。フォーク内のオイルがどのように流れるかがよくわかる

もともと、当時のレースシーンで、旋回性を上げるためにフロントホイールのサイズを16インチへと小径化したことに端を発するシステムである。フロントタイヤが小さくなれば、当然荷重がフロント寄りになってしまう。そうするとハードなブレーキング時のノーズダイブが、タイヤサイズが大きいマシンに比べて大きく感じられる。それを解消するために、開発されたシステムなのである。KR500やKR1000などのレーサーのフロントフォークを見ると、それらしきシステムが装着されていることがわかる。

また他のメーカーも、トルク・リアクティブ・アンチダイブ・コントロール(TRAC/ホンダ)のように名称は異なるものの、当時こぞってアンチダイブ機構を採用していた。カワサキもGPZ900Rを皮切りに、GPZ1000RX、GPZ400/600Rといったモデルに採用し、さらにGPXシリーズでは、ブレーキ液圧応答式から電気応答式のエレクトリック・サスペンション・コントロール・システム(ESCS)へと進化させたのだった。しかし、サスペンション自体の進化もあり、GPXを最後にアンチダイブ機構自体が採用されなくなってしまう。まさに時代の流れに翻弄されたシステムと言えるだろう。

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83年の英語で書かれたプレスキットで最新メカニズムの解説ページに描かれたイラスト

GPZ750R カタログ

GPZ750Rのカタログには、ユニトラックサスペンションと並び、導入した最新メカニズムとして大々的にアピールされている

1983 GPz750
1983 GPz750

アンチ・ダイブシステムが最初に採用されたGPzシリーズの1台GPz750。外観形状自体はGPZ900Rのものとほぼ変わらない

1984 GPZ900R(A1)
1984 GPZ900R A1

オートマチック・バリアブル・ダンピング・システム(AVDS)が追加採用された最初のモデルがGPZ900Rである

1990 GPZ900R(A7)
1990 GPZ900R A7

ホイールサイズをはじめ、時代に合わせて大幅なリファインが行なわれたGPZ900RのA7モデル。ここでADSもお役目ご免となるのである

KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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