ヨシムラ
常にチャレンジするマインドを忘れないカワサキが、ZZR1100(D)の開発時からあたためていたモノコックフレーム。その特異な形状が99年、全貌を明らかにした
カワサキはロードレース世界選手権の最高峰「GP500クラス」に1980年から3年ほど参戦した。そのとき走らせていたマシンがKR500。アルミモノコックフレームに、4気筒タンデムツインエンジンを採用したユニークなモデルだ。カワサキは経営状態などの問題から、ロードレース活動から撤退。当然のことながら、完成の域に達することのなかったKR500のテクノロジーは市販車にフィードバックされることはなかった。その後、84年にGPZ900Rが登場し、カワサキフラッグシップモデルは水冷の時代を迎える。908ccだった排気量も、他社との競争により拡大され、89年に発表されたZZR1100(C)では、1052ccに達した。当然のことながら、パワーも上がる。パワーが増せば、それを支えるシャーシも頑強なものが必要となる。実際ZZRのフレームは、前身モデルであるZX-10に比べてゴツイものへと進化した。
1982 KR500 レーサー
バイクを走らせるうえで扱いやすさを考えれば、コンパクトなボディは必須条件の一つだ。そこでカワサキが再び着目したのがモノコックだった。93年、ZZRのモデルチェンジに際し、いろいろと試されたが、キャブレターやエアクリーナーのメンテナンス性など、当時すべてをクリアできる技術力がなかったためツインスパーフレームのままとなった。その後、ZX-9Rのパーツを使ってテストしたところ、評価がよかったことからZX-12Rの開発に再び、モノコックが試されるのだ。そしてフューエルインジェクションをはじめさまざまな技術の進歩により、問題点を解決した市販車初のモノコックフレームを採用した12Rが、99年9月のパリショーで姿を現したのである。
ZX-12R(上)とZZR1100(D)の比較
12R以降一時は姿を消すも、ZZR1400、ZX-14Rといった歴代のフラッグシップモデルに採用され、熟成を重ねたカワサキならではのフレーム形状といっても過言ではないだろう。
KAZU 中西
1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
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