現役二輪デザイナーがデザイナーを目指す学生に直接指導
デザイン系大学に通う学生にとって、非常に貴重な講座が開催された。この講座の最大の特徴は豪華講師陣だ。二輪デザイン公開講座と称したこの講座は、デザインを専攻する1~2年生の大学生に、二輪デザインの楽しさや知識・技術を講義するという企画で、なんと国内二輪メーカー各社のデザイナーが講師を務めているのだ。これは、うらやましい! しかも学生より講師を含めたスタッフの方が多く、マンツーマン以上のきめ細かな講座だった。
会場は新潟県にある長岡造形大学で、主催したのは自動車技術会デザイン部門委員会だ。開催日は8月24日(木)・25日(金)の2日間で、24名の大学生が参加した。実技が中心の講座で、フィジカルスケッチ、デジタルスケッチ、カラーリング、クレイモデリングの4カリキュラムが2日間かけて行なわれた。フィジカルスケッチをスズキ、デジタルスケッチをヤマハ、カラーリングをカワサキ、クレイモデリングをホンダのデザイナーが担当し、学生は4グループに分かれ、それぞれの実技を2時間ずつ受講するという形式だ。実技に使うツールは、各カリキュラムを担当するメーカーが用意しており、開発で実際に使用しているものがほとんどだった。
受講生は大学1~2年生ということで、この日用意されたカリキュラムを初めて体験する学生もいたが、現役デザイナーがお手本を見せつつ、その後に実際体験してもらうことで、皆スムーズに取り組んでいた。参加した学生に話を聞けば、クレイをもう少し時間をかけて学びたかったという意見や、バイクになじみのない学生からは、機能系パーツが外部に露出している造形が興味深いという感想も挙がっていた。
この二輪デザイン公開講座は、今回で11回目の開催であり、過去に受講して、大学卒業後は二輪メーカーに就職し、現在二輪デザインに携わっているOBもいる。そのOBによる座談会も行なわれ、就職する前後の心境の違いや、二輪デザイン部署の雰囲気や環境など、入社間もないデザイナーのリアルなエピソードが披露された。
デザインの実習中、ふと横を見れば現役デザイナーがいる。疑問に思ったことに対して、その場で現役デザイナーが対応してくれる。普段の実習では、あまり体験できないシチューションだろう。こう言っては何だが、我々プレス関係者からしても、2日間二輪開発者と密接にすごす機会はほとんどなく、非常に貴重な取材であった。デザインを専攻する学生ならなおさらのことだろう。デザイナーを目指す学生にとって非常に貴重な場を、これからもぜひ提供し続けてほしい。
実習は、長岡造形大学の実習室で行なわれた。
学生は4グループに分かれ、それぞれ赤、青、水色、緑の二輪デザイン公開講座オリジナルTシャツを着用。スタッフは黒のTシャツを着用する。
フィジカルスケッチで使用するツール。
フィジカルスケッチは実車、サンプルスケッチ、モニターを参考資料としてスケッチする。
マーカーや色鉛筆を使ってスケッチする。
フィジカルスケッチ講座終了後に青Tシャツチームの集合写真を撮影。
デジタルスケッチは、二輪デザイナーがスケッチしながら、ツールのペンタブレットの操作方法を教えていく。
デジタルスケッチではペンタブレットを使用する。ソフトはクリップスタジオペイントプロ。
学生がデジタルスケッチした作品。
カラーリングの実習では、クジ引き方式でお題を選んで、お題に沿ったカラーリングをデザインする。
カラーリングの実習は2人1組で実施する。
カッティングシートを実車にあてがって、カラーリングをイメージする。
最初にマーカーでカラーリングの候補を決めて、その後にカッティングシートから実際のカラーリングを選ぶ。
ロゴなどが決まったら、カッティングプロッターを使ってカッティングシートをカットする。
カッティングプロッターの後に、カッティングシートを切り離す。
場所や角度を慎重に決めつつ、ロゴなどを貼っていく。
カラーリングの実習の最後に、それぞれがデザインしたカラーリングのプレゼンテーションを行なう。
カラーリングの実習を終了した赤Tシャツチーム。
クレイモデリングで使用するクレイ。この状態から削っていく。
クレイモデリングで使用するツール。
クレイモデリングのお手本。直方体のクレイを写真のように二次曲面に削る。
Rゲージを使用して上面のアールを形成する。
クレイを削る学生たち。
二輪デザイナーの講師が、きめ細かに指導する。
クレイモデルは、最後にダイノックを貼って完成となる。
クレイモデリングの実習を終了した緑Tシャツチーム。
1日目の最初の講座として、二輪デザインの魅力と、二輪デザイン開発の今について、座学が行なわれた。
座学で質問する学生。
二輪デザイン公開講座OBによる座談会。
二輪メーカーとの取引業者が、それぞれの取り組みをパネルや映像で紹介したり、製品を展示したりしていた。
二輪メーカーとの取引業者が展示するサンプル品を興味津々に見る学生。
会場には4メーカーが車両を展示。注目があったモデルはニンジャH2Rで、斬新な造形に学生たちは驚いていた。
二輪デザイン公開講座の最後、1人1人に終了証が授与された。
サンプルとして展示されていたスケッチを学生にプレゼント。