人とバイクの交差点

カワサキ乗りの個性的なバイクライフを紹介していくカワサキバイクマガジン連載企画。それぞれの人間模様やバイクとの関わりかたに迫る

東北に広がるバイク乗りの輪はここからスタートした ─ C・S・Dガレージ

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ヨシムラ

北秋田市の中心、鷹ノ巣駅の真ん前にあるC・S・Dガレージ。一見なんの店かわからない。奥にはバーもある。ここに東北バイクネットワークの発信基地があった。

メンバー150人の拠点がここのガレージにある

秋田県は北秋田市鷹ノ巣駅。駅前には立派なショッピングアーケードがあるが、郊外型大型店に押され、シャッターの閉まった店が多い。どこの地方都市でも抱える問題ではある。そんな駅前で夜になるとにぎやかな一角がある。

そこは東北各地にメンバーを持つバイククラブ、C・S・Dグループの拠点C・S・Dガレージだ。ドアにあるバイク関係のステッカーを見なければ何屋なのかわからない。バイクショップのようでも、用品屋のようでもあり、オープンしている時もあれば、クローズしている時もある。名目としては“バイク保管/個人売買仲介/ライトメンテナンス&カスタム/カスタムペイント/グッズ販売”をうたっているが、要するにクラブハウスである。

代表はC・S・Dグループの会長・三澤直生さん。彼を中心にこの場所でバイクをメンテナンスしたり、バイク談義で盛り上がったり、飲み会もする。このガレージの奥には酒場Asaというバーがあり、こちらは不定期ではなく水曜日から土曜日の22時から翌3時まで営業している。

みんな仕事を持っており、三澤さんはもちろん、バーで働いている中嶋香奈さんも同じ。仕事とは別にこのスペースを持つようになったキッカケは、バイク乗り同士のネットワーク作りだったという。

「こんな小さな町でも見たことないライダーがバイクで通ったりするんですよ。ここでバイクに乗っているのなんて、みんな知っているような気がしても、そうでもなかったりするんですよね」

それなら、そういうバイク乗りとも話をする機会を作ろうじゃないか、情報やいろいろなことを共有しようじゃないかと、始まったのが、このスペースであり、酒場Asaであり、現在年2回開催している東北カラーズミーティングへとつながっていく。

ネットワークも県内から県外へ。そうして現在C・S・Dグループに所属している人数は約150名。個人だけではなく、お店や温泉旅館、ライダーハウスなどバイク乗りにやさしい施設とは相互協力しあうことでもっと楽しくなろう、と現在協力施設も15軒を越える。

東北全土にこれだけのつながりができたのは三澤さんの世話好きな性格も大きいと思うが、それだけではなく楽しくバイクに乗ろうということ以外、とくに大きな決まりはない。決まっていることといえばこのスペースで行なわれる2ヶ月に1回の飲み会ぐらいで、近くても遠くても、都合のつく人の集まり。バーも日・月・火が定休日というあたり、営利目的ではないことがわかる。

このスペースを作ったのは2011年のことで、次の年にこの場所を借り、現在に至る。C・S・Dグループを結成したのもここにガレージを移した2012年からで、最初は5人からスタートした。バイクのクラブハウスというと郊外をイメージしてしまうが、ここは駅の真ん前。集まりづらいような気がするが、意外にもそうではない。市の中心ということはどこから来ても中心だし、バイクを置いて帰っても、すぐ近くに電車やバスが通っている。やはり駅前は便利なのである。バイクを預かるスペースもこのガレージに隣接する空き店舗のなかなので安心。メンテナンス途中でもなんとかなるし、飲んだら乗らない、を実践できる場所でもある。

バイク乗りが集まる場所でカフェではなくバーにした、というところも、こんな立地によるところが大きい。酒場Asaは表側のガレージのオイルくさい雰囲気とは一転し、落ち着いた雰囲気。酒のメニューもさまざまに取りそろえてあるし、店内も割と広く、ミニイベントもたまに開催している。開店時間が遅いこともあり、ガレージで騒いだら、夜はゆっくりグラスを傾ける。といった絵に描いたようなことができるスペースでもある。

C・S・Dグループは人数が多いといってもフリーダムな雰囲気のクラブなので、自然にいろいろな集まりもできる。最近では女性だけの集まりやミニバイクレースに参戦するグループ、秋田市内にあるカフェに集うグループなどさまざま。そしてここで相互に情報を交換し合う。秋田で、東北で、聞きたいことがあればここを訪ねればいい。ここでわからないことでも、わかるところに聞いてくれる。そんなネットワークがここにはある。

三澤さんが目指すバイク乗りのコミュニケーション作り。それはこの場所を通して、確実に前進している。




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