1991 Balius(ZR250A) 試乗インプレッション

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ヨシムラ

四半世紀以上前、カワサキが放ったゼファーの人気に端を発し、一気にネイキッドブームが沸き起こった。クォーターネイキッドも多く登場したが、それらのなかでもバリオスは、カワサキらしい熱さを強く放っていた。

ザッパーたるを地でいく、元祖バリオスのキャラとは?

バリオスが初登場したのは1991年のことだが、初試乗した時の鮮烈さは、かなり前のことなのに今も心に強く残っている。当時はネイキッドブームで、各社からさまざまなモデルが登場した。

バリオスは、レーサーレプリカであるZXR250のエンジンを搭載するネイキッドだ。1990年代のネイキッドの主流だった2本ショックといった伝統的なスタイルではなく、フレームをワイドループとし、リヤショックをリンク式のモノショックとするなど、雰囲気よりも走りを重視した構成であった。

エンジンは低中速型にアレンジされるものの、1991年当時は最高出力の自主規制値が45psだったこともあって、動力性能的にもパンチがあった。ネイキッドブームの先駆者である1989年登場のゼファーとは、キャラクターが対照的であったのだ。

ともかく、鮮烈だったのは、そのスポーツハンドリングであった。道なりに曲がっていくのではなく、舵角を入れてから寝かし込む。寝かし込んだときスロットルは開かれ、一気にダッシュしていく。そんなジムカーナ風に遊べる走りの基本が盛り込まれていた。

そんなバリオスのキーワードは、マインドトリップなるものであった。はっきり言って、そんな心の旅なんて言葉は、似つかわしくないと思った。コイツは、ある意味スパルタンで、ザッパーそのもののイメージを受けたのだった。

そして今回、永い時を経て対面したバリオス。はっきり言って現在の視点では、当時の印象とは違った面もある。舵角が入るのはいいが、それはステアリング系の慣性マスによる内向性が強いと感じさせる。それにステアリングには粘り感もある。それでも、タイミングを合わせて、この特性を活かせば、ザッパーらしい当時の印象が蘇る。

1万9000rpmまで回るエンジンは、決してピーキーではない。中回転域がトルクフルで、全域がトルクレンジと思えるほどワイドな特性だ。エンジンそのものには、現在の単気筒や2気筒の250よりも、はるかに存在感がある。車格感としても、いい意味での存在感を放っている。

今となっては、古きよき時代を忍ばせるが、決して旧車ではない。現在においても、等身大で付き合えるカワサキスポーツなのである。

1991 Balius(ZR250A)

現在にも斬新さを漂わせるバリオス。φ38mm径のワイドループのタンクレールを持つフレームが、力強く暴れん坊的なキャラクターを物語っている

1991 Balius(ZR250A) 前後

エンジンが4気筒であっても、スリムにまとめられ、前後からのフォルムは端正である。挑戦的なメーターまわり、跳ね上がったテールまわりなども、カワサキ車らしいスタイリングを思わせる

主なスペック

型式 ZR250A
全長×全幅×全高 2,005×730×1,055(mm)
軸間距離 1,380mm
シート高 745mm
乾燥重量 141kg
エンジン 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列4気筒・249cm3
ボア×ストローク 49.0×33.1(mm)
最高出力 45ps/15,000rpm
最大トルク 2.6kgf・m/11,500rpm
燃料タンク容量 15ℓ
タイヤサイズ (F)110/70-17 (R)140/70-17
価格 49万9,000円(1991年発売時)
和歌山 利宏

バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。




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