SENSATIONAL SYSTEM OF K

バイク業界に影響を与えたカワサキ。その中で、特にカワサキが口火を切ったシステムを紹介

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ヨシムラ

ときの流れに合わせて、さまざまな新技術が導入されてきたバイク。その中で、特にカワサキが口火を切ったシステムをここでは紹介しよう。第1回はラムエアシステムだ

1990 ZZR1100

ラムエアと聞いて多くのカワサキ乗りが最初に思い浮かべるのは、ZZR1100をはじめ、ZXシリーズのフロントアッパーカウルにある開口部だろう。その形状からある程度空気を利用したシステムであることは察しがつくが、いったいラムエアとはどんなシステムなのだろうか? 簡単に説明すれば、より密度の高い新鮮な空気を取り入れる技術である。ポイントは走行風を直接エアクリーナーボックスへ導くという点。これにより通常の吸気方法に比べ2倍の圧力で空気を送り込むことが可能となり、車速が上がるにつれて、ターボと同じような加給効果を得られるのだ。カワサキは最初、レーサーにこのシステムを採用した。当時を知る92年全日本TT-F1チャンピオンの塚本氏は「付いた状態で乗ってもわからんかったが、外すと効果があったことがわかった」とコメントする。

まさに高回転型のレーサーやレーサーレプリカには最良のシステムと言える。が、スーパースポーツ系のマシンに採用するには、少々過激過ぎる。そこでカワサキはエアクリーナーボックスへの誘導通路の他に、キャブレターにもラム圧をかけ、過渡特性を安定させるツインラムエアシステムを開発したのだ。実際にはZX-12Rの発売時、一部に配布されたブックレットによると、最大で12ps変わると書かれていた。

ZZR1100 ラムエアシステム

フロントカウル、ライト下に位置する吸気口から取り入れられたエアは、ダクトを介してエアクリーナーボックスへと流れ込む ※イラストはZZR1100(D)

そして、順次市販車にも導入されてきたわけだが、ここで問題、最初に採用したモデルは何? 露出が多いためにZZR1100と思われがちだが、実は89年に発売されたZXR250なのだ。吸気口がサイドカバー下方にあるためわかりづらいが、カタログにも「走行中に空気をダイレクトにエアクリーナーへ導入し吸気効率を高めるカワサキ・ラムエアシステム(K-RAS)など…」とハッキリ記されている。フラッグシップモデルで、最初に実用化されたのはZZR1100だったが、さかのぼること4年、GPZ1000RXのころから採用に向けた検討は行なわれていたそうだ。最近はフューエルインジェクションの採用で混合気のコントロールも自由にできるようになったので、より多くのラム圧をかけられるようダクトの配置なども変わってきている。

ZZR1100 カタログ

ZZR1100のカタログにおいて、ラムエアシステムは「F1」に導入されているシステムに似たハイテク吸気システムと説明されている。さらに他メーカーの吸気システムとも一線を画していることをハッキリと打ち出してもいる

1988 ZX-10

1990 ZZR1100 ラムエアシステムが導入されたことで、バイクのノーズ部分からキャブレターに向かってダクトが新たに設置されたZZR1100。前のモデルZX-10と比べればその差がハッキリとわかる

2004 ZX-6R

研究を重ねることでシステム自体も進化する。従来の「カウルの先端でこそ十分なラム圧が得られる」という概念をくつがえしたZX-6R

最後に蛇足かもしれないが、似たようなシステムで間違えやすいものにカワサキ・クールエアシステム(K-CAS)がある。ちなみにCASの読み方は「キャス」。こちらはカウルの左右に配されたダクト(ZXRシリーズのコックピット部分にあるジャバラみたいなもの)を介してシリンダーヘッド上部へダイレクトに新気を送り込むシステムで、エンジンの冷却を促進するとともに、吸入エアの温度上昇をおさえて高速連続走行時の熱ダレ防止に主眼が置かれていた。ZXRシリーズや、KLEなどに採用されていた。

KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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