寿命を決めるワンプレー

「バイクを保たせる」ための術をいちバイク乗りの視点から紹介

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エンジンの磨耗進行を抑え性能を安定させるのにオイルが貢献しているのは周知の事実。だが使用するオイルや期間によっては、むしろ寿命を縮めてしまうことも。純正オイルなら間違いないが、より一歩進んだオイル選びについて、カワサキ乗りに参考になる話をさせていただこう

寿命を決めるワンプレー 第2回

エンジンオイルは用途に合わせて使い分ける

機械を長期に渡り安定運用するためには、性能のいい潤滑油が欠かせない。かつては動物から採取可能な油脂や植物油などが用いられていたが、化石燃料すなわち石油が発見されてからは、そこから精製抽出されるオイルやグリスがもっぱら用いられるようになった。

内燃機関…、つまりエンジンには、エンジンオイルが用いられる。また同じエンジンオイルでもバイク用とクルマ用では、オイル自体のチューニングが異なる。高回転高出力型のバイク用エンジンでは、耐高熱性や耐せん断性が重視される。

世界でもっとも高品質であるとされているペンシルバニア産オイルは、耐熱・耐せん断性にすぐれるパラフィン基油をベースとしており、一般市販車はもちろん多くのモータースポーツシーンで活用されてきた。だが、産出量のほとんどを軍用とされてしまうため、一般に流通する分量は限られている。

そんな状況から生まれたのが100%化学合成油である。その名のとおり求める性能に合わせ、いかようにも製造・チューニング可能であるため、今日においてはほとんどのレースシーンで重用されている。またバイク用として人気が高いのは、パラフィン基油に匹敵するといわれるエステルベースのものである。

こうなると、どのオイルが自分のバイクに合っているのか、また、どのオイルを選べば間違いないのかが気になるだろう。ズバリ! 多用途多目的に使えるのはカワサキ純正オイルである。保証の適用まで考えればこれしかない。だが、求める性能によっては、もっとすぐれたオイルがあると断言する。

私が過去に乗ってきたバイクのなかで、もっともオイル選びにこだわったのがGPZ900Rである。その理由は潤滑系にウィークポイントがあると噂されていたからである。100%化学合成油では、イゴールシンボリックRRを使用していた。交換サイクルは1,000km〜1,500km。本来100%化学合成油は運転時間管理で運用するものだが、一般ユースでそこまでの管理体制は現実的でない。この運用体制で使用している間は、100%化学合成油にありがちなシール類への攻撃性や急激な性能劣化はなく、カムシャフトのかじりも発生しなかった。

寿命を決めるワンプレー 第2回

GPZ900R系エンジンの場合、オイル銘柄をチェンジする際は、クランクケース後方はもちろん、前室のドレンボルトからもオイルを抜く。私の知りうる限り、ゼファー1100のエンジンも同様

現在の愛車であるGPZ750Rでは、シェルアドバンスVSX4やモトレックストップスピード4T、オメガSP-2を使用している。いずれも部分合成油であり、走行3,000km程度でも急激な性能劣化を起こしにくいことと、保護性能の高さがチョイスの理由だ。ただしここ一発の場面では、ニューテックNC50やモトレックスパワーシント4Tを使用する。これはGPZ900R時代、パワーを極限まで引き出すには100%化学合成油の方が適していると知ったからである。

今回の格言「愛車を10年もたせたいなら、いいオイルをまめに替えるべし」

つまり私の場合、短期間で最高のパフォーマンスを求める場合は100%化学合成油、長期間運用でエンジンを長持ちさせたいときは部分合成油と使い分ける。前者は走行1,000km、後者は3,000kmを交換の目安としている。この考え方がすべてのバイクに通用するかはわからない。だが参考にはなるだろう。

鉱物油、半化学合成油、100%化学合成油…、さて何が違う

鉱物油とは文字通り石油から抽出しただけのオイルである。半合成および部分合成油とは、鉱物系基油もしくは化学抽出基油にフリクションモディファイヤー(FM剤。おもにモリブデン系の添加剤など)をいくつか添加し性能調整したもの。100%化学合成油とは、まるで化学実験のように製造されたオイルである。いずれも長所短所がありその成分は各社の企業秘密。一概にどれが高性能とはいえない。

KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。 http://ameblo.jp/kazu55z/ https://twitter.com/kazu55z

カワサキバイクマガジンvol.84掲載記事(2010年6月1日発売)
取材協力:カワサキショップ山梨






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