寿命を決めるワンプレー

「バイクを保たせる」ための術をいちバイク乗りの視点から紹介

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ヨシムラ

久しぶりのツーリング。走り出しは絶好調。気分をよくして高速に乗ったら…バシュッと外れてオーバーヒート。ZRX1100以前の車両にありがちなメンテ不足によるトラブル。最悪の場合はヘッドをひずませ要交換。見て触ってチェックするラジエターホースの話である。

熱の影響を受けやすいエキパイ裏もチェック

84年、カワサキ車の水冷化が一気に進む。以降水冷エンジンは、ハイパフォーマンスを追及するバイクのほとんどが採用している冷却方式である。エンジン内を循環し蓄熱した冷却水は、ラジエターへ送られ空気と熱交換。放熱した冷却水はまたエンジンへと送り込まれる。そしてエンジンやラジエター、ポンプをつなぐ冷却水の通路となっているのがラジエターホースである。繊維素材を編みこみ補強された耐熱ホースとなっているのが一般的だ。

寿命を決めるワンプレー 第3回

さてラジエターホースだが、ポンプやラジエターとの連結にはホースバンドが採用されている。構造的には緩みにくいのだが、ある程度の期間や距離を走ると、わずかながら緩みが出てしまう。その判断材料として冷却水のにじみや漏れがあるのだが、実はホースそのものの劣化で漏れが発生している場合もある。

いくら耐熱性のゴム系化成品とはいえ、とくにエキゾーストパイプ裏にレイアウトされているホースは、冷却水の熱に加えエキゾーストパイプの放熱にもさらされている。結果ホースは、伸びて本来のサイズより大きくなっていたり、伸縮のくり返しからピンホール的な穴が開いてしまうことがある。そんな状態のときに冷却水通路の内圧が上がってしまったならば…、いつ破裂してもおかしくないというわけだ。

私の経験でいえば、エキゾーストパイプ裏のホースは軟化膨張するだけでなく、内径が広がっていた。振動がもとで磨耗してしまったのか、伸びて厚みが減ったのか、その理由は定かではないが、事実サイズが変化していたのである。こうなってしまうと、いくらバンドを増し締めしても、にじみや漏れを止めることはできない。また高速巡航時にホースが外れて100℃の熱水を浴びたこともあった。冷却水が循環していない状態でエンジンを動かし続ければ、すぐさまオーバーヒートとなりシリンダーヘッドがひずんでしまうこともある。いうなれば、たかがゴム系ホース1つで、エンジンに大ダメージを与えかねない。

そうならないためにも、ラジエターホースのチェックは定期的に行ないたい。バンドの締め付け具合はもちろんのこと、ホース自体の硬度やピンホールチェックも実施する。とくにピンホールに関しては、圧力がかかった状態でないと発見できない場合が多いため注意が必要だ。また、普段は奥まったところに隠れているホースについては、最低でも1年サイクルで点検する。もし伸びきった(劣化)状態になっていたら、迷わず即座に新品に交換だ。

寿命を決めるワンプレー 第3回

右が新品、左が2年以上使用したエキゾーストパイプ裏にレイアウトされたホースである。軟化膨張しているのがわかるだろう。またピンホールは2つほど空いていた

ハイパフォーマンスを求めたからこその水冷式。しかし、その代償として空冷エンジンには存在しない冷却水およびホース類の点検という項目が増えた。98年以降は漏れや破裂の話を聞かなくなったが、素材やレイアウトが大きく変わらない限り油断はできないのである。

冷却水の管理

関連する項目として挙げられるのが、リザーバータンクの液量レベル。高温・高圧時のオーバーフロータンクとして機能しているため、満水にしてしまうと逃げ場を失った冷却水がどんどんあふれ出てくるので注意。

寿命を決めるワンプレー 第3回

オーバーヒートして冷却水があふれてきたというニンジャ乗りに多い勘違い。FULLまで補水すればそれもムリはない。私は冷間時、下線レベルで運用している

KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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