SENSATIONAL SYSTEM OF K

バイク業界に影響を与えたカワサキ。その中で、特にカワサキが口火を切ったシステムを紹介

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ヨシムラ

世界最高峰のレースで勝つため、コンパクトなエンジンの開発が重要な課題だった。そこでカワサキは倍速ジェネレーターの採用に踏み切る。レースシーンで実用化されたこの技術は、ストリートモデルZX-10Rにも採用されるのだった

2004 ZX-10R ジェネレーター

ご存じの方も多いと思うが、フューエルインジェクションは、キャブレター仕様車に比べて相当な電力を消費する。その消費量に合わせて大型のジェネレーターを積めば、当然重量とスペースの問題が生じる。とくに軽量でコンパクトな車体を必要とするレーサーにとっては重要なことだ。そこで、サイズは小型のままで十分な発電量を確保するため、カワサキは最初期のZX-RRに「倍速ジェネレーター」を採用した。仕組みは、従来並みの小型軽量ジェネレーターを使い、回転数を倍加することで大型ジェネレーターと同等の発電量を得るというもの。 また、従来はジェネレーターを回すためにアイドラーギヤやチェーンなどを設けて動力を伝達していたが、クラッチギヤという、変速システムには必ずある部品をそのまま使って駆動されているのも特徴だった。これにより部品点数が減り、軽量化にもつながる結果をもたらしたのだ。

2004 ZX-10R プレス資料

MotoGPレーサーZX-RRに倍速ジェネレーターが採用されたときにプレスリリースに掲載されたイラスト。エンジンのコンパクト化を追求していることがわかる

このレーサーに取り入れられたシステムを採用した市販車が、「サーキットパフォーマンスNo.1」を開発コンセプトとしてかかげられたZX-10Rである。車体から要求され、コンパクトな設計を義務づけられたエンジンは、重量でZX-12Rの約15%、ZX-9Rの約20%もの軽量化と小型化を実現。傾斜鋳造による一体成型のシリンダー・クランクケースなどの最新技術とともに、シリンダー背面に配置された倍速ジェネレーターの採用がその実現に大きく貢献したのだ。

2004 ZX-10R カットモデル

こちらが2004、2005年式ZX-10Rに採用された倍速ジェネレーター。エンジン内シリンダーの真後ろに設置されている

2002 ZX-RR
2002 ZX-RR

2002年MotoGPマシンとして披露された最初期のZX-RR。このモデルで倍速ジェネレーターが採用されたことは、当時話題に上った

2004 ZX-10R
2004 ZX-10R

とても1,000ccのエンジンを装備しているとは思えないコンパクトさを実現した04年式ZX-10R。その要素の一つに倍速ジェネレーターがある

しかし、レーサーで廃止されたのに続き、大幅なモデルチェンジが行なわれた06年式のZX-10Rにおいても採用されなかった。これまでもさまざまな新技術が導入され、時代とともに消えていった。「倍速ジェネレーター」も今後、再び採用されるかは、わからないが、カワサキのチャレンジが生んだシステムとして後生に語り継がれることは間違いないだろう。

2005 ZX-RR
2005 ZX-RR

2005年式ZX-RR。実戦を重ねたことで、2002年に比べて、より洗練されたスタイルへと進化した。ただし倍速ジェネレーターは廃止されている

2006 ZX-10R
2006 ZX-10R

写真で見る限り、2004年式とほとんど変わらないサイズを実現する2006年式ZX-10R。だが、このモデルには倍速ジェネレーターは採用されてない

2006 ZX-10R カットモデル

2006年式ZX-10Rのエンジンカットモデル。04年式と比べれば、シリンダー後ろからジェネレーターがなくなっているのがわかる

2006 ZX-10R ジェネレーター

こちらが2006年式ZX-10Rに採用されるジェネレーター。一般的なモデルと同じくエンジンサイド部に配置される

KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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