ヨシムラ
イタリア・ミラノで開催中のオートバイ国際見本市・EICMA 2018にて、新たな進化を遂げた新型・2019年モデルのヴェルシス1000が発表された。
ヴェルシス1000は2011年11月のEICMA 2011にて発表された2012年モデルが初代となり、今回のモデルチェンジは2015年以来2度目となる。さらに2019年モデルではハイグレードモデルとなるヴェルシス1000 SEもラインナップ。これでヴェルシスシリーズもNinja ZX-10RやNinja H2 SXのバリエーション展開をなぞった形となった。
「ANY ROAD, ANY TIME(どんな道でも、どんな時でも)」をコンセプトとしたヴェルシスシリーズの長兄であるヴェルシス1000。その実態はZ1000ベースの1000㎤・直列4気筒エンジンを搭載した異色のアドベンチャーモデルであり、あらゆる路面状況でストリートライディングの楽しさを提供することを目的に開発されたモデルだ。
2019年モデルでは大幅なスタイリング変更が行なわれたのはご覧のとおりだが、機能面の変更点も多岐に渡る。ヴェルシス1000およびヴェルシス1000 SEに採用されている電子制御関連の機能や装備のアップデートは、おおよそNinja ZX-10RやNinja H2シリーズのものを踏襲した格好と言えるが、注目したいのはカワサキ初となるスロットル・バイ・ワイヤの採用だ。
この機構はハンドルにAPS(アクセルポジションセンサー)を内蔵し、電気的にスロットルバルブを操作するもので、四輪では割と一般的だがオートバイでは一部の高級車のみで、まだまだ採用されている車種は少ない。この機構によりスロットルワイヤーのメンテナンスから開放されるほか、よりスムーズなアクセルコントロールの実現が可能となる。また気になる操作感は従来のワイヤー式のような自然な抵抗感を再現していると言う。派手な装備ではないが、ライダーの直接触れる部分だけに、そのフィーリングがどう仕上がっているのか、非常に興味深いところだ。
ほか主な変更点の詳細は以下を参考にして欲しい。今のところハイグレードモデルのSEが2019年春以降に国内販売が予定されている。ほか価格や発売日等の詳細は不明だ。
従来モデルからの主な変更点(リリースより)
エンジン・車体 | |
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電子制御スロットルバルブを採用した並列4気筒エンジン | 低中速回転域で強力なトルクを発揮し、高速回転域まで心地よく吹け上がる水冷4ストローク4気筒DOHC4バルブエンジン(1,043㎤)を搭載。2019年モデルでは新たに電子制御スロットルバルブを採用したことで、スムーズな出力特性を実現したほか、欧州の排出ガス規制であるユーロ5をクリア。また、加速時にはライダーを高揚させる心地よい吸気音を奏でる |
ブレーキ性能の向上 | フロントブレーキにはφ310mmのブレーキディスクと、高剛性を誇る異径対向4ピストンラジアルマウントモノブロックキャリパーを新採用することで強力な制動力を発揮。また、両モデルともに、一般的なABSに加えKIBSを標準装備し、安全性を向上させている |
電子制御技術 | |
エンジンと車体の総合マネージメントパッケージKCMF | カワサキ独自のダイナミックモデリングプログラムとIMU(イナーシャルメジャメントユニット:慣性計測装置)を用いて、コーナリング中のエンジンパワーやブレーキ効力を最適な状態にコントロール。加速から減速、減速から加速に移行する際の挙動をスムーズにすることで、ライダーが意図したラインをトレースしやすくしている |
緻密なブレーキ制御を可能にするKIBS | カワサキのスーパースポーツモデル用高精度ブレーキマネジメントシステムで、前後のホイール速度差だけでなく、フロントキャリパーの油圧、ECU(エンジンコントロールユニット:各所センサーの情報により燃料噴射量や噴射時期、点火時期などを制御する装置)、IMUからの各種情報を解析し、細やかなブレーキ制御を行うことでブレーキング時のコントロール性能を高める。「VERSYS 1000」シリーズに搭載したKIBSは、「Ninja H2」や「Ninja ZX-10R」で使用されているものをベースとし、公道走行やロングストロークサスペンションに併せてプログラムやセッティングを見直している。 |
ライダーの疲労を軽減するエレクトロニッククルーズコントロール | ボタンを押すだけで設定した速度を維持することが可能なエレクトロニッククルーズコントロールを採用。長距離走行時における疲労の軽減、快適性の向上に貢献。 |
先進的な電子制御サスペンションKECS(SE) | ショーワ社と共同開発し、2018年モデルの「Ninja ZX-10R SE」に初搭載された電子制御サスペンション。路面状況やライディングスタイルに応じて瞬時に前後サスペンションの減衰力を調整し、タイヤの接地感を高めるとともに、安定した車体姿勢を実現する。「VERSYS 1000 SE」のKECSでは、新たに電子制御リヤサスペンションプリロード調整機能を設け、タンデムライディングや荷物積載時のセッティング変更が容易に行える。 |
インテグレーテッドライディングモード(SE) | KTRC(カワサキトラクションコントロールシステム)、パワーモード、KECSと連携する包括的なシステムで、トラクションコントロール、出力特性、サスペンション特性を特定のライディング条件に合わせて設定することが可能。ライダーは3つのセッティングパターン(スポーツ、ロード、レイン)またはマニュアルセッティングを選択することができ、効率的な電子制御設定が可能。 |
クラッチ操作不要でシフトアップ・ダウンが可能なデュアルディレクションKQS(SE) | クラッチレバー操作やスロットル操作を行なわずに素早いシフトアップ・ダウンが可能で、スポーツライディングの楽しさを向上。 |
スマートフォン接続機能(SE) | Bluetooth機能を搭載し、スマートフォンと相互接続が可能。専用スマートフォンアプリ「RIDEOLOGY THE APP」を使用し、ライディングモードの設定と車両情報や走行ルートの確認をスマートフォン上で行うことが可能。また、電話やメールの着信をインストゥルメントパネルの液晶スクリーンに表示させて、ライダーに知らせる便利な機能も備える。 |
デザイン・装備 | |
快適性と機能美を追求したデザイン | アッパーカウルデザインなどを見直し風防性能を強化するとともに、フロントからリヤまで流れるようなフォルムを実現。また、各パーツの素材や色を使い分けることで彫りの深さを強調。 |
ツーリングを快適にする各種装備 | 標準モデルで約75mm、大型ウインドスクリーンを備えるSEモデルでは45mmの範囲で、無段階に高さ調整が可能なウインドスクリーンを装備。従来モデルではスクリーン外側だった調整用ノブの位置をスクリーン内側に変更したことで、ライダーはシートに座ったままスクリーンの高さを変更可能。また、インナーフェアリング内にDCソケットを新設。電源を必要とするアクセサリーへの容易な給電が可能。シートは販売国・地域によってコンフォートシートまたはローシートのいずれかが標準装着され、もう一方のシートはアクセサリーとして用意。 |
全灯LED化 | 輝度を大幅に向上させたLEDヘッドライトのほか、スタイリッシュなデザインのLEDテールライトを採用。ターンシグナル、ナンバー灯をはじめ、全ての灯火をLED化(一部の導入国を除く)。 |
高級感溢れるインストゥルメントパネル | アナログ式タコメーターに加え、「VERSYS 1000」には液晶スクリーン、「VERSYS 1000 SE」には優れた視認性を備えたフルカラーTFT(薄膜トランジスタ)液晶スクリーンを装備。 |
LEDコーナリングライト(SE) | 「VERSYS 1000 SE」には、夜間コーナリング時の視認性を高めるLEDコーナリングライトを装備。左右それぞれのシュラウドに配置された3灯のLEDライトが、車体のバンク角に応じて順番に点灯し、ライダーの視野方向を照らすことが可能。 |
傷を自己修復する特殊コーティング塗装(SE) | 特殊コーティング塗装のハイリーデュラブルペイントおよびハイリーデュラブルマットペイントを採用。傷を自己修復し、高品質な外観を維持。 |