Z650RS 50th Anniversaryインプレッション

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ヨシムラ

昨年に発表されて以来、大きな注目を集めているZ650RS。4月28日に発売開始が迫った今、さっそく試乗してきた。親しみやすくも軽快感のある走行性能は、まさにザッパーそのもの!

レトロなフォルムを纏った軽快ハンドリングマシン

昨年、Z650RSが発表された時、カワサキは、Z650RSと76年式の空冷Z650を並べたイメージ画像を公開した。さらに、Z650RSのイメージカラーには、空冷Z650と同様のグラフィックが採用されている。このことからわかるように、カワサキはZ650RSに対して空冷Z650のイメージをダブらせているわけだが、空冷Z650といえば、軽快を意味する造語“ザッパー”の愛称を持つ。先だって発売されたZ1も軽快なハンドリングだったが、空冷Z650はより軽快でコンパクトな車体を追求して開発された。
Z650RSに対してもカワサキは“より軽快で自然なハンドリングを実現”とうたっていて、ザッパー的な性能を追求している。いうなればZ1と空冷Z650の関係は、現行モデルでいえばZ900RSとZ650RSの関係に近い。実際、Z650RSの乗り味は軽快で、コンセプト通りの仕上がりといえる。ただ、そのねらいはかなり極端で、Z900RSに対するZ650RSの軽快さは、 Z1と空冷Z650の関係以上だ。

軽快な走行性能に大きく貢献しているのが、マスの集中化と低重心化、そしてエンジン特性だ。サイレンサーを車体下にレイアウトしたりホリゾンタルバックリンクリヤサスペンションを採用したりして、マスの集中化と低重心化を実現。採用する並列2気筒エンジンは、やっとレッドゾーンに到達するのではなく、加速途中で勢いよくレッドゾーンにぶち当たるといったように、非常に軽い特性となっている。

この軽快感を体感できる一番のシチュエーションは、タイトなカーブが連続するワインディングだが、高速道路や市街地でも効果を感じられる。たとえば、高速道路を120㎞/hで走行中に車線変更する際、車両が前進する力やホイールのジャイロ効果などの影響で、どのようなバイクでも大なり小なりハンドリングに重さを感じるが、Z650RSは比較的軽快に車線変更できる。前を走るクルマが路面のコンビニ袋や段ボールの小さな破片を巻き上げても、余裕を持ってヒラリとかわすことさえ可能だ。念のため付け加えておくと、軽快といっても車体がフラフラするわけではなく、予想以上にバンクしたりエンジンが回ったりするわけでもない。Z650RSは、ほぼライダーの意思通りの反応を示す。

Z650RS 50th Anniversaryインプレッション

軽快なだけに親しみやすいキャラクターのZ650RSだが、親しみやすさは軽快感だけでなく、乗り心地のよさも関係している。サスペンションがソフトな設定なのだろうか、高速道路や橋のジョイント部分や、荒れた路面のアスファルトのひび割れ、道路工事の跡など、何かしらの凹凸を通過した時、路面からの衝撃をサスペンションがしなやかに吸収する。だから、とてもなじみやすい。また、一般的に、路面からの衝撃は、積もり積もれば疲労につながる。その点Z650RSに関しては、今回は1日300㎞/hくらいの試乗だったが、さらに長距離のロングツーリングに出かけても、路面からの突き上げによる疲労は少ないのではないだろうか。

ただ、ワインディングを積極的に走るとなると、場合によっては、このサスペンション設定がネガティブに感じることもある。カーブの手前でハードブレーキングして走り抜けていく時、サスペンションが大きくストロークして、車体の挙動が大きくなってしまうのだ。といっても、サスペンション設定の善し悪しは表裏一体で、ワインディングはサーキットと違い路面がフラットで均一ではなく、凹凸があったり濡れていたり不規則な状態となっている。したがって、ワインディングならZ650RSのソフトなサスペンションくらいの方が走りやすいだろう。

Z650RSの走行性能を語るうえで、ライディングポジションも外せない要素だ。ポイントはハンドルとシートだ。Z650RSは幅広でアップタイプのバーハンドルを採用しているのだが、幅広すぎず高すぎず、ラクなのだけれど積極的に車体をコントロールしやすい、実に絶妙な設定となっているのだ。シートも硬すぎず柔らかすぎず、座り心地がいいのだけれど、ライダーが座る場所は、レトロタイプのシートにしては幅広すぎないので体重移動をしやすい。

つまり、快適性を備えたライディングポジションとしつつ、車体とエンジンが生み出す軽快感を助長するポジション設定となっているのだ。サスペンションを含め、Z650RSは軽快感と親しみやすさを、絶妙なバランスで組み合わせたモデルといえよう。だからこそ、アグレッシブに走ってみようと思えるのだ。

一見、レトロなフォルムだけれど、乗ればザッパーよろしく、スポーティさが際立つ。操る快感を追求するカワサキならではのモデルが、また1台誕生した。

Z650RS 50th Anniversary 足着き

ライダーにとてもなじむライディングポジションで、初めて乗る時でも、ハンドル、シート、ステップの位置に違和感を全く覚えない。太ももの位置がスリムのため、足を真下方向に伸ばすことができるので、シート高800㎜にしては足着きがいい(ライダー 身長:170㎝/体重:50㎏)

2022年モデル Z650RS/Z650RS 50th Anniversaryの主なスペック

車名 Z650RS Z650RS 50th Anniversary
マーケットコード ER650MNFBN ER650MNFAN ER650MNACN
型式 8BL-ER650M
全長x全幅x全高 2,065㎜×800㎜×1,115㎜
軸間距離 1,405㎜
最低地上高 125㎜
シート高 800㎜
キャスター/トレール 24.0°/ 100㎜
エンジン種類/弁方式 水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブ
総排気量 649cm³
内径x行程/圧縮比 83.0㎜×60.0㎜/10.8:1
最高出力 50kW(68PS)/8,000rpm
最大トルク 63N・m(6.4kgf・m)/6,700rpm
始動方式 セルフスターター
点火方式 バッテリ&コイル(トランジスタ点火)
潤滑方式 セミドライサンプ
エンジンオイル容量 2.3L
燃料供給方式 フューエルインジェクション
トランスミッション形式 常噛6段リターン
クラッチ形式 湿式多板
ギヤ・レシオ 1速 2.437 (39/16)
2速 1.714 (36/21)
3速 1.333 (32/24)
4速 1.111 (30/27)
5速 0.965 (28/29)
6速 0.851 (23/27)
一次減速比 / 二次減速比 2.095(88/42)/3.066(46/15)
フレーム形式 ダイヤモンド
懸架方式 テレスコピック(インナーチューブ径 41㎜)
スイングアーム(ホリゾンタルバックリンク)
ホイールトラベル 125㎜
130㎜
タイヤサイズ 120/70ZR17M/C (58W)
160/60ZR17M/C (69W)
ホイールサイズ 17M/C×MT3.50
17M/C×MT4.50
ブレーキ形式 デュアルディスク 300㎜ (外径)
シングルディスク 220㎜ (外径)
ステアリングアングル
(左/右)
35°/ 35°
車両重量 188kg 190kg
燃料タンク容量 12L
乗車定員 2名
燃料消費率(km/L) 31.8km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時)
23.0km/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時)
最小回転半径 2.6m
カラー キャンディエメラルドグリーン(GN1) メタリックムーンダストグレー×エボニー(GY1) キャンディダイヤモンドブラウン(BN1)
メーカー希望小売価格 101万2,000円(税込み) 110万円(税込み)
発売予定日 2022年4月28日(木)
問い合わせカワサキモータースジャパンお客様相談室
電話番号0120-400819 ※月〜金曜 9:00〜12:00、13:00〜17:00(祝日、当社休日を除く)
URLhttps://www.kawasaki-motors.com/mc/
井田 幸雄

カワサキバイクマガジン編集部員。旅の移動手段としてバイクに乗り始め、オン/オフのツーリングを楽しんできた。約30年のバイク歴のなかで、所有したカワサキ車はスーパーシェルパ、Z1R、そして現在乗っているGPZ900Rだ ■身長:170㎝ ■体重:50㎏




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