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ヨシムラ

出力面と形式の違いから明確に異なる2車の最高出力とトルク

エンジンは種類からして並列4気筒と並列2気筒との違いがある。パワー面ではNinja ZX-25Rのほうが明確に優位だ。最大回転数がNinja 250よりも高いためか圧縮比がわずかではあるがNinja 250よりも低いが、それを補って余りある最大出力を発揮する。同排気量で最大9psも違えば、かなりの違いを体感としても感じるだろう。

ただしトルクはNinja 250のほうが優位。比較すると低い回転数で発生する(とはいえNinja 250ですら1万rpmではあるが)ので、比較的回転数を抑えたシーンでの走りを意識するならNinja 250のほうが適しているかもしれない。

エンジンオイル量はNinja ZX-25Rのほうが0.9ℓほど多いのは気筒数の違いが大きいと思われる。一般的に気筒数が多いほうが循環するエンジンオイルが多くなるからだ。とはいえ、かつてのZXR250では3.5ℓも必要だったことを考えると、冷却効率や保護性能などは格段に向上していると思われる。

Ninja ZX-25Rのエンジンヘッド

バルブまわりを挟角化してコンパクト化させたNinja ZX-25Rのエンジン。高回転に追随できるバルブスプリングなどもあり、Ninja 250の並列2気筒エンジンより高回転・高出力化を達成した。しかし部品点数の多さや構造の複雑化から、並列2気筒エンジンより重いのは自明だ

足まわりは同じようでじつは異なる!?

足まわりを見ていると、ほとんど違いがないように思われるだろう。ブレーキのディスクローターには大径ディスクを使用したとカワサキは車体解説を行なっていたが、じつは前後ディスクローターともNinja 250と同寸だ。今回は数値を取り上げるので触れないが、キャリパーなどは異なるのでブレーキ性能がまったく同じではないことには注意したい。

タイヤはフロントのみ110/70-17と同寸となるが、リヤはNinja 250が140/70-17、Ninja ZX-25Rが150/60-17となる。ホイールはNinja ZX-25Rのほうが前後それぞれNinja 250より0.5インチほどワイド化されている。

一般的にバイクでコーナリングさせやすくするには、タイヤにはラウンド形状であることが望ましいとされている。たとえばタイヤサイズ140/70-17と140/60-17とでは、後者のほうがラウンド形状が緩やかになり、バイクをバンクさせにくくなると言われることが多い。140/70-17と150/60-17とではどうかというと、もとの設計も異なるので一概には比較しにくい部分もあるが、扁平率が低い(数値が小さくなる)とバンクさせにくく感じる傾向は強まりやすい。

他方、太いタイヤは接地面積が増すので、パワーを的確に路面に伝えることができる点が大きなメリットとされている。スーパースポーツなどのビッグバイクが180や190サイズを使用することからも想像できるように、ハイパワー化に対応するのはリヤのワイドタイヤ化+ハイグリップタイヤ装着が一番の近道でもある。

ゆえに4ストローク250㏄クラスとしては最高出力となるNinja ZX-25RのリヤまわりにはNinja 250と同じタイヤサイズ、ホイール幅ではなく、1ランク上のサイズと、より高性能なラジアルタイヤを用意したのだろう。

ではNinja 250より曲がりにくくなっているのか、という疑問も生じそうだが、タイヤはプロファイルやサイドウォールの設計などが同じメーカー内であってもブランドによっては異なることもある。同じダンロップ製でもラジアルタイヤのGPR300を純正採用するNinja ZX-25Rと、バイアスタイヤのGT601を純正採用するNinja 250とでは、ハンドリングで目指す特性が違う可能性が高い点も指摘しておこう。

一方で気になるのがフロントだ。同じタイヤサイズながらNinja ZX-25Rが3.5インチ幅なのに対し、Ninja 250は3.0インチ幅。使用するタイヤは上記したとおりそれぞれ異なるが、このタイヤ2ブランドはともにフロントは標準リム幅が3.0インチ幅。つまりNinja ZX-25Rのホイールにはジャストではないことになる。

タイヤには許容リム幅というものがあって、標準リム幅には±0.5ずつ余裕を持たせていることが多い。標準が3.0だとすれば2.5〜3.5インチ幅のホイールに装着可能、といった具合だ(もちろんこれはタイヤメーカーやブランドで異なるので注意したい)。なので標準3.0インチ幅のタイヤを3.5インチ幅のホイールに装着すること自体は可能だが、標準より幅広のホイールにタイヤを装着するとタイヤが両側のリムに引っ張られてしまい、標準リム幅で想定していた形状よりもラウンドがなだらかな形状になってしまいがちだ。つまり直進安定性は増すもののバンクさせにくくなることを意味する。

この点をカワサキがどう判断しているのかは定かではないが、むしろ意図的にこうしている可能性のほうが高い。のちのちのタイヤ交換時にもメーカー指定に従い、標準リム幅3.5インチの120/70-17を選択する、といったことは避けたほうがいいのかもしれない。

Ninja ZX-25R フロント
Ninja ZX-25R リヤタイヤ

リヤはNinja 400と同じ4.5インチ幅・150/60-17とNinja 250より1サイズワイド化。パワーを適切に路面に伝えるためだろうか。気になったのがフロントだ。ホイールサイスは異なるものの、指定サイズは同じ。タイヤのプロファイルがGPR300とGT601とで異なるから標準リム幅3.0インチのタイヤでも3.5インチのNinja ZX-25Rには問題ないと判断したのだろうか。この点はいずれ確認したいポイントだ

キャスター・トレールの近似値から乗り味は想像できる!?

ハンドリングに関係するパートとしては、キャスター角とトレール量の違いにも注目してみた。Ninja ZX-25Rの数値は24.2度/99㎜、Ninja 250は24.3度/90mmという設定となる。一般的にキャスター角が大きい(数値が大きくなる=キャスターが寝る)&トレール量が長いほうが直進安定性が増す一方でハンドリングが重くなるとされており、ツアラーモデル向きの設定とされている。

このキャスター角/トレール量の近似値をカワサキ内で探してみたところ、Ninja 650(24.0度/100mm)、Ninja 1000SX(24.0度/98mm)が非常に似通っていた。カワサキは『Ninja ZX-25RはNinja ZXシリーズの設計思想をフィードバック』といった言葉を車両解説の随所に使用しているのだが、そのNinja ZXシリーズであるNinja ZX-10Rは25.0度/107mm、Ninja ZX-6Rは23.5度/101mm。これらの数値よりはNinja 650やNinja 1000SXのほうがNinja ZX-25Rと似通っていると言うべきだろう。

ちなみに、本サイトで掲載した「驚異のフルカウルクォーター・Ninja ZX-25Rの開発エピソード」には開発者のコメントとしてこんな記述がある。

『ラインナップのポジションはNinja ZX‐10R/6Rと同じNinja ZX‐Rシリーズ直系のスーパースポーツです』

『車体に関しては、開発者がこだわったのはハンドリングだ。高速安定性を確保しつつ、サーキット走行も楽しめる軽快なハンドリングを構築することが車体の開発コンセプトだ。』

ここで注目は“高速安定性を確保しつつ”という言葉。ここにどれだけの重みを置くのかはカワサキのさじ加減となるのだが、Ninja ZX-25Rに設定されたキャスター角/トレール量とその近似値のモデルから判断すると、もしかしたらカワサキのイメージ戦略とはやや異なり、シャープすぎないハンドリングを指向しているのかもしれない。

もちろん、キャスター角/トレール量で車両としての全キャラクターが決定されるわけではないが、実車がいかなるハンドリングなのか非常に興味が沸いてくる部分だ。

大幅に異なるのが車体重量。17㎏の違いはどんな差をもたらす?

車体重量の差は思ったより大きい。Ninja 250が166㎏に対して、Ninja ZX-25Rは183㎏。おそらくもっとも影響するのがエンジン重量だろう。

エンジンは並列2気筒から並列4気筒となれば、2気筒分のシリンダーとピストン、さらにそれに付随する周辺パーツが含まれるので重量増になるのは否めないところ。

ちなみに183㎏という数値はヴェルシス-X250ツアラーと同じ。Ninja ZX-25Rはヴェルシス-X250ツアラーと同重量でNinja 400(167㎏)より重く、Ninja 650(194㎏)より軽いことになる。

今ではあまり使用されなくなっているが、加速性能を意味するパワーウエイトレシオ(車体重量÷馬力)を割り出すと、Ninja ZX-25Rは3.978㎏/ps、Ninja 250は4.486㎏/ps。参考までにカワサキ他モデルの数値も紹介すると、Ninja 400が3.479㎏/ps、Ninja 650が2.852㎏/ps、Ninja ZX-10Rはラムエア加圧時0.971㎏/ps、Ninja H2Rはラムエア加圧時0.662㎏/psだ。パワーウエイトレシオは数値が小さいほど加速性能にすぐれるとされているので、その意味ではNinja ZX-25RはNinja 250より重量増でも加速性能にすぐれる、と評価することができるだろう。

ヴェルシス-X250ツアラー

Ninja ZX-25Rとヴェルシス-X250ツアラーとは車体重量が同じ、と書くと意外に思われるだろう。重心位置やハンドル位置なども異なるので押し歩きや走行時の重量感などは当然異なるだろうが、ヴェルシス-X250との比較なら、さほど重くは感じない!?

数値を追えばいいところも悪いところも見えてくる

数字だけ追うとNinja ZX-25Rがカワサキ250㏄クラスで絶対的に優位な点ばかりあるわけではないし、思ったよりスーパースポーツらしからぬと思われる数値も見えてきた。

では実際にNinja ZX-25Rに試乗すると、ライダーたちはどういう感想を持つのだろうか? その辺りは近日中に触れたいが、数値から導き出せるイメージよりスーパースポーツ的ハンドリングとなっているのか、それともここで挙げた数値のように思った以上にツアラーテイストなハンドリングとなっているのだろうか。実車の試乗に期待したいところだ。

完全新設計の並列4気筒250㏄エンジンを採用するNinja ZX-25Rが9月10日(木)から全国で発売開始! 価格は82万5,000円から

問い合わせカワサキモータースジャパンお客様相談室
電話番号0120-400819 ※月〜金曜 9:00〜12:00、13:00〜17:00(祝日、当社休日を除く)
URLhttps://www.kawasaki-motors.com/mc/
四ッ井 和彰

カワサキイチバンを運営するクレタで各出版物の編集部に長年所属。カワサキバイクマガジンやカスタムピープルでは編集部員として記事執筆や写真撮影などを担当した。カワサキ歴は2000年代後半になってからGPZ1000RX、KSR-Ⅱ、GPZ600Rなどを乗り継いできた遅咲きの1972年生まれ。




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