ヨシムラ
W650と同じ並列2気筒を持つER-6nだが、はたして新しいスタイルにシンクロした新しい乗り味なのか。また、はたして大型免許新規取得者にとって乗りやすいバイクか、それともベテランがとことんスポーツライディングできるバイクなのか。
幅広い場面で楽しめる懐の深さが魅力的!!
ミドルクラスのネイキッドスポーツに位置するER-6nは、フルカウル装備のER-6fと同時開発された兄弟車である。ただ、独創的なスタイリングという意味では、ER-6nの方がインパクトは大きい。それだけに好き嫌いが明確にわかれるかもしれない。
女性ライダーを多分に意識したライディングポジションなので、小柄なライダーでもフィット感に満足できるだろう。並列2気筒ながらニーグリップ部がスリムであるからだ。
エンジンを始動すると、ドルルルーンという180度クランクならではのリズミカルな鼓動とサウンドが体と耳に心地よく響く。振動は4気筒のモーターのような周波数ではなく、かといってドッカン・ドッカンとくるものでもない。速度を出さなくても楽しい気持ちにさせる作りだ。
しかも通常なら、2気筒はクラッチワークに気をつかうことが多いのだが、ER-6nはまるで4気筒バイクのように大雑把なクラッチワークで済む。
これまでは、180度クランクのツインというと低速トルクが細くて扱いにくいというイメージがあった。だがER-6nはまったく違う。アイドリング回転での粘りとトルク&レスポンスがしっかり作り込まれているので、Uターンや交差点での発進がとてもラクチンなのだ。
左右へのフットワークも実に自然で、市街地を流すのにちょうどいいパワー&操縦性を実感することだろう。市街地も高速もワインディングも遅くない。でも速すぎない。通勤の足としても、ツーリングの相棒としても、これなら過不足なし。いつもライダーの負担にならないと思う。
ワインディングのER-6nはスーパースポーツに近い走りを見せつける。扱いやすいエンジンが実質的な速さを生み出すことを実感させてくれるのだ。たとえば見とおしが悪いブラインドコーナーでの走りやすさは特筆モノ。安心してアクセルが開けられる。だから俊足なのだ。
左右への倒し込みが軽いうえに前後タイヤの接地感がうまく確保されている点も見逃せない。ハイグリップタイヤに依存した高荷重設定のスーパースポーツよりも、楽しめるエリアと時間が圧倒的に多い。
昔から数多くのリッターバイクを手がけるカワサキだが、ミドルクラスでも非常にハイレベルなラインナップを誇っている。ZX-6R、Z750といった4気筒系に加えてW650、そしてER-6nの2気筒系までそろえる。同じ2気筒でもW650はレトロテイスト。ER-6nはモダンテイスト。同じ2気筒でも、きっちりとすみ分けをしている。
>>> 次ページ どんな走りもトコトン楽しめる希有で秀逸なミドル級バイク
柏 秀樹
自身が主催するライディングスクール、KRSを主な活動としつつ、雑誌やDVDなどのメディアで、ライディングテクニック講座や車両インプレッションを行なっている。KRSはオンロードからオフロードまで、週2〜3回のペースで開催されている。
https://kashiwars.com