Z900RS・ZRX1200DAEG・ZEPHYR、3車種の走行性能の差とは?

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ヨシムラ

共通する気持ちよさと単車らしさ

カワサキのフラッグシップネイキッドの変遷を振り返るにあたり、その背景に注目すると、至って現実的な面を避けて通れない。なぜ、新型に更新していかなければならなかったのか。それは、きびしくなる騒音排ガス規制に対処できず、エンジンを新しくしなければならなかったという現実があったのだ。でなかったら、これらはすべて今もラインアップされていて不思議ではない。

しかし、カワサキはただ規制に合致させるためだけに、新型車を生み出してきたわけではない。

エンジンの特質を鑑み、それを活かす方向でのパッケージングを追求するとともに、カワサキファンが求める方向と照らし合わせ、そして、ライバル車に対しカワサキらしい優位性を築けるように進めてきたのだと思えてならない。

1989 ZEPHYR
1997 ZRX1100
2018 Z900RS

ZEPHYR Series:目指すはバイクの原点

1989年に登場したゼファーは、人々が食傷気味になっていたレーサーレプリカに対するアンチテーゼでもあった。それで誰もが“バイクってこれでいいのだ”と思ったに違いない。ともかく、人気にも押されゼファー750、ゼファー1100と矢継ぎ早にシリーズが充実していった。

ゼファーのゼファーたるは、空冷2バルブエンジンにあると思う(ゼファーχという例外はあるが)。空冷エンジンには機能美があり、軽量でとくにヘッドまわりが軽くなる。見ためのオーソドックスさと、低重心によるどっしりした安定感と安心感がゼファーに合っている。また、2バルブであることも軽量化と低重心化に貢献している。エンジン特性も低中回転域向きとなってゼファー向きだ。

ZEPHYRχ インプレッション
1989年、その10年も前に登場していたZ400FXのエンジンの進化版を搭載したゼファーが市場投入された。空冷2バルブを積んだマシンにはホッとさせる優しさがあり、先鋭化したモデルに疲弊していた人々を引き付けた。そして、同じ基本コンセプトにより、1990年にゼファー750、1992年にはゼファー1100が登場した。それぞれに脚色は違うものの、全てのモデルが人気を博した。さらに、ゼファーは1996年に4バルブに進化していった

ZRX1200DAEG:完成度を高めたZRXシリーズ最終章

ただ、エンジンがGPZ900Rをルーツとする水冷4バルブのZRXシリーズになると、言うまでもなく高性能で、空冷機と比べたら重心も高くなりがちだ。ダイナミックに運動性能を引き出していくのが然るべき方向で、それが走り屋向きでもある。

そんなわけで、ダブルクレードルフレームには十分に剛性が与えられ、ホイールベースもビッグネイキッドとしてかなり短くされた。それでいて、リヤショックはツインショックとして、伝統的なスタイルにもこだわった。ファンの伝統を重視する指向にこたえたこともあるのだろう。

その結果、走りはスーパースポーツの片鱗を見せる一方で、駆るときのマシンの存在感を実感させるものとなっていた。

ZRX1200DAEG インプレッション
1997年型のZRX1100に端を発するビッグバイクのZRXシリーズが、最終型となるZRX1200ダエグへと発展したのは2009年であった。エンジンは、国内使用を前提に、カムプロファイルを低速指向とし、吸気バルブを小径化、バルブスプリング、ロッカーアームの変更でフリクションロスを低減させた。燃料噴射化され、スロットルボディはφ34mm(従来型のキャブはφ36mm)で、楕円サブスロットルバルブを備える。ZZR1200ベースのミッションで6速となった

Z900RS:見た目のレトロな印象も走りと技術は今日的

そして、現行車のZ900RSである。エンジンはZRX1200ダエグのZRXシリーズと同じ水冷4バルブだが、軽量コンパクト、排気量も900ccとされ、パッケージングとしてもバランスが追求されている。

トラスタイプのフレームによって軽量化も推進され、車重はZRX1200ダエグよりも30kgも軽量である。リヤショックをリンク式モノショックとして、ハンドリングを高次元化。フロントフォークも倒立タイプである。

やはり、走りは現代的でスポーティだ。誰もが違和感なく、そうした素性の恩恵に預かることができる。それでいて、スタイリングはいい意味でレトロ調だ。走りにもトラディショナルなコントロール感と操るよろこびが作り込まれている。

思えば、ゼファー誕生からここまでざっと30年。昔のバイクはよかったと言う人はいよう。だが、ここまで本質を変えずに、カワサキの情熱によって技術的に進化してきたことを考えれば、新しいモノがすばらしいことは、紛れもない事実なのである。

Z900RS インプレッション
エンジンは兄弟車のZ900ともども、現行Z1000用の1,043ccユニットをベースにボアを縮小、排気量を948ccとしている。そして、Z900よりも最高出力を14ps低くして、低中回転域重視とする。ミッションも1速と6速が専用レシオとされる。フレームは軽量化を追求したトラスタイプで、重量13.5kgという軽さである。リンク式リヤショック、倒立フロントフォークの採用もあって、走りは高次元化されている。なおかつ、日常域で操っている感覚も豊かである
和歌山 利宏
和歌山 利宏

バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。




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