寿命を決めるワンプレー

「バイクを保たせる」ための術をいちバイク乗りの視点から紹介

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ヨシムラ

燃料がなかなか満タンにならないなと思いつつ車体下を眺めたらガソリンの海。キャブレターからではないかとチェックするも、流出は収まらない。また少し走るとエンジンが止まる。そんな症状の出ているバイクではタンクパイプを疑うべし

詰まりがサビとなり、最悪の事態を招くことも

たとえばエンジン不調もしくは不動になった際、チェック項目として真っ先に疑われるのは、キャブレターと点火系の不具合である。そこでキャブレターを取り外して分解清掃、必要があればOリング等の消耗部品も交換する。再度取り付け始動を試みるも不調は相変わらず。ならば…と、バッテリーから点火コイル、スパークプラグに至るまでの点火系を総チェックする。このとき、スパークプラグがくすぶっていることは多いが、それ以外はまず問題ないことがほとんど(GPZ900Rの場合、点火コイルに入ったクラックから電気エネルギーがリークしていることがまれにある)である。

エンジン不調などにはマフラーの詰まりも考えられるが、それ以外にも盲点となりやすいセクションがある。それは燃料タンクのブリーザーパイプとエアベントチューブ。頻繁に燃料タンクを着脱するDIY派の間では装着が面倒だと除去されることが少なくない。逆にその存在や役目すら知らない人もいるだろう。ほとんどのバイクでは、燃料タンク後端から取り出され、ゴム系のパイプで車体下へと気道確保されている。実はこのパイプの詰まりが思わぬトラブルの要因となりうるのだ。

燃料タンク後端2本出しパターン

80年代車に多い燃料タンク後端2本出しパターン。どちらが詰まっても不具合の要因となり、内部でサビによる破損が生じている場合は新品の燃料タンクに交換するのが得策

エアベントチューブの役割は、燃料タンク内部を大気圧と同じにたもつこと。これにより燃料はスムーズにコックへと自然落下できるわけで、仮にこのパイプがなかったとしたら、燃料落下は重力に頼るしかなく、安定した燃料供給はかなわない。ブリーザーパイプは、タンクキャップまわりにたまる雨水やキャップからこぼれた燃料などを排出するために設けられている。この経路は外部からの影響を受けやすく、ゴミが詰まりやすい傾向にある。極論を言えば、エンジン不調に直接影響するものではないが、ゴミが詰まったことでタンク内を通過するパイプにサビが発生、穴が開いて水が浸入したり、ガソリンが流出したりと、放っておけないトラブルを起こすことになる。

このパイプ系のトラブルは、A10以前のGPZ900Rによく見受けられる。事実、私が所有するGPZ750Rもブリーザーパイプのサビによる破損のため、新品の燃料タンクに交換することとなった。このとき、中古の燃料タンクも検討に挙がったが、素性のわからないもの=もしかしたらパイプに詰まりや破損があるかもしれないという予測から、思い切って新品交換した。

エアベントチューブやブリザーパイプの通路が燃料タンク内を通過している場合、上下どちらからでもいいが、圧縮空気を送り込むことで、導通具合を確認することができる。また軽度な詰まりの場合は、この点検作業で問題を解消できるかもしれない。さほど頻繁にやる必要もないが、3ヶ月に1度はチェックしておくといいだろう。

低年式であるほどに風通しをよくしておくべし!

バイクにはこの他、いくつかの大気開放パイプが存在する。そのすべてに意味があり、“たかがパイプ、されどパイプ”なのである。

KAZU 中西

1967年4月2日生まれ。モータージャーナリスト。二輪雑誌での執筆やインプレッション、イベントでのMC、ラジオのDJなど多彩な分野で活躍。アフターパーツメーカーの開発にも携わる。その一方、二輪安全運転推進委員会指導員として、安全運転の啓蒙活動を実施。静岡県の伊豆スカイラインにおける二輪事故に起因する重大事故を撲滅するための活動“伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦"の隊長を務める。過去から現在まで非常に多くの車両を所有し、カワサキ車ではGPZ900R、ZZR1100、ゼファーをはじめ、数十台を乗り継ぎ、現在はZ750D1に乗る。
http://ameblo.jp/kazu55z/
https://twitter.com/kazu55z




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