絶版車の医学

“絶版車の医学”では、絶版車にありがちな症例を紹介し、その対策を解説していく。アドバイザーは絶版車専門店のウエマツだ

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絶版車の医学[第3回]ブレーキの引きずり

時間とともに劣化する部品を見極め早めに対処

ブレーキで発生するトラブルの一つが“引きずり”である。初期症状としては

  1. 押し歩きで抵抗を感じる
  2. ちょっとレバーにさわっただけでブレーキが鳴く

などが挙げられる。

「代表的な原因はキャリパーやピストンの表面に汚れが付着して、ダストシールやオイルシールとこすれて動きが悪くなるというものが多いですね。また、W1や500SSなどのドラム式の場合は、サイドスタンドで車体を斜めに保管している時に水がドラム内にたまって、ブレーキがさびてしまうこともあります」

こう語るのはウエマツ修理部の岩田さんで、そのまま無理して乗り続けるとパッドの片減りや異常摩耗、異常加熱によりローターやパッドに焼きが入り性能が低下する症状、そしてブレーキフルードの沸騰によるペーパーロック現象などに発展する可能性があると語る。どれも命に関わる危険なトラブルであり、修理のコストもバカにならない。そうならないためには早めの点検と整備が必要と岩田さんは言う。

ブレーキフルードは水分を吸う特性があるため、汚れやサビが発生することもある。オーバーホール時は内部を徹底的にクリーニングする(上:洗浄前、下:洗浄後)

ピストンの表面に汚れが付着していると動きが悪くなり、引きずりの原因となる。キレイにすることでブレーキタッチも回復する(左:洗浄前、右:洗浄後)

左右のゴムパーツは同じ部分のパーツだが、劣化するとこれだけカタチが変わってしまう。こうなると正常な動きは期待できない(左:新品、右:劣化後)

長期間、ブレーキフルードにひたっていて溶けてしまったダイヤフラム。これはかなりヒドい例だが、少しずつ劣化していくので注意(上:劣化後、下:劣化前)

ブレーキシステムは命に関わる最重要部品

「定期的に中性洗剤などで清掃し、正しく動いているか、オイル滲みがないかなどをチェックしてください。古いバイクでもオーバーホールによって内部をクリーニングし、ダストシールなどのゴム類やフルードを新品に交換。ピストンをキレイに清掃して正しく組み付ければ正常に機能することが多いです。年式が古いと、ブレーキホースの劣化やローターが限界まで減っていたり、ピストンがサビで侵されていることもあります。当然すべて交換になり、コストもふくらんでしまいます。症状が悪化する前に早期発見してほしいですね」

また別の原因でトラブルになることもある。例えば漏れたフォークオイルがパッドに付着するなどだ。こうなるとまったく止まらないという恐ろしい事態になってしまう。これも定期的な清掃でチェックできる。少しでもおかしいと思ったら早めにプロに相談することが、安全で楽しい絶版車ライフを送る秘訣である。

マスターシリンダーはこれだけの部品で構成されている。もちろんオーバーホールも可能だが、場合によっては新品にした方が安く済むこともある

ローターも徐々に減っていくパーツ。絶版車の場合は純正の新品が出ないことも。その場合は中古品か社外品の新品を使う

Z1系と2スト3気筒系はブレーキ鳴きが多い

オーバーホールし、完璧な状態に組み上げてもZ1系や2スト3気筒系はブレーキの鳴きが起きやすい車種です。またそれに対して有効な対策品も出ていません。ウエマツでは長年の経験を活かし、パッドにスリットを入れたり比較的鳴きにくいパッドをセレクトするなどしています。どうしても鳴き止まない場合はご相談ください。(ウエマツ整備士 岩田さん)

横田 和彦

バイク歴32年のフリーライター。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へ進み、さまざまなメーカー・排気量のバイクを乗り継ぐ。手元にバイクがなかった時期はなく、現在もツーリングや草レース参戦などを楽しんでいる。

カワサキバイクマガジンvol.115掲載記事(2015年8月1日発売)
イラスト:市川リョウコ 取材協力:ウエマツ






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