絶版車の医学

“絶版車の医学”では、絶版車にありがちな症例を紹介し、その対策を解説していく。アドバイザーは絶版車専門店のウエマツだ

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ヨシムラ

絶版車の医学 第1回 マフラーから出る白煙

気付かぬ間に進んでいくオイル上がりに要注意

「よく一般ライダーで『多少の白煙ならば問題ないし、むしろこれくらいの方が調子いい。オイルを足しながら走っています』という方がいます。その考えは程度にもよりますが、あながち間違いではないです」

こう語るのは、ウエマツで修理部門を担当している岩田氏だ。岩田氏いわく、車種にもよるが多少の白煙は気にしなくてもいいようだ。
「でも、それも場合によりけり。放っておくと、大きなトラブルに見舞われることもあります」
今回は、実際に白煙に関する修理を行なった車両を題材として、修理が必要になるような事例を紹介する。

この車両は、エンジンを始動した直後は白煙が多く、暖まると収まる。その白煙の量が所有年数とともに、少しずつ増えてきているという症状だった。
「この場合はオイル上がりが疑われます。その状態を放置しておくと、ピストンリング、ピストン、シリンダー、オイルガイドの摩耗や消耗が進みます。最悪の場合、圧縮漏れや焼き付きに至ります」

エンジンが暖まると白煙の量が減る場合は、オイル上がりが疑われる。
オイル上がりがやっかいなのは、オイル上がり初期のころは白煙を吹く以外の症状をほとんど感じられず、白煙の量に注意を向けなければ、トラブルに気付かないまま長期間乗り続ける可能性が高いということ。
オイル上がりは「初期で対応すれば、修理費を安く抑えられる可能性もあります」と岩田氏は言う。初期段階であれば、ピストンリングとバルブステムシールの交換だけで済む場合もあるそうだ。

見慣れた白煙だからといって油断は禁物。早めの点検でプロに判断してもらおう!

では、今回の車両はどうか。ピストンリングが一本リングと呼ばれるレース用リングに交換されていたので、ピストンリングの消耗が早かったのである。さらにシリンダーの摩耗も進んでいて、バルブガイドにも異常が見られた。
「シリンダーの摩耗が進んでいますので、まずはボーリングをします。そしてそのサイズに合うように、ボア径の大きいピストンを用意しました。今回の場合はバルブ自体に異常がなかったので、バルブガイドのみを作製しました」
焼き付きなどは起きなかったが、決して早い発見ではなかったのだ。

予防するためには点検がポイント。「比較的簡単な点検で発見が可能です」とのことなので、白煙の量が少しでも気になったら、プロの目で判断してもらいたい。早期発見で安心の絶版車ライフが送れるはずだ。

原因の一つであったピストンの1本リングの摩耗

ピストン&リングをワンサイズ大きくし、2本リングに変更(左)。確実かつ管理のしやすい仕様とした

摩耗が確認されたシリンダーは、ボーリングする。シリンダーサイズが大きくなってしまうので、それに合わせてピストンもワンサイズアップする

バルブの点検は、基本的に手で動かしてみて確認していく。はた目にはわからない程度のガタも感じ取り、バルブを確認する

的確な診断と的確な整備

今回の症例では、最初の診断が重要になります。症状に対して「どこが原因なのか?」をしっかりと特定していくのですが、その際に役立つのが、ノウハウです。また、修理・整備に関しても同様で、必要な箇所を適切に判断します。過剰整備にならないように注意しつつ、長く付き合える安心のクオリティに仕上げていきます。(ウエマツ整備士 岩田さん)

館岡 重光

オートバイ関連を中心に、ライター兼カメラマン兼エディター兼MCとして活動中




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