1988ZX-4

4ストロークでねらい続けた公道最強から一転、サーキット最速を使命とされた短命マシン。新しいメカニズムを多数採用し、定めた目標を手中に収める。

名車列伝

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[PR] YOSHIMURA

Photo by Daisuke Takeda

4ストロークの世界では、ミドルクラスでも公道最強を追求してきたカワサキ。そういった状況のもと、レース参戦を想定した4ストロークマシンをリリース。そして、レースでも実績を残すこととなる。

空冷エンジンの時代、Z1で最強最速の座を確固たるものとしたカワサキ。ねらっていたのは公道でのパフォーマンスだった。そのスタンスは、水冷4気筒4ストロークエンジンが誕生した80年代にも変わることはなかった。GPZ900RからZZR1100の流れのモデルでも、つねに公道最強を視野に入れ、ハイパフォーマンスマシンを世に送り出してきたのである。ミドルクラスでも同じことがいえた。4ストロークでは85年に登場したGPZ400Rのように、ライバルメーカーたちがレーサーレプリカ然としたモデルをラインナップするなか、パフォーマンスを追求しながらも実用域の使い勝手をスポイルしないような作りとしていた。

レース参戦を想定した軽量コンパクトなマシン

そういったなか、カワサキにとって初めてのレーサーレプリカ然としたモデルがラインナップされる。88年のF3参戦を視野に入れ開発されたモデルで、モデル名には“ZX”の称号が付けられ、ZX-4として登場した。GPX400Rの後継機種に当たるが、エンジンは新開発され、よりコンパクトに。スロットルワークに対するエンジンのレスポンスはよく、吹け上がりは非常に軽快。最高出力は1万2000rpmで発揮し、それをすぎた1万5000rpmからでも加速する様は、それまでのGPZ400RやGPX400Rとは一線を画した。このようなことからも、それまでの常用域での使い勝手が優先された仕様とは異なる、レース参戦を想定したモデルであることが理解できた。

そして、この新しいエンジンの設計はその他のパートにも大きなメリットを生んだのである。コンパクト化に成功したことは、マスの集中化や深いバンク角の確保にもつながり、100分の1秒までタイムを競い合うレースにおいて、重要な要素となる車体設計にも大きく貢献したのだ。コンパクトとなった車体は、前面投影面積の縮小に成功し、ビルトインウインカーを採用するなど、空力特性も徹底的に考慮。エアロダイナミクスを突き詰めたフォルムとなっている。

このようにエンジン、車体ともにそれまでのモデルから一新されたZX-4。88年に開催された鈴鹿4時間耐久レースのSP400クラスにおいてデビューイヤーながら優勝をはたし、思い描いたとおりの結果を手にすることになる。やる限りは頂点を目指すといったカワサキの意気込みがしっかりと反映されたモデルといえるであろう。

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各パーツを一新しクラス最軽量を達成

エンジンのコンパクト化を実現できた理由は、それまでのGPZ400RとGPX400Rが採用していたセンターカムチェーン式から右側サイドカムチェーン式としたことが大きな要因となっている。またレスポンスの向上は、エンジン内パーツをコンパクト&軽量化することで、慣性質量を減少させたことによる効果である。その一例として、ロッカーアームは1バルブにつき1つとしたIRS(インディビジュアル・ロッカーアームシステム)を採用。バルブ径は吸気側をφ22mm、排気側をφ19mmとし、やや小径化していることが挙げられる。

車体には“e-BOXフレーム”と呼ばれるアルミツインスパーフレームを新採用。基本構造は、エンジン自体をフレーム強度に取り入れたダイヤモンドフレームで、高剛性かつ軽量な車体としている。またリヤショックはF3対応の高減衰力仕様として、レーサーさながらの調整機能を採用。さらに乾燥重量は、当時最軽量を誇っていたGSX-R400の160kgをしのぐ152kgを達成。この数値は、その後も破られることはなく、多くのライダーに軽量ハイパフォーマンスなマシンとしての印象を植え付けることに成功した。

このように最新の技術が投入されたZX-4だったが、折しも時代は短い周期でモデルチェンジが繰り返されるレーサーレプリカ時代。翌89年には後継機種のZXR400/400Rが登場し、わずか1年という短命に終わったモデルとなった。

ZX-4が発売になった1988年(昭和63年)の出来事

リクルート疑惑が発覚/瀬戸大橋が開通/青函トンネルが開通/東京ドームが完成/ソウルオリンピックが開催/横綱千代の富士が53連勝を達成/ダイエーが南海を買収/主な流行語:お局さま、オバタリアン、しょうゆ顔・ソース顔、5時まで男・5時から男/主な公開映画:ラストエンペラー、危険な情事、敦煌

とじる


  • ホイールベースはGPX400Rの1,415mmから、ZX-4では1,395mmに短縮。キャスター角やフレームの変更をはじめ、車体ディメンションの調整を図り、車体サイズを変更した。フレームにはメインパイプに120×30mmの縦長角形断面のアルミ押し出し材、スイングアームは縦80×35mmのアルミ押し出し材を採用。剛性バランスも向上させた。また車両のパフォーマンスがライダーに的確に伝わるような配慮もなされている。88年鈴鹿4耐優勝の実績を残したが残念ながら1年で姿を消す
  • ホイールベースはGPX400Rの1,415mmから、ZX-4では1,395mmに短縮。キャスター角やフレームの変更をはじめ、車体ディメンションの調整を図り、車体サイズを変更した。フレームにはメインパイプに120×30mmの縦長角形断面のアルミ押し出し材、スイングアームは縦80×35mmのアルミ押し出し材を採用。剛性バランスも向上させた。また車両のパフォーマンスがライダーに的確に伝わるような配慮もなされている。88年鈴鹿4耐優勝の実績を残したが残念ながら1年で姿を消す
  • 前機種となるGPX400Rから大幅に変更が加えられたZX-4。軽量コンパクトとなった車両は前面投影面積も減少し、ウインカーもビルトインタイプとするなど、空力特性を向上させた。それまでのストリートを意識し実用面が重要視されたモデルからはスタイルも一新。レース参戦を想定しただけあって、かなりレーシーなスタイルへと変ぼうしている
  • 前機種となるGPX400Rから大幅に変更が加えられたZX-4。軽量コンパクトとなった車両は前面投影面積も減少し、ウインカーもビルトインタイプとするなど、空力特性を向上させた。それまでのストリートを意識し実用面が重要視されたモデルからはスタイルも一新。レース参戦を想定しただけあって、かなりレーシーなスタイルへと変ぼうしている
  • メーターはスピードとタコの両サイドに燃料計と水温計がレイアウトされる4連メーターを採用。インジケーターランプはメーター下部に並ぶ
  • ハンドルはそれまでの比較的アップタイプのセパレートハンドルでなく、ブラケット下にハンドルバーがマウントされるレーシーなタイプ
  • 燃料タンクはキャップより前部が取り外し可能となる。そこにはエアクリーナーボックスが配置されており、メンテナンス性を考慮しての処理だといえる
  • GPX400Rのタイプと異なり、ターンボタンはプッシュキャンセル機構を採用。それ以外には、パッシングやハザードスイッチなども装備される
  • リヤシート下には収納ボックスが装備され、車載工具が収納される。レーサーレプリカ然としたモデルでありながら、わずかながらも収納スペースを確保
  • GPZ400RやGPX400Rのシートよりも肉厚が薄く、路面情報の伝達など、より走行性能を追求したデザインとなったシート
  • 車体がコンパクトになり前面投影面積も減少。さらにウインカーもビルトインとすることで空力の向上を図る。エアダクトも多数設けられている
  • 荷かけフックはテールカウル下に収納できるタイプを採用。サイドに引き出してフックを使用する。ヘルメットホルダーはテールカウル下左右に装備
  • フロントフォークのインナーチューブ径はクラス最大のφ41mmとして剛性の向上を図った。キャスター角はGPX400Rより2度立てた24度とし、クイックなハンドリングをねらう
  • リヤショックはガス封入式ユニトラックを採用。減衰調整4段とプリロード無段階調整機能付きとした。さらに、新開発の多段板バルブによりストローク時の減衰抜けの防止を図った
  • エンジンの高性能化にともないブレーキも強化。フロントには大径φ300mmのフローティングローターを採用。ダブルディスクとして制動力を強化した
  • リヤタイヤは140サイズの扁平ラジアルタイヤを採用。ホイールのリム幅はフロント3.00、リヤ4.00と当時としてはワイドサイズでそのままスリックタイヤの装着を可能とした
  • “e‐BOXフレーム”は横剛性にすぐれる卵型に湾曲させた形状としている。メインパイプとスイングアームはアルミ押し出し材
  • 停止時に1速からシフトアップするとニュートラルを超えて2速に入ることを防止するポジティブニュートラルファインダーを採用






カワサキイチバン