1990ZZR1100

蓄積したノウハウを集結させ潜在能力を100%引き出したとき、究極にして世界最高のスーパースポーツが誕生した。

名車列伝

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Photo by Daisuke Takeda

1990年、地上を滑走するモーターサイクルに、圧倒的なスピードを持つマシンが誕生する。それは長年の試行錯誤のなかでつちかわれた開発技術を総結集して作られたマシンであり、人類の未知なる領域、時速300kmの扉が開かれた瞬間だった。

開発技術のすべてを注ぎ込んで挑んだ究極のマシン開発

65年、メグロK2を誕生させて以来、W1、マッハ、Zと進化を続けたカワサキ最速の歴史は、20年の歳月を経た80年代後半にはZX-10で最高速270km/hの域までたどり着いていた。しかし、カワサキはさらなる高速域を目指した。それはGPZ900R系エンジンの最終局面に向かい、今まで蓄積したマシン開発技術のすべてを注ぎ込んで挑むという、究極のマシン開発であった。そして、90年、ちまたでささやかれた“カワサキはすごいマシンをつくっている”という噂をはるかに越えたマシン、ZZRが全貌をあらわすこととなった。ちなみに最高出力も最高速度も未発表にしたブラックパフォーマーを国内バイク史のなかで初めて行なったというZZRらしいストーリーもあった。

最高速の目標数値は300km/hオーバー。それは、モーターサイクル史上、誰も踏み込んだことのない世界であり、次期最速マシンの到達目標値であった。そこでカワサキ開発陣は、ベースであるZX-10のエンジンをさらに進化させることに着手。あらゆる難点を克服し、排気量を1,052ccまで上げ、最高出力は147psに到達。これはシステム的に997ccが限界といわれたベースエンジンにとってまさに極限的数値といえた。そして開発陣はさらに空力にも徹底してこだわり、世界初のラムエアシステムを搭載するなど、一新されたエアロフォルムは空気抵抗係数(Cd値)0.3を達成した。

※Cd値(抗力係数)とは、走行時の車体に当たる風の抵抗を数値化したもの。車両の大きさに関わらず個々の空気抵抗の特性を表し、空力を知る上での大事な目安となる。カワサキはGPZ900Rで0.33を実現。さらにGPZ400Rでは0.29というほぼ限界値に近い数値を出している。

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究極にして世界最高のスーパースポーツが誕生

こうしてエンジンパワー、空力、重量、操安と、あらゆる点において高次元でまとまりを見せたマシンはZZRと命名され90年に市場デビューする。最高速281.6km/h、ゼロヨン10.25秒は、当然、世界最高数値であった。確かに実測こそ、夢の300km/hには届かなかったものの、抜群の動力性能を備えたZZRは、スピード、扱いやすさの両面で、ライバルたちを凌駕。追随不可能な完成度は、またたく間に世界中のライダーたちに圧倒的な支持を得ることとなった。さらに95年、北米のボンネビルにて、ドクターSUDAによってチューンをほどこされた200psのZZRが、308km/hに到達し世界記録を樹立。300km/hの壁を破り、まさに地球上もっとも速い市販車となったのである。

こののち10数年、時代は各メーカーともに最速を巡る開発を激化させていき、今や300km/hも手の届く世界になった。が、“最速にして最高の乗り味”つまりこのフラッグシップという資質の定義は、この90年に誕生したZZR1100によって決定し、今に受け継がれているといっても過言ではないだろう。

そして、現代でも一線級の乗り味をほこるZZRは、今もなおライダーたちを魅了し、ストリートを走り続けている。

ZZR1100が発売になった1990年(平成2年)の出来事

東西ドイツ統一/海外渡航者100万人超える/都はるみ歌手復帰/スーパーファミコン登場/東京市場でトリプル安/イラクがクウェート侵攻/雲仙、普賢岳噴火/超大物ルーキー野茂投手が沢村賞を含む8冠獲得/映画「逃亡者」「あげまん」「天と地と」/TV「ちびまる子ちゃん」/漫画「クレヨンしんちゃん」「スラムダンク」/流行語「ファジー」「おやじギャル」

とじる


  • スピードメーター表示はついに320km/hまでになった。そしてタコメーターはスピードメーターよりも大きく装備され、11,500rpmからレッドゾーンに。インジケーターは下から右へ移動し、燃料警告灯は2ヶ所にわけられ、水温計も装備。全体的にコックピットはレーサーとは一線を画し、ツアラー色を感じさせるものになっている
  • ZZRの最大の特徴ともいえるラムエアシステム。かつて冷却用に走行風を取り入れる技術はあったが走行風圧を積極的に過給し、高速域のパワーをアップさせるシステムは市販車初のものであった。エアはここから大容量(15L)のエアボックスに送られ、トップスピード付近では4%以上のパワーアップを実現することとなった
  • 147psに合わせ、足まわりも当然強化された。フロントフォークはφ43mm・ストローク125mmを採用
  • リヤはストローク120mmでリザーバータンク付きのサスペンションを装着
  • 全域での快適なドライバビリティの確保にこだわり、なおかつ騒音面に配慮して作られたという2本出しマフラーはデザイン的にも迫力十分。D型からKCAS(カワサキ・クリーン・エア・システム)が導入されて燃焼効率もアップし、さらにクロームメッキもほどこされ、より高級感が増した
  • 超高速走行や市街地、ワインディングといったあらゆるステージで高次元の走りを実現させたのが、このアルミ製ペリメターフレームであった。ZX-10よりもさらに強固に作られ、鍛造のピポット部分とは溶接でしっかりと結合されている
  • GPZ900RのエンジンからGPZ1000RX、ZX-10と進化を繰り返し、ZZRではついに1,052ccに到達。GPZ900Rは開発当初997ccまでの排気量アップは考慮していたが、それ以上となる1,052ccはまさに開発陣の勝負どころであった。キャブレターはφ36mmからφ40mmへと大口径化されたCVK40を装着。エアクリーナーケース内とキャブレター内のフロート室の圧力を同じにする回路が設置されている
  • ブレーキも超高速走行に対応するために強化された。フロントにはトキコの異径4ポットキャリパーとφ310mmに大型化されディスクを装備
  • リヤブレーキには片押し2ポットタイプを装着
  • 最高速をほこるスーパースポーツでありながら、センタースタンドを標準装備。こうしたツアラー的な要素を備えているところが、ZZRの大きな魅力の一つなのである
  • ZZRシリーズの特徴のひとつとして、歴代受け継がれることになる、格納式のバンジーフック
  • 【ZZR1100(D)】93年、カワサキはC型をさらに進化させたD型を登場させた。ラムエアのエア吸入位置は左右の2つに装着され、開口面積は38cm2から71cm2と2倍近く大きくなり、より効率的な過給が可能になった。またバッテリー位置を変更したことにより低重心化され、運動性能が向上。さらに燃料タンクは21Lから24Lに大型化され航続距離を延ばすことになった。また、ホイールベースは15mm長い1,495mmになり、キャスター角は0.5度立ち、トレールは4mm延長、ステアリングヘッドのステム径(32mm→35mm)、フロントアクスルシャフト径(20mm→25mm)、リヤタイヤは1サイズ太くなり180/55-17に変更、フロントフェンダーが前に長くなった…、などなど実に細部にわたり、数々の見直しが図られた。最高速こそ変わらなかったが、乗り味、動力性能、快適性は格段に向上したモデルとなったのである。その後10年近くフラッグシップとして君臨。01年D9を最後にラインナップから姿を消すこととなったが、その貫禄、重厚感は今もって衰えることはない






カワサキイチバン