1979Z1300

並列水冷6気筒の巨大マシンは、カワサキが新時代到来に向けて放った異端のフラッグシップだった。

名車列伝

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Photo by Daisuke Takeda

1970年代の終わり、超ド級の旗艦が登場した。6気筒、1300cc、車重300kg。このとてつもないモンスターZの熟成された迫力とすごみは、これから始まる80年代という新しい時代の到来を意味していた。

Zを越えるZをつねに模索し、開発に着手していたカワサキ

66年、W1から始まったカワサキ最速の夢は、69年に500SSマッハを誕生させ、その遺伝子を750SSマッハに継承すると、間髪いれずに、DOHCインラインフォーを搭載したZ1を登場させた。まさに怒涛の最速ラインナップを放ち続け、70年代、“カワサキ=最速”の称号は不動のものとなっていった。

そして、Zを越えるZをつねに模索し、開発に着手していたカワサキは、73年という早い時点で次期モンスターの構想を打ち立てた。コードナンバー“203”。並列6気筒1200cc、そして水冷エンジンを搭載した超ド級のマシン。これが次なるフラッグシップの全容であった。

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新しい時代を呼び起こすモンスターの登場

Z1の大成功を受け、新たなる旗艦を模索したカワサキだったが、Zの完成度ゆえか、“同じ4気筒では、生産してもフラッグシップにはなり得ない”と判断され、6気筒が誕生することになった。排気量が当初1,200ccで進められたのはアメリカの生んだ偉大なバイク・ハーレーダビッドソンを尊重したためで、開発途中の77年にハーレーが1,340ccに排気量アップしたことに追従し、最終的に1,300ccになったのである。開発には50種ものフレームが試された他、メカニカル音を可能なかぎり消すためにマシンを無響室に持ち込み、雑音を一つ一つ除いていくという涙ぐましい努力もされた。こうして5年もの歳月を費やし完成したのが世界最大級の水冷6気筒1,286ccDOHCエンジンなのである。

余談になるが、カワサキは川崎航空機時代の30年に水冷エンジンを完成させ、第二次世界大戦中、唯一水冷エンジンを搭載した“飛燕”を作り上げた経緯をもっていた。いわば40年ぶりの水冷エンジンへの取り組みでもある。しかし、ここにきてオイルショックが到来(73年10月、ペルシャ湾岸の各国が原油の価格を21%も値上げしたことにより世界中が不況に見舞われる)。2ストロークエンジン・ロータリーエンジンと並行して行なわれていた開発中のエンジンがすべて白紙に戻されるという事態に見舞われ、この6気筒のモンスターも同様の道をたどるかに見えた。しかし販売記録の金字塔を打ち続けるZ1、Z2の需要の高さから、さらなる高性能を持ったマシンは必然とされ、開発は続行されることになったのである。

そして、5年以上もの歳月をかけ誕生したその完成形は、1300cc6気筒水冷エンジンを搭載、120psもの馬力を誇り、最高速は224km/hと、圧倒的なパフォーマンスを発揮した。それはまさに、70年代につちかったカワサキの技術の粋を結集した最高級マシンであり、新しい時代を呼び起こすモンスターの登場でもあったのだ。

Z1300が発売になった1979年(昭和54年)の出来事

東名日本坂トンネル事故で死者7名焼失車両173台/三菱銀行猟銃人質事件・男が警官2人行員2人を射殺して立てこもる/東京サミット/カーター大統領来日/ヨーロッパ初の女性首相サッチャー首相誕生/インベーダーゲームピークに/上越新幹線誕生/日本初のワープロ誕生/「ナウい」「ダサイ」/ヤングジャンプ創刊/NHK南極から史上初のテレビ中継

とじる


  • カワサキの二輪史上、初めて搭載されたラジエター。大きく張り出したフロントビューが嫌が応にもその存在を主張している
  • リヤビューもとてつもなく重厚。モロ横綱級といった感じである
  • Z1Rと同じようなスタイルのシートだが、より厚みがあり、リヤシート側が若干盛り上がるデザインで、ツアラーらしく、タンデムライダーにも配慮していることがうかがえる
  • 大陸を日に1,000km近くも走るグランドツアラーのため、メンテナンスフリーで耐久性にすぐれたシャフトドライブを採用することとなった。過剰といわれるほど頑丈なものだと評価された
  • 超大型のヘッドライトはクォーツ・ハロゲン12V60/55Wで、当時としては珍しくグリップから手を離さずに上下の切り替えができるものだ。ウインカーもオートキャンセル式を採用
  • とにかく角張ったデザインだが、メーターはことのほか四角い。スピードメーターとタコメーターは当然ながら装着され、そのほかに水冷らしく水温計を装着、燃料計も装備された
  • タンクもゴツイ。容量は仕向け地により分かれた。ヨーロッパ仕様は27Lで、アメリカ仕様は20.4Lだ。燃費は10.9〜12.1km/Lで、150km/hの高速巡航では約9.8km/L
  • カワサキ初のラジエターはプリント式モーターによる振動音を抑えた薄い冷却ファンを組み合わせた。無響音室にマシンを持ち込んで騒音チェックを積み重ねた結果の成果である
  • フロントフォークは、リーディングアクスル方式を採用。インナーチューブ径40mmでスプリングとエアを併用し、ストロークは200mm。固さの調整が可能になっている
  • リヤサスペンションもプリロード調整が可能で5段階に分けてその固さを調整できるようになっている
  • 世界最大級の水冷6気筒1,286ccDOHCエンジン。120psという当時では桁違いのモンスターパワーに驚がくした西ドイツ政府は、パワーリミット100馬力規制を実施してしまった。それほどZ1300のインパクトは強烈だった
  • 6本ものエキパイから2本のサイレンサーに集約されて排気する6in2システム。ここでもカワサキは当時では珍しい排気ガスのHCを削減させるための浄化装置を開発し、装着している
  • 世界初の専用開発されたダブルチョークのSU式キャブレター。外観上は3個のキャブレターながら、機能としてはきちんと6個分の働きをするものだ。これにより収納スペースを確保できるようになった
  • フロント、リヤともにブレーキは非対称に穴を開けたタイプのディスクプレートを使用。ディスク径は前が260mm、リヤが250mmとなっている。キャリパーはフロントがピンスライド式シングルピストンで、リヤが対抗ピストンになっている
  • フロント、リヤともにブレーキは非対称に穴を開けたタイプのディスクプレートを使用。ディスク径は前が260mm、リヤが250mmとなっている。キャリパーはフロントがピンスライド式シングルピストンで、リヤが対抗ピストンになっている
  • 【ZG1300】初期型から4年後の83年、カワサキはキャブレターに代わるDFI=デジタル・フューエル・インジェクションを搭載したZG1300Aを登場させた。圧縮比を9.9から9.3へ下げ、カムシャフトを変更した。このDFIを装着させることで燃費が向上し、約1kmほど平均的に伸びるようになった。そして、なんとパワーは10psもアップし130psにもなった。まさにモンスターの進化形といえるだろう。このZGはヨーロッパで人気を博し、A1から89年のA5まで6年近くも販売されることとなったのである






カワサキイチバン