Z1000インプレッション

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ヨシムラ

乗り手が積極的にリードして、走りの本性を引っ張り出せ

クセのあるバイクを気合い一発でねじ伏せ、ばっちりコーナリングを決めて優越感やら達成感に浸る。一昔前、バイクを操るとしたらそんな感じだった。ZZR1100とかZX-12Rといった、重量感があったりパワーやトップスピードにモノをいわせたカット飛び系のバイクがフラッグシップとしてラインナップされていた時代までの話だ。だが、今はだどうだろう。技術が進化し、現行モデルに関しては扱いづらいバイクを乗りこなすといった印象はない。大抵が乗るだけだったら無難に乗れてしまう。でも無難の先を求めると話は別で、いかに性能を引っ張り出して自分が求めた走り方をするか。そんな意味でバイクをねじ伏せる楽しみがある。

無難に乗れてしまうものの、真の走りはやたら尖っていた方がいい。なぜなら、本領を発揮させるには一筋縄ではいかないながらも、その性能を少しでも引き出せたなら極上の快感に浸れるからだ。これらの要素が詰まった極みがZ1000で、ライダーをいやがおうにもその気にさせてしまう。乗るだけならなんとでもなるが、Z1000に乗るなら、それだけではあまりにもったいない。コイツの本質の片鱗を少しでも体感しようものなら、ゆったりなんか乗っていられない。積極的にグイグイとコントロールせずにいられない。その快感を“もっともっと”と身体が欲しがる。そう、バイク乗りを、バイクを操る快感におぼれさせる麻薬のようなバイク。それがZ1000だ。

ライディングポジションからしてクセがある。スーパースポーツと同じくらいハンドルとシートの位置が近く、それでいてバーハンドルだから、最初はポジションにどうしても違和感を覚えてしまう。でもこのポジションがコーナリングのときに効果を発揮する。ハンドルとシートがいくら近いといっても不思議なことに窮屈感はまったくなく、体重移動するためにケツを左右にずらしたり、少し後ろに座ったときでも、身体にとても余裕があり、とてもポジション移動しやすい。もともとバイクというのは体重移動をしながら走らせる乗り物だし、それがZ1000の魅力の一つでもある。

Z1000インプレッション

ポジションをいろいろ試しながらZ1000に乗っていると、ここか!といった具合に、車両をコントロールしやすいポジションを発見できる。そのポジションとは、シートのやや後方に座り、上体をふせぎみにして、ケツを左右に振りながらコーナーを抜けるポジションだ。このポジションをベースとして積極的に体重移動を繰り返すと驚くくらいクイックに、しかもスムーズにコーナーを抜けることができる。こうなるともう、操る快感にとり憑かれてしまう。ただしツボにハマるポジションを見付けられず、体重移動も消極的だと、ライダーのいうことを素直に聞いてくれないバイクだということも付け加えておく。適したポジションと体重移動があってこそ極上の走りを体感でき、逆にそうでないということを聞かないというのはバイク全般的にいえることだが、Z1000は特にその傾向が強い。

軽快なのは市街地でも同じこと。停車中の路線バスやタクシーのトリッキーな動きに対しても、ビッグネイキッドとは思えないほど軽快な動きで対応できる。ハンドル切れ角はそれほど大きくないが、時には足を着いて、車体を右へ左へ傾けながらヒラヒラと方向転回もできるほど。ただし、このときも積極的なコントロールが条件であるが。

コーナーや市街地の走行性能など、まるでミドルクラスのバイクについて触れているようにも感じられるが、そこはビッグバイク、ハッキリ言ってワインディングでは全開にできるシロモノではない。だからといって「俺は今、ビッグバイクに乗っているんだぜ」といった満足感だけでなく、ビッグバイクを積極的に操る快感を存分に味わわせてくれるのがZ1000だ。乗り手がグイグイリードすれば、コイツは無茶苦茶おもしろい。

ライディングポジション

ハッキリ言おう、ネイキッドの感覚でまたがると意表をつかれる。というのもネイキッドにしてはハンドルとシートの位置がやたら近いのだ。これがもしセパレートハンドルだったら、ポジションはスーパーツポーツそのもの。最初、このポジションにどうしても違和感を覚えてしまうが、実はシート、ハンドル、ステップが、コーナーを攻めるときなどに、とても体重移動をしやすい位置関係になっている

Z1000 取りまわし

グリップを握ったとき、ハンドルがやや上に絞ってあるような感覚を覚える。最初は違和感を覚えるが、取りまわすときはこの位置にあるグリップのおかげで、とても車体を支えやすい。また、マスの集中の効果もあって、車両重量よりも軽めの感覚もある

Z1000 引き起こし

ネイキッドにしてはコンパクトな車体だと思うが、引き起こしのときは意外と重量感がある。とはいえ、ハンドルはもちろんのこと、シートカウルのサイドに設けられた凹み部分を手で握りやすいので、車体を支えるのに不安感はない。途中まで起こせば後は楽勝


燃費

高速道路での燃費が一番よく、次いで市街地、悪いのは1速、2速でブン回すワインディングといったように、今回のテストではごく一般的な傾向となったZ1000。ちなみに燃料表示一目盛から73km、目盛りが点滅してから54.6km走った後にガス欠となった。カワサキ車のなかでは、点滅後の走行距離は少ないといえる。

市街地 17.2km/L
ワインディング 14.6km/L
高速道路 19.2km/L
ガソリン満タン時航続距離 263.8km/L

排気音


詳細



スペック一覧

全長×全幅×全高 2,095×805×1,085(mm)
軸間距離 1,440mm
シート高 815mm
車両重量 218kg
エンジン 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列4気筒・1,043cm3
ボア×ストローク 77.0×56.0(mm)
最高出力 マレーシア仕様:100kw(136ps)/9,000rpm
【欧州仕様:101.5kw(138ps)/9,600rpm】
最大トルク 110N・m(11.2kgf・m)/7,800rpm
燃料タンク容量 15L
タイヤサイズ (F)120/70-17 (R)190/50-17
価格 113万4,000円 ※価格はブライト調べ

※ウエア協力(レザーパンツ):ジーピーカンパニー
※インプレッションに使用した車両は2010年モデルです




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